新 もういちど読む山川世界史4

前置き&日常

時が過ぎるのが早すぎる。
更新を習慣づけると言っておきながら、前回からもう2週間ほど経っている気がする。
とはいえこの期間はいろいろなことをやったので、世界史以外にも少しアウトプットしてみようかと思います。
まずは何をおいても進めたい世界史を。

第1章:古代の世界~3 古代ローマ帝国(P29-35)

さて、本題。前回の古代ギリシア・ヘレニズムの記事はこちら↓。

第3節では、古代ローマ帝国を取り上げる。

1.古代ローマ帝国への道程
ローマはラテン人がイタリア半島中部に建設した都市国家であった。
はじめは王政→近隣の先住民族エトルリア人による支配→異民族の王を貴族が追い払い、貴族が共和政を樹立(前6世紀末)という変遷をたどる。
共和政のもとでは、はじめは貴族が政権を独占していたが、ギリシアと同様に重装歩兵の平民が力を持ち始め、政権を求めた。前5世紀~前3世紀にかけ、平民にも最高官である2名の執政官(コンスル)(※1)のうち1名の就任を認めるなど、貴族側が譲歩を重ねて身分闘争を終わらせた。元老院(※2)の力も強く、ギリシアと異なる性格の民主政が発展した。
ローマは中小農民を中心とする重装歩兵群を送り込み、半島を統一した。三度にわたるポエニ戦争を経て、フェニキア人の植民市カルタゴ(※3)を滅ぼし、その後前1世紀後半には地中海世界を征服した。
しかし、そういった対外征服の陰で、戦争による戦士、耕地の荒廃、征服地からの安価な穀物などによる中小農民の没落が進んでいた。征服地からの奴隷(※4)を使い、中小農民の土地を買い占めて土地経営を行う有力者たちが現れる。
グラックス兄弟が農民の手に土地を取り戻そうとするも有力者の反対で失敗し、ローマは内乱期に入る。閥族派と平民派に分かれた有力者たちは、やがて共和政を無視した三頭政治を生み、その結果、カエサルが独裁権を得た。
第2回三頭政治で登場したオクタウィアヌスのもとで内乱は終結し、オクタウィアヌスの単独支配(※5)となった。

2.パクス・ロマーナからローマ帝国の衰退
カエサルの遠征により、前1世紀後半には、ローマは地中海周辺から西ヨーロッパに及ぶ大国家となる。オクタウィアヌスは、元老院からアウグストゥス(尊厳者)の称号をうけ、事実上の独裁を行った。以後をローマ帝政期と呼び、五賢帝時代までの前半約200年はおおむね平和が続き、パクス・ロマーナ(ローマの平和)(※6)とたたえられた。
ローマ帝政期の後半では、東方のパルティア(※7)や北方のゲルマン人がローマ領内へ侵入し、また3世紀には軍隊が皇帝を廃立する軍人皇帝の混乱期が始まった。3世紀末、ディオクレティアヌス帝は国土を四分し、自らの神性を主張するオリエント的専制支配を行い、その後コンスタンティヌス帝は再度帝国を統一し、都を東方のコンスタンティノープル(※8)に移した。専制君主政の中で身分や職業の世襲化がはかられ、市民的自由は消滅した。
しかし、395年、テオドシウス帝が国土を東西に二分し、帝国は解体された。東ローマ帝国(ビザンツ帝国)はその後約1000年続いたが、西ローマ帝国はゲルマン民族の大移動(※9)のさなか、476年に滅んだ。

3.ローマの文化的特徴
ローマ文化の最大の遺産はローマ法である。前5世紀半ばの十二表法(※10)から、2世紀から3世紀初めにかけて法学の隆盛を見たのち、6世紀につくられた『ローマ法大全』で大成した。建築や農業の著作からも、ローマ人の実用的学問の関心がうかがえる。
また、ローマ帝国に征服された民族の犠牲と不満は、支配者たちへの抵抗運動につながり、キリスト教の発展の端緒となった。パレスチナのユダヤ人たちの苦難と抵抗のなかで、ユダヤ教の形式化と堕落を批判し、身分や貧富、善悪の区別を越えた神の愛と救いを説いたイエスの教えが生まれた。一部の民衆からメシア(救世主)と呼ばれたイエスだったが、ユダヤ教の指導者たちはイエスをとらえ、ローマ人の総督に処刑を求めた。処刑されたイエスの死後、彼をキリスト(メシアのギリシア語訳)と信じる教えがペテロ・パウロらの布教活動で広がっていった。帝国はキリスト教徒を迫害するも、勢いは収まらず、やがてコンスタンティヌス帝はキリスト教を国家祭儀に取り入れる方針を公認した(313年ミラノ勅令)。さらに、325年ニケーア公会議で、のちに三位一体説として確立するアタナシウス派の考えを正統とした。そして4世紀末、テオドシウス帝が正統のキリスト教を国教として他の宗教を禁じたことで、キリスト教はヨーロッパ世界の統一的宗教としての基礎を得た。

