日本で一番悪い奴ら(2016年)

画像1 日本で一番悪い奴らは稲葉圭昭原作の「恥さらし―北海道警 悪徳刑事の告白―」を、白石和彌監督が映画化した作品。著者の稲葉圭昭氏は綾野剛演じる元北海道警の刑事、諸星要一のモデルとなった人物である。
画像2 主人公の諸星要一は大学時代は柔道ばかりやってきて、就職も決まっていなかったが、柔道選手権で全国制覇を狙う北海道警からその腕を買われてスカウトを受け、刑事になった。
画像3 機動捜査隊に配属されたが、柔道一筋、体育会系でやってきた純粋な諸星は、一倍正義感に溢れてはいるが、刑事としてなかなか結果を出すことが出来ない。ある日、先輩刑事の村井から食事に誘われるが、行き先は村井が行きつけのすすきののクラブ。村井は諸星にこうアドバイスする。「刑事にとって大事なのは点数だ。裏社会に出来るだけたくさんS(スパイ)を作れ!」と。この日を境に諸星は、機捜の刑事として裏社会に人脈を作る努力を始める。
画像4 仕事でも結果を出し始めた諸星。村井からクラブの高級ホステスの由貴をあてがわれ、男としてどんどん自信をつけていく。
画像5 北海道の弱小暴力団、旭真会幹部役には中村獅童。諸星が令状のない違法捜査で旭真会の組員をガサ入れして、シャブとチャカを摘発したことにクレームしてきた黒岩と和解するため、諸星は胸に鉄板を入れて組事務所を訪れた笑。内心ビビりながら黒岩とハッタリのかまし合いで打ち解け、黒岩も諸星のSとなって捜査に協力するようになる。
画像6 村井が黒岩にハメられ、中学生への淫行(でっち上げ)で捕まる。敏腕刑事村井から刑事がのし上がるためのいろはをすべて教わった諸星が、今度はすすきのの帝王に。
画像7 マル暴で主任となった諸星は、見た目も態度も見るからにその道の輩へと変貌していった。刑事という立場だけでなく柔道の腕っぷしも一流であることや、諸星の人間性や面倒見が良い人柄から、ヤクザからも一目置かれる存在となり、信頼を築いていく。互いの便宜を図りあううちにズブズブの抜き差しならない関係となっていく。
画像8 覚醒剤所持で刑務所から出てきたばかりの山辺太郎(YOUNG DAIS)を、旭真会の黒岩から紹介される。DJである太郎はクスリの運び屋をやって捕まったが、ロシア語が喋れる太郎はクスリや拳銃の密輸に何かの役に立つのではと黒岩に推され、諸星が面倒を見ることになった。太郎は諸星をまるで家族のように慕って「オヤジ」と呼び、Sとして活躍する。
画像9 このヤク中の生活保護を受けているばあちゃんも諸星のSの1人笑。「最近売人変わったんだって?それ、どこの組のもんかわかんねぇかな?」「知りたければ、まんじゅう以外のもの持ってこい!」ヤクのことはヤク中に聞くのが1番だろ、とホントいろんなところにSを作ってるw
画像10 太郎に「紹介したい男がいる」と連れて来られた小樽にある中古車店。ここで盗難車のバイヤーをしているのは、ラシード(デニス 植野行雄)といういかにも胡散臭そうな男。彼の国籍はパキスタンだが、インド人と言うと、「ワタシ、パキスターン!!!」と全力で否定する笑。この店にはロシア人の客も多く、銃の密輸ルートにも精通していることから、ラシードも太郎同様に諸星のSとして一役買うことになる。
画像11 所持者不明の銃は摘発しても点数が付かないため、ラシードは自分のいとこを犯人にして2年服役させるのだw ラシードの親戚一同に混じって、「これうめーな!」ってカレー食べるシーンめっちゃ好きww 警察署につれつ行く時に記念撮影してるし。「2年なんてあっという間だ。パキスタンに帰ったら、貰った金で家建てろ!」とラシードに言われ、明るくしょっ引かれるいとこw 「オネガイシマース!」っていうラシードの送り出し方も笑える。
画像12 北海道警本部に銃器対策課が新設され、諸星はそこの第二係長に任命される。銃器対策課長の猿渡は「他の課との拳銃摘発争奪戦で負けてられるか」と、首無し(所持者不明の銃)でもバッタもんでも何でもいいから、とにかく数を挙げろ!と諸星に命じた。諸星は借金をしてSの面倒をみたり、太郎とラシードにロシアに銃を買いに行かせ、トカレフを1丁2万円で購入するなど、拳銃の摘発数を上げるために自作自演してまで奔走する。しかしその後はなかなか数が出ず、諸星の金も底をつき始め、一同はある作戦を思いつく。
