2014年8月の記事一覧
ショートショート「追想」
ショートショート「追想」
古い家を取り壊す際、何やら模様の書かれた紙を子供達が発見した。
「これ、なんだ?」
「『文字』ってものらしい。大昔の意思疎通プロトコルだ」
大脳神経に通信端末を埋め込んでいる最近の子供達には直接、検索情報が音声付の映像として脳に伝わってくる。実は今の会話も子供達は一言も発していない。脳内の端末同士の無線通信で瞬時に意思が相手に伝わるのだ。
「これ、どんな情報が記録され
ショートショート「再会」
男はその日、牢から出た。
男は長い間、牢に入っていた。
男の属していた組織の、不祥事の責任をとったのだ。
別に男一人が悪いわけではない。男が責任者だったわけでもない。
だが、無実、なのでもない。
誰かが罰を受けなくてはならなかったのだ。
牢から出た彼を迎える者は、だれもいない。
男一人に罪をかぶせ、多くの人が救われたが
誰も感謝などしなかった。
むしろ、男の存在を汚いもののように