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半年かけて体重を15kg落とした


体脂肪率43%

 何年か前に親戚の法事があった。シングルで40才過ぎでしっかり働いている従姉妹に会った。上等な漆黒のコートとバッグ。美しく控えめに化粧をしてすらりと痩せていた。私は子どもを3人産んだ太ったおばちゃんだ。隠れたくなった。結婚したとき持ってきた喪服は着られなかった。量販店の大きいサイズコーナーで選んだ安物ワンピースを着ていた。結婚指輪は肉に埋まってもう抜けない。
 真夏のある日、下着がきつくなってきたので体重計に乗ってみた。妊娠10ヵ月に匹敵する数値だった。さらに体脂肪率は43%。そんなことあるのだろうか。四半世紀前に買った家庭用の体重計だから正確に計測できていないのだろう。とにかく、死の予感がして脂肪を落とすことを決めた。

ダイエット史

 高校生の頃からダイエットをよくしていた。まずリンゴダイエットから。3日間リンゴだけ食べる。3日目に高熱を出した。そんな低栄養で過ごしたことがなかったから、働く細胞たちに緊急事態宣言が発令されたか。
 次は菓子を絶つ。すぐに2kgくらい落ちる。普段から菓子を食べ過ぎなのだ。でもそれ以上進展はない。
 学生の時は、お金が足りなかった。ドラッグストアでカロリーメイト10個セット¥1300くらいで買えた。昼食は200kcal まで切り詰めた。これは痩せた。熱を出して寝込むことは無かったが、就職して生活が安定すると元に戻った。食べること、砂糖と脂肪が大好きだ。
 お金が少し自由になったので、スポーツクラブに通い始めた。正しい姿勢、ストレッチと筋トレ、有酸素運動。楽しかった。食事制限は菓子を減らすくらいしかしなかったが、仕事のストレスがすっかり癒されて、体調がとても良く、筋肉が働いて体の取り回しが楽になった。
 私は体で理解した。実績を残すのは食事制限と運動だ。摂取カロリーと消費カロリーの天秤なのだ。食事を変える。生活を変える。それを永久に維持すること。生き方を変えるのだ。

体重と食事と運動を記録する

 まずは体重計に毎日乗って数値をグラフ化する。食事を記録してカロリーを検索し、栄養管理をしてくれるアプリケーションを使う。日々記入していると、1日1500kcal がどのくらいの食事量なのか、1200kcal ではどうなるか体感することになる。とにかく、体脂肪率43%に恐れをなした私は、1日1200kcal を志した。食事量が少ないと低栄養や便秘になりやすいので、アプリからのアドバイスが大切だ。たんぱく質が足りません、ビタミンDが足りませんなどと教えてくれる。
 家事や散歩や買い物など、日常生活の消費カロリーも記録する。この半年は、徒歩10分圏内は車を使わないことにしていた。他に有酸素運動はしていない。過去のスポーツクラブの経験から、ヨガが精神や体調の不良によく効いたので、週に数回、動画アプリをみながらストレッチをした。1ヶ月に2.5kg前後、半年で15kg落とした。

自己を肯定する

 
 1日1200kcal は簡単ではない。いつも空腹だ。水を飲んだり、1個7kcal のこんにゃくゼリーを食べたりして半年かけて慣らしてきた。 めり込んでいた指輪が抜けるようになったとき、忘れるために固めて埋めた記憶が戻った。太った私を嗤いものにした人たちのこと。私の43%を占めた体脂肪は、脳をぼんやりくもらせて、私の心を守ってくれていた。子どもたちが寝たあと、餅を焼いたり即席麺を食べたりせずにはいられなかった。いつでもチョコレートを口にした。お腹がいっぱいになると、ほっとした。自力で自分の姿を作り直した今、私を嗤うやつらの視線がもう怖くない。自分が恥ずかしくない。私は子どもを3人産んだおばちゃんだ。子どもたちがお母さん痩せたねとにこにこしてくれる。いつでも指輪を外すことができる。半年かけて15kg 落として、私は私を肯定することができた。食事制限とその結果は、私に誇りを取り戻した。嫁入りに持ってきた喪服も着られる。母が用意してくれた上質なものだ。
 もう少し体重を落としたら1日1500kcal まで上げてストレッチの回数と時間を増やしていく。落とした体重を永久に維持する物語の始まりだ。



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