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アニメで理解するPinduoduo

Pinduoduo(ピンドゥオドゥオ)は2015年に設立され、わずか5年ほどで中国ECの巨人アリババを脅かすほどに急成長した共同購入ECアプリです。

Value Proposition:Together, More Savings, More Fun

Pinduoduoがユーザーに提供するValue Proposition(コアバリュー)は2つあります。

1つめは"More Savings"。言葉通り、みんなで一緒に箱買いすることで割引を受けようというアイディアです。

2つめは"More Fun"。オフラインのショッピングモールで友達や家族と買い物をする楽しい体験をオンライン上に再現することで、機械的に購入したいものを選ぶだけのAmazonのような体験との差別化を図っています。

これら2つのvalue propositionを体現するUXを、GIFアニメを通して見ていきましょう。

Initiate Team Purchase:友達を共同購入に誘う

まずは"More Savings"の方から見ていきます。Initiate Team Purchaseは、ユーザーが購入したい商品のリンクを友人に送り、友人も共同購入を承認したら割引価格が適用される仕組みです。要するに、友達と一緒に買ってくれたら安くするよということです。流れは以下の通り。

ステップ1: 購入商品を選択し、共同で割引価格で購入する右下ボタン(17.86元)か、その隣の、個人で定価購入するボタン(24元)を選択。

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ステップ2:支払い方法を微信支付(WeChat Pay)、支付宝(Alipay)かその他から選択。

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ステップ3:友人にWeChatでシェアして共同購入成立。

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Join Team Purchase: オープンな共同購入チームに参加

"More Savings"の2つめの形態です。友達を誘わなくても、アプリ上の他のユーザーが組成する共同購入チームに参加するだけでも割引価格で購入できます。

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アプリ内のゲームセンター

次に、"More Fun"の方を見ていきましょう。Pinduoduoは、ユーザーを頻繁にログインさせ、かつ、engagementを高めるために様々なミニゲームをアプリ内に用意しています。その1つが下のDuo Duo Orchardです。

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このゲームは、ユーザーが毎日ログインして肥料や水をやることで植物が成長していき、果物がなると、本物のマンゴーやレモンなどが自宅に届けられる仕組みです。

水や肥料はWeChat上の友達にシェアすることもでき、友達と協力しながら果物を育てることができます。Hay Dayを思い出しますね。オフラインで言い換えるならば、ショッピングモール内のゲームセンターのようなものです。

Pinduoduoは本当に"More Fun"?

Pinduoduoの創業者は、従来のAmazonのようなECを「冷たく」味気がない購入体験として、本来のショッピング体験はもっとソーシャルで「温かみ」があり"More Fun"であるべきだと唱えています。

しかしながら、現状のPinduoduoのvalue propositionは——運営側の意図がどうであれ——、"More Savings"の方にあると言えるでしょう。

共同購入チームに1クリックで参加すれば簡単に割引価格で購入できるのに、わざわざ友達を共同購入に誘う意味はあまりありません。

また、昔のPinduoduoのアプリでは、商品検索窓が目立たないところにあり、検索からの一直線購入ではなく、ショッピングモール内を散策するようにアプリ内を徘徊することを勧める運営側の意図が色濃く反映されていましたが、現在は検索窓がトップの目立つところに来ています。

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アプリ内ゲームは依然として、重要な機能の一部ではありますが、"More Fun"を届けるためというより、ユーザーを毎日アプリにログインさせるためのリテンション施策としての性格が強いでしょう(上で説明したDuo Duo Orchardも、実際に果物をゲットするにはかなりの手間と時間が必要です)。

なぜ"More Fun, More Savings"から”More Savings”だけに?

これは仮説ですが、中国の農村の女性が大半を占めていた初期ユーザー層から拡大し、上海や北京のような大都会の若者にまで幅広く使われるようになったことが原因かと思われます。

つまり、オフラインであれオンラインであれローカルの結びつきが強い地方都市では、(若干押し売りにも捉えられそうな)共同購入機能は新しいソーシャルコマース体験として受け入れられたけれども、都会の若者にとっては、そんなことよりも必要なものを安くシームレスに購入できるということの方がよっぽど重要なのです。農村であれ都会であれ、安く買えるというのが魅力であるのは変わりません。

もしくは、共同購入によるソーシャルコマースは、WeChat上の商品リンクシェアを通してバイラルにユーザーを拡大するためのグロースハックの手段でしかなく、それ自体は初めからコアバリューではなかったという可能性もあります。

いずれにせよ、プロダクトのユーザー層が多様化することで、value propositionが変わり、UI・UXまで変わっていく良い例と言えるでしょう。

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参考


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