おもしろ&わからんポイント

今回は題材の性質上、TtTオタクの戯言が多すぎるので、TtTなどのオタクコーナーには線を引いておきました。適宜読み飛ばしてください。。

1.古代ローマ帝国への道程

※1.執政官(コンスル)
執政官は、任期は1年で、必ず二人が選出され、互いに拒否権を持つ、という特徴がある。当初は貴族が独占していたものの、富裕な平民も就任可能となった。さらにコンスル経験者なら元老院にも入れるため、平民出身の元老院議員が現れる。これらの平民は新貴族(ノビレス)と呼ばれ、貴族と異なる支配層として台頭した。ローマの高官は無俸給かつ出費が多いため、平民でも富裕な民しかなれなかったが、そのために高度な武装が可能となり、騎士と呼ばれた。
ローマが属州を得るようになると、新貴族は属州民に重課税を強いて更なる富を得て政治資金に充てるが、一方で、公共事業への投資や飢饉の対応など、義務ではないものの社会への貢献は当然視されていた。
ノビレスは「顕著な」という意味だが、後に「高貴な」という意味あいを持つようになり、「ノブレス・オブリージュ」の理念の基になった。(参考:コンスル/執政官 (y-history.net)新貴族(ノビレス) (y-history.net)


ここからはTtTオタクの戯言を言いますが、ちょうど先日、アニメ版を見返したくなって家にあるブルーレイをゴソゴソし、9話から再生してみたんです。
(若者にはわからないかもしれないですが、平成のオタクは好きなアニメの円盤コンプリートBOXを買ったりするのですよ)
9話は、上官に刃向かった名門女騎士オクタヴィアが、罰として縛られ箱に入れて流される直前に、幼馴染である冷血な帝国貴族の女司令官、リディアと再会するシーンから始まる。
リディアはクソデカ歪み感情をオクタヴィアに抱いており、過去に剣士として正式に一騎打ちをした際、オクタヴィアがリディアに止めを刺さなかった屈辱をいまだに許せないでいる。その屈辱を、秩序の名のもとに蛮族を粛正することで残虐に解消している。
「お前のその柔肌を切り裂き、鞭を打ち据えてやりたいわ。ククッ、さぞかしよい声で啼くだろうな!」
「……だが、お前の処分は軍が決定したもの。もう余には指一本触れられぬ! ああ、口惜しい……!」
「もう、余は知らぬ。お前など、どうでもよい! さっさと余の前から消えるがよい、この愚か者がッ!」

的なセリフをCV:沢城みゆきが振り切った演技で延々と並べたてるので、とってもおすすめな回です。

クソデカ感情リディアさん

その後の10話は特に、リディアとオクタヴィアの関係性を軸に、アニメオリジナル脚本で力を入れて作っているので本当にいい。
私は原作ゲームと違い、オクタヴィアをアロウンの妻にしなかったことはナイス改変と思ってます。当然ギャルゲ/エロゲなので原作はそれでいいんですけど。
で、ここで世界史に戻ると、高貴な誇りを胸に腐った帝国上官にたてついた騎士オクタヴィアと、残虐かつ厳正に秩序を与える帝国貴族リディアの対立が、ローマ共和政の平民と貴族の対立になぞらえられるとも言えるわけですね。全私が泣いて喜んだ。



※2.元老院
元老院に任期はなく終身その地位につくことができたため、1年の任期を持つコンスルより経験があることで信望を集め、権力を得た。コンスルや皇帝に対する助言を行う役目。(参考:元老院 (y-history.net)


TtTでは、アロウン討伐に手こずったガイウスが、元老院に軍の増援を断られ、皇帝への謁見を求めますが、無下にされます。元老院が力を持ったころ、中期のローマ共和政をイメージしているわけですね。
(実際のところは、皇帝は永遠の命を求めてすでに存在しませんけどね)
アニメ版のリディアも、堕落した元老院に誇り高き貴族として一矢報いるために一騎打ちをします。



※3.ポエニ戦争、フェニキア人の植民市カルタゴ
フェニキア人は第2回の記事で出てきたけども、カルタゴ?と思って調べてみたところ、ハンニバルだった!!
ローマ人の言葉でポエニ=カルタゴであると。カルタゴは今のチュニジア。
そして、カルタゴの名前はフェニキア語の「カルト・ハダシュト」からきているらしい。