画像13 シャブを売り捌く作戦である。渡航費や拳銃購入費、Sの活動費などの資金は潤沢になり、銃器対策課と諸星は次々と表彰され、成果を上げていく。底辺でギリギリなのにみんな表情が楽しそうw 使っている音楽もまたラテンっぽくてイイ。ロシア人が置いていった密漁の籠でカニを獲って食べるシーンもめちゃくちゃ好き。
画像14 銃器対策課に異動してきて早々に、敏子という女に出会う。「諸星さんの名前を知らない人は居ませんよ。私にはわかります。あなたはエースになります。」と囁く敏子に、諸星は骨抜きになる。シャブを売り捌いて羽振り良くなった諸星らの生活も次第に派手になっていく。このルパンダイブのシーンも最高!メイキングにあった撮影現場で白石組はものすごい楽しそうだった!w
画像15 黒岩から舞い込んだ香港マフィアからのシャブ20㎏密輸と引き換えに、チャカ200丁を仲介人もろとも摘発する泳がせ捜査の計画。銃対と税関の合同会議で諸星がプレゼン。しかし実際密輸されたシャブは130㎏笑。新人刑事の小坂(中村倫也)に「何で刑事になった?」と聞くと「公共の安全を守り〜」と模範回答の正義感を口にする。先輩の村井から同じ事を聞かれた時に同じ回答をした諸星は、目的達成のために違法捜査もいとわない自分の中の正義がもはや分からなくなった。複雑な気持ちで小坂の言葉を頭の中で反芻する。もうあと戻りできない。
画像16 130㎏の覚醒剤を持って黒岩が失踪。ブツが渡せないことになり、代金をすでに香港マフィアに支払ったブローカーと揉め事になる。TKO木下演じる関東のヤクザに、柔道でギョウザになった耳をアイスピックで刺されるシーンは強烈!覚醒剤の代わりに大麻2トンを渡すことで方は付いたが、結局200丁の銃の密輸は履行されず、泡を食った諸星たち。これをきっかけに仲間も離れていき、諸星は札幌を離れて夕張警察署の生活安全課に異動させられる。
画像17 黒岩から記念にと受け取ったシャブを初めて打つシーン。自分では打てないので太郎に打ってもらう。このシーンは綾野剛もYOUNG DAISも名演。綾野剛の迫真の演技と顔芸は絶賛されたが、白石和彌監督はこの演技をオリンピックの体操競技に例え、「G難度のアヤノって技だよ、コレは」と称えている。これからヤバイことが起きると分かっていながら、申し訳なさそうに諸星を見つめるYOUNG DAISの目の演技もめちゃくちゃ良い!ここでもそうですが、白石映画で不吉な予感や主人公没落シーンにカメラを傾ける手法はよく使われますね。
画像18 仲間も仕事のやり甲斐も失った孤独な諸星は精神を病み、シャブ漬けになった。やがて太郎が自首し、諸星も覚醒剤所持及び使用の疑いで逮捕される。逮捕の場に立ち会ったのは、皮肉にもかつての銃器対策課の仲間たちだった。
画像19 諸星は刑務所で過ごしている間も、最初は道警が自分達に課した過酷な拳銃摘発のための任務や違法な捜査も、全て道民の安全を守るために正しい判断だったと主張していた。しかし、過去の泳がせ捜査をネタに、諸星の元上司の岸谷が山辺太郎にゆすられていたことをきっかけに自殺したこと、山辺太郎もまた服役中に独房で自殺したことを知り、これまでの主張を一転させ、道警の組織ぐるみの隠蔽を暴露する陳述を行った。しかし、名前が挙がったものは誰一人罪を認めていない。裁判で稲葉に下された判決は、懲役9年、罰金160万円というものである。
画像20 諸星のモデルとなった人物である稲葉圭昭氏。当時、日本警察史上最大の不祥事と呼ばれた「稲葉事件」は大きな反響を呼んだ。出所してからは探偵業に就く傍ら、次男さんと八百屋をされているとのことw 映画本編にもチョイ出演してます。夕張警察署に配置転換された諸星が、久しぶりに札幌にやって来るシーンで、路面電車に乗っている時に端っこに写っているサングラスのおじさん。しかし、イイ顔して笑うね、この人w 不謹慎な題材だけど、エンタメ性抜群だし人間味に溢れてる。こんな面白い作品を世に出してくれた白石和彌監督に感謝です。

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