新しいリーダーシップ
打ち合わせが終わって一息ついたところで、社長が一言、
「息子である専務がもっとリーダーシップを取ってくれるといいんだけどね」と漏らされました。
緊張がとけた後には、本音が聞けることがあり、ここから真のテーマが見つかることも多いのです。
今回もまさしくそうだろうと思って「どうしてそう思われるのですか?」と伺うと
「専務にはもっとエネルギッシュに、社員を引っ張って欲しいんだけど、彼には親分肌のところがないから心配しているんです」と社長はおっしゃいました。
「なるほど、社長はそう思っていらっしゃるんですね。専務ご自身はどう思っていらっしゃるんでしょうか?」と再び尋ねると
「専務と面と向かうとつい説教じみてしまって本音が聞きだせないんで、先生、時間をつくって専務と一度話してくれませんか?」と依頼を受けました。
専務には社長が思っていることは伝えずに、会社の運営方法について聞いてみました。
「私は社長と違って、外交的でもありませんし、社員にきついことも言えません。
私は創業者である社長のようにはできませんし、しようともおもいません。
その代わりに、社員との話し合いを大切にしています。
社員が考えていることを聞いて、会社の方針に沿うような働き方ができるように助言をしています」と
専務はおっしゃいました。
専務の普段の行動から、ほぼこのようなことをおっしゃるだろうなとは思っていました。
ただ、そんな専務のやり方に社長は不満でした。
社長は、自分と同じタイプのリーダー像を期待されていたのです。
リーダーシップというと、外交的で、発信力が強く、部下をぐいぐい引っ張っていくイメージがあります。
しかし、そんなリーダーシップの概念にとらわれる必要はありません。
人は誰にも個性があり、何らかの素晴らしい資質をもっています。
その資質を伸ばすことこそが、新しいリーダーシップです。
専務は、どちらかと言えば物静かで大人しいタイプに属します。
今までであれば、リーダーとしては不向きだと考えがちです。
しかし、社内には専務を嫌う人はおらず、思慮深く、仕事も正確で、安定感もあります。
また専務はこうもおっしゃいました。
「社長は創業者で、自分の考えで機関車のように会社をひっぱってきました。
これからの時代は、社長だけが組織をけん引していくのではなく、社員の意見や能力をいかした会社運営をしていきたいのです」と。
専務はご自身の長所を活かして、会社の成長を考えていますと、社長に伝えると
「専務は専務なりに考えているんだな」と感慨深げでした。
社長は自分の成功体験があるため、2代目となる息子に自分と同じようになることを期待していました。
しかし、経営環境が大きく変化する現在、今までと同じやり方が通用するとは限りません。
だかららこそ、社員の経験や知見を活用する組織が必要であり、そんな組織を導くリーダーが必要になります。
トップはもちろんのこと、これからのリーダーになるためには、資質を見抜いて伸ばしていくことが重要です。
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