これは大変に盛り上がりますねえ!
実はTtTにはシリーズ続編があります。TtT2/ティアーズ・トゥ・ティアラII 覇王の末裔(PS3)は、ハンニバルの話で、主人公はハミル(カル・バルカ)。
確かにHPにある地図上のチュニジアっぽい地点にカルト・ハダシュがあります。カルト・ハダシュは帝国貴族エリッサがいる都市。そしてエリッサの傍にはアクアプラスの十八番である男の娘の解放奴隷ダフニスがついている。
一通りクリアしているため、史実のアルプス越えの話も何となくは分かるものの、史実だとハミルカルは死に、ハンニバルがゾウさんとアルプスを越えているんですね。ゲームではハミルは途中で死なず、ハンニバルと同じことをハミルがしたことになると。
私は恐ろしくて志摩スペイン村のピレネーすら越えることはできなかったわけで、尊敬しかないですわな!!



※4.奴隷
P30のコラムでは、奴隷制度を取り上げている。奴隷にまつわる対比が3つのポイントで示されている面白いコラムだ。
一つ目は、オリエントギリシア・ローマ。オリエントでは王宮や神殿が奴隷を所有していたのに対し、古代ギリシアや古代ローマでは、一般市民も奴隷を所有していたことから、奴隷制社会の典型とされている。
二つ目は、ソフィスト哲学者。ソフィストは相対主義のもとに、奴隷制は人間性に反するとしたが、アリストテレスは奴隷を手段のための道具とみなして擁護した。哲学者、本当そういうとこだぞ。
三つ目は、ギリシアローマ。ギリシアでは、戦争捕虜だけではなく自由市民でも自身を担保にしたために奴隷になるものもいた。アテネでは人口の3分の1が奴隷であり、ポリスは奴隷労働の余暇の上に生み出されていた。スパルタは征服した先住民を奴隷(ヘロット)としており、ヘロットへの危機感が強い軍国主義体制を生んだ。
一方ローマでは、善意などから奴隷を解放するのに前向きであり、3世紀以降には、大農場でも奴隷制から小作制に切り替えられた。


なるほどダフニス(※3参照)が解放奴隷かつエリッサに忠実なのはこういう背景があるわけね。



※5.オクタウィアヌスの単独支配
カエサルにオクタウィアヌス(アウグストゥス)にと盛りだくさんすぎて困る。調べきれないなあ、もう。世界史スピード感すごすぎる。
気になったポイントは、オクタウィアヌスのアクティウムの海戦
三頭政治の一人、アントニウスクレオパトラ(暗殺されたカエサルの妻)にメロメロになり、第2回三頭政治で結びつきを強めるため――つまり政略結婚したオクタウィア(オクタウィアヌスの姉)に我慢を強いてアレクサンドリアに居つき、さらにはクレオパトラとの子をもうけてしまう(しかも3人も……)。ついには離婚後、オクタウィアヌスがアントニウスとクレオパトラの連合軍を滅ぼす、という戦である。これにより三頭政治は崩れ、オクタウィアヌスの独裁になる。
この辺りのクレオパトラの話、小学生ごろに誰かから借りた少女漫画で読んだ記憶があるのだが、いったい何という漫画だったかが全く思い出せない。やたら面白くて熟読した覚えはあるのだが、タイトルに「クレオパトラ」とは入っていなかった気がするし、主人公も別の人だったと思うのだが、ちょっとググっても思い出せずモヤモヤ。。。
それだけでなく、カエサルやオクタウィアヌス、クレオパトラのフィクションは多いだろうから良作を知りたいところ。


TtT的にはガイウスはやっぱり名前的にカエサル(ガイウス=ユリウス=カエサル)がモデルなんだろうか、というのが気になる。



※6.五賢帝時代、パクス・ロマーナ(ローマの平和)
五賢帝時代とは、ネルウァ・トラヤヌス・ハドリアヌス・アントニヌス=ピウス・マルクス=アウレリウス=アントニヌスの5人のローマ皇帝の時代のこと。
P32のコラムによると、広大な帝国内でラテン語、共通の法律や度量衡(長さ・体積・重さ)が行き渡り、出身地や民族の違いをこえた「ローマ市民の世界」が拡大して、均質化を生んだ
このようなローマの支配は、確かに平和をもたらした。各地に文化施設を作り、教育を発展させ、ローマ市民権をあたえることで支配者と被支配者の差別をなくした。これがローマ人に言わせるところの「文明化」であった。一方で、被支配者から収奪することで、彼らに屈辱、敗残の悲しみを同時に与えた。諸民族は各地で抵抗と反抗の戦いに立ち上がったのである。


