第2話:次戦|不条理なゲームに巻き込まれた俺の行方|3分
この小説は、第2話です。
第1話を先にお読みいただきますようお願いいたします。下記の目次等をご利用いただくと便宜かと存じます。
大食い対決は、俺が勝った。
ナポリタンを食べるのには、それぞれ支給された用具を使用しなければならず、素手は禁じられていた。
俺はフォークを手に入れたので、余裕の勝利かとも思った。しかし、隣の男も、粘っていた。ナイフの刃の方を掴み、皿に口をつけ、かき込むように食べたのだ。しかし、隣の男の勢いは、徐々に衰え、結局、俺は危なげなく勝利したのであった。
◆
「さぁ、解放してくれ!」
うなだれる隣の男を横目に、俺が声高に要求する。
しかし、ゲームマスターの返答は冷淡なものだった。
「第1ゲームは、1回ではありません。2回勝負です」
「何だと……?」
「大食い対決の勝利者には、1ポイントが与えられます。そして、次の対決の勝利者には、2ポイントが与えられます。第1ゲームの最終的な勝敗は、これらのポイントの合計によって決定されるのです!」
大食い対決は意味ないじゃないか、そんな往年のバラエティー番組みたいなことがあってたまるか。すぐに思ったが、こんな常識が通じる相手ではないことは分かっているので、口を噤むことにした。
隣の男は、元気を取り戻した様子で、身を乗り出した。
「次の対決は何だ?」
しかし、ゲームマスターは何も答えず、俺の方に身体を向ける。
「大食い対決勝利者のあなた。先ほどのナポリタンですが、<赤い皿>と<青い皿>のもの、どちらが美味しかったですか?」
この質問は何だ? 確かに<赤い皿>と<青い皿>のナポリタンが交互に出された。意味は分からなかったが、早く答えた方が良いと思い、素直に言う。
「<赤い皿>」
「……そうですか。それでは、ナポリタンの料理対決は、<赤い皿>の参加者の勝利となります」
「どういうことだよ」隣の男が叫ぶ。
「このゲームの参加者は、あなたたちだけではありません。あなたたちが先ほど食べたナポリタンは、別の参加者の料理対決で作られたものだったのです」
「……」
「すなわち、ナポリタンの大食い対決の勝利者が美味しいと選んだ料理を作った方が、その料理対決の勝者! というゲームが並行して行われていたのです」
「……」
「このゲームは、参加者同士で作り上げていただく、エコシステムが採用されているというわけです!」
ゲームマスターが胸を張ったように見えた。
「……ややこしいかもしれないので、念のため図解しておきます」
監視カメラ下のモニターが切り替わる。
このゲームには別の参加者たちもいて、俺の<赤い皿>の選択で、その料理対決の勝者を決定したのか。なんて残酷なんだ。
「お分かりいただけましたか? あなたたちには、『第1ゲームその2』といたしまして、これから他の参加者が行う大食い対決の料理を作っていただきます。そして、その勝利者が美味しかったと選んだ料理を作った方に、2ポイント差し上げます。こちらをご覧ください!」
また、監視カメラ下のモニターが切り替わる。
「料理対決のメニューは、カレー! ちなみに、この大食い対決の参加者は、どちらも小学生なので、その好みをよく考えて料理することをおススメいたします」
「小学生!?」俺が声を荒げる。
「子どもたちまで、こんな不条理なゲームに参加させられているのか!? 人の心はないのか!」
「……ええ。みんな望んでいることですから――」
ゲームマスターは、視聴者の反応を見せつけるためだろう、監視カメラ下のモニターを切り替えた。白文字でコメントが流れている。しかし、そこには、予想外の言葉が並んでいた。
「……見てみろ! みんなも反対しているじゃないか!」
「どうして……? 良いところなのに……」
ゲームマスターは、明らかに動揺している様子だった。ここぞとばかりに、俺が畳みかける。
「こんな不条理なゲームは、さっさと終わらせろ! みんなも、もっと言ってやってくれ! 誰からも求められてないって――」
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