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「作家のエージェント」お仕事インタビューを掲載します|有海茉璃さん|入社3年目

新型コロナが拡大するなか、大学卒業後に「新卒」でアップルシード・エージェンシーに入社した有海茉璃(ありうみ・まいり)さん。応募原稿の講評担当や先輩エージェントのアシスタント業務を経て、現在、文芸からノンフィクションまでさまざまな分野の作家のエージェントとして活躍しています。今回は「作家のエージェント」のリアルな仕事内容が分かるインタビューをお届けします。


――「作家のエージェント」は、どういう仕事ですか?


有海茉璃さん(以下有海、敬称略): 著者の代わりに営業や広報をする仕事です。と、一言で言っても、その仕事内容は幅広いのですが、著者のブランディングも踏まえた書籍企画の立案、出版社への企画営業、執筆の伴走、条件や契約書の調整……などが主な仕事となります。

――どんな分野の、どのぐらいの著者を担当していますか?


有海:現在、先輩方との共同担当も含めて、20名ほどの著者を担当しています。うち文芸は3割で、一般文芸やライト文芸が中心です。ノンフィクションは7割で、ジャンルとしてはビジネス実用や生活実用、雑学、心理系の読みものなどです。

作家や編集者と打ち合わせをする有海さん

 ――有海さんにとってエージェントの仕事の面白みはどんなところですか?

有海:「まだ誰も知らない企画や原稿に最初に触れられること」と、「自分が面白いと思った作品や原稿、著者が世界に知られる瞬間」です。著者と企画のご相談をしているときに、「この本は自分も欲しい」とか「面白い!」と思い入れを持った企画が、出版社に採用され、刊行され、そして多くの人に読まれているところを見ると、嬉しいですし、やりがいを感じます。……と書くと少し高尚な感じがするかもしれませんが、企画が採用されたときは、単純に「やっぱりこの本(企画)いいよね」と同志を見つけたような気持ちになっています。

――出版社に企画を営業するなんて大変そうですが、どんなふうにしているのでしょうか? 


有海:私は営業向きというより、むしろ内向的なタイプです。入社当初は、必要以上にあがってしまうこともありました。初めての営業では、編集者がどんなところを気にして質問するかの予想もできず、全くうまく答えられず、この仕事を続けていけるか心配になったのを覚えています。
 3年目に入った今は、営業と意気込むというよりは、「面白い」「この本は必要だ」と思う企画の推しポイントや、ヒットしそうだと考える理由を整理してお伝えするようにしています。まだまだ修行中ではありますが、口下手な自分にはそのほうが合っているようで、今期は10本ほどの企画が通過しています。質問される内容も、先輩方の営業に同席したり、経験を積むうちに少しずつ予想できるようになってきました。

――今年印象に残った担当著者や作品について教えてください。


有海:すべての作品が印象に残っていますが、敢えて言うなら、2023年に『猫を処方いたします。』という作品がベストセラーになった、小説家のの石田祥さんです。石田さんから原稿が送られてきたとき、すぐに「面白い!」と感じました。「猫を処方する」という奇抜だけどキャッチーなアイディアと、石田さんならではの人物の描き方、コミカルな要素もとてもうまくマッチしていて。

石田祥さんの『猫を処方いたします。』(PHP文庫)

 刊行してすぐに猫好きの方を中心に多くの方に読んでいただいて、有難いことに今はシリーズ累計13万部を突破し、現在、海外17カ国から出版のお問い合わせが届いています。版を重ねたり、作品が広がっていくたびに、著者の石田さんを除いて最初の読者だった私は嬉しくなると同時に、「もしこの作品を弊社でお預かりできないと判断していたら……」と少し怖い気持ちにもなります。企画や原稿の目利きも、エージェントの大事な仕事のひとつです。

2023年に刊行された有海さんが担当した作品

――逆に、大変だと感じることはありますか?


有海:出版社の企画採用のハードルが上がっている今、採用される企画がうまく作れなかったり、自分が面白いと思っていてもなかなか採用されないときです。以前、担当している著者が「自分が書きたいことと、書けること、市場が求めていること。この全てが重なる《売れ筋》を見つけるのが大変」と仰っていたことがありますが、エージェントは著者と一緒に売れ筋を探るお手伝いが重要です。

――「売れ筋」を見つけるために、日頃気をつけていることはありますか?


有海:弊社は日本にあるほぼ全ての主要な出版社とお仕事をご一緒していますので、たくさんの編集者の意見や関心を知ったりトレンドを追いやすい立場にあると思います。なるべくその情報を自分なりに分析して、うまく活かすようにしています。

先輩エージェントと原稿について話し合う

――どんな人がこの仕事に向いていると思いますか?


有海「得意ジャンルが複数ある人」や「広い分野に興味が持てる人」でしょうか。ノンフィクションなら、ビジネスから生活実用、雑学、エッセイなど、本当に多様な専門性を持つ著者がいるので、いろんなジャンルに興味を持てる人だと仕事が楽しいと思います。
 実務的なところでは、「コミュニケーションを大切にする人」です。エージェントは仕事柄、著者や編集者、ライターなど、誰かと一緒にチームとしてお仕事をします。制作が順調な時もそうでない時も、しっかりコミュニケーションを取り合い、最後まで伴走し続けることを大事にしたいと思っています。

《エージェントのある一日》
11時 ビジネス書の編集者へ新しい企画の売り込み(場所:出版社A社)

13時 昼食

14時 制作中の書籍の取材に同席(場所:オンライン)

16時 実用書の編集者へ著者を紹介(場所:会社)

18時 事務作業(場所:会社)

19時 帰社 

*仕事内容が多岐にわたるので、営業中心の一日もあれば、企画書作成や原稿のリーディングのみに専念する一日もあります。ただ、著者と編集者どちらともやりとりが発生するので、メールの多い仕事です。

*自分の仕事も著者の活動も、スケジュール管理がとても大事です。私は粗忽者なのでうっかりミスが結構大きな痛手となって返ってくることがあります。「あと3日間で読まなくちゃいけない原稿が〇つもある!」とか(笑)



有海茉璃(ありうみ・まいり)
神奈川県出身。早稲田大学文化構想学部卒業後、2021年に入社。在学中は、英語での翻訳・批評ゼミに所属し、卒業論文では日本未訳のYAを完訳。イタリア語も勉強中で、大学3年次にはcilsB1(一部の現地大学で入試免除レベル)を取得し、ペルージャに短期留学した。読書を好きになったきっかけは『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』シリーズで、今も海外文学やファンタジー、ライト文芸などフィクション全般をよく読む。目標は、これだけたくさんの娯楽があふれる中で、それでも若い人が手に取りたくなる文芸作品を作ること。趣味は、犬の散歩、海外映画・ドラマ・アニメ鑑賞。

現在、アップルシード・エージェンシーでは、ビジネス書や実用書を担当するエージェントを募集しています。エージェントのお仕事に興味をお持ちになった方は、ぜひ弊社求人にご応募・お問い合わせください。

ビジネス実用の書籍を担当する「作家のエージェント」を募集中!

(文責:栂井理恵)


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