ここからはまたTtTの戯言ですが、このコラムの言わんとしているところは完全にTtTならびにTtT2のテーマと一致しており、ゲームではフィクションとして帝国に打ち勝つ民族の誇りを描いていることがよくわかります。
TtTでいうと、正ヒロインのリアンノンやその兄アルサルの一族(ゲール族)はいわゆる「文明化」されていない”蛮族”として扱われており、さらに蛮族側には主人公である”魔王”アロウンがついています。
(主人公が蛮族の一等剣士アルサル(≒アーサー)ではなく、謎の魔王アロウンであるところがこの作品のミソです)
一義的に帝国が正しいとされているが、主人公は帝国に尊厳を踏みにじられた蛮族側から、帝国の正しさをひっくり返す戦いを挑んでいるわけです。
ストーリーの展開としては、【帝国 vs 蛮族】という構図は、ファンタジーとして【”神” vs ”魔王”】といった異なる角度から捉えなおされるわけですが、そのあたりも含めて歴史好き(というかアーサー王物語好き?)の方は面白がってプレイしてみてほしいですね。
ところで、史実だとこの被支配者の収奪による苦しみは、キリスト教の端緒となるようですが、TtTでは帝国=神聖帝国を否定した魔王サイドはどこに向かうのかは気になるところ。
魔王サイドが掲げる”友”、”誰もを受け入れる場所”としてのアヴァロンという思想や、アーサー王のWikiを読んでもキリスト教的君主としてアーサーが描かれているようなので、何となく察するものの、単にそれだけだとつまらないような。
まるい先生、さらなる続編をお願いします。それより何よりTtT3をお願いします。


もう一点、ハドリアヌス帝といえば、進研ゼミ『テルマエ・ロマエ』で主人公ルシウスが仕えるハドリアヌス帝ですね。映画でいうと、市村正親。
ハドリアヌス帝も、後の皇帝アントニヌスも穏やかで大変理知的に描かれていて、こっちを読むと帝国LOVEになるわけです。
ルシウスのローマ人としての尊大さも、一所懸命な行動を思えばフフッと笑えるくらいのものであり、風呂や建築といったケアに焦点を当てているために、かえって帝国の残虐なふるまいの裏ににじむ苦さ、平和を希求し維持に努める為政者の苦しみ、といったものも感じさせる本当に秀逸な作品だと思います。



※7.パルティア
カスピ海南東、古代イラン。次にやるっぽい。

※8.コンスタンティノープル
現在のトルコ・イスタンブールの前身。イスタンブールは首都ではなく、アンカラが首都だけど、アンカラより人口が多いんだって。なんで?

※9.ゲルマン民族の大移動
あまりにもあっさり滅んだのでびっくりしたけど、大移動についてはだいぶ後にやるっぽいです。びっくりした。

※10.十二表法
ギリシアのソロン(前6世紀のアテネで平民と貴族を調停した。ソロンの改革)の業績を調査し、ローマにおける慣習法を初めて明文化したもの。身分闘争の中で平民の求めによって生まれ、「神のお告げ」としての裁判ではなく、法によって裁く裁判が始まった。十二表法の名は十二枚の板に書かれたため。(参考:十二表法 (y-history.net)

※番号なし.教父アウグスティヌス
アウグスティヌスのコラム(P34)には、『神国論』(全22巻)が「「神の国」と「地の国」が対立する場として現実の世界を位置づけ、神の導きによって歴史は進むとするキリスト教的歴史観にもとづいてローマ帝国の衰退理由を論じ」たことが記載されている。これだけだと正直さっぱりわからないが、『神国論』は一種の古代の百科事典的な性格も持つという。
それよりも、後半のエピソードが面白い。晩年、北アフリカのヒッポの司教であったアウグスティヌスは、アフリカで略奪を繰り返すヴァンダル族に町が包囲された時、「司教はいかなるときも住民を見捨てず、生命を賭けて働くべし」と考え、住民を励まし続けたという。かっこよ!!
しかし、熱病にかかって76歳でその生涯を閉じたとのこと。長生き!!

後書き

執筆に1人日程度かけたのに、教科書上ではたった7ページしか進んでいないなんて、本当に信じられない。
しかしここは盛り上がるところなので、できるだけメモしておきたいし、楽しかった。オタク的な意味でも。
とはいえ、この後はスピードアップしていかないと終わらないので、粒度下げようかな。

よう考えたらマビノギオンやアーサー王物語のあたりは、大流行したあのFGOとかでも取り上げているんでしょうか。であればもう若者も含めて大多数の人が好きなジャンルなのかな。
年季の入った坂本真綾ファンにもかかわらず、FGOならびにFate関連は興味がないのでよくわからないのですが、まあいいか。

おわり。

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