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視座が高いとはどういうことか?

戦略コンサルタントのアップルです。

本稿では、「視座が高いとはどういうことか」「その効能は何か」についてアップルの考えをまとめておきます。コンサルタントに限らず、広くビジネスパーソンにとって大事なことだと考えていますので、ぜひご覧ください。

戦コンは視座という言葉を多用する

視座が高い、あるいは視座が低いという言葉はビジネスシーンでたまに使う程度ではないかと思います。業種、職種によってはめったに使わないでしょう。一方で、戦略コンサルティング業界では視座という言葉を日常的に使います。しかしながら、戦コンに限らず多くの人にとって大事な概念だと考えています。理由については後々述べていきます。

視座は地頭の一要素という位置づけ

以前、地頭とは何ぞやということについて記事を書いたことがありました。地頭には広さ、深さ、高さ、回転、発想の5つの要素があり、戦略コンサルティングではこれらを複合的に駆使する必要があるというようなお話でした(5つの地頭要素をアップルなりに構造化したのが下図。詳しくは以下に添付する記事をご覧ください)。

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この5つの要素の中で「高さ」と表現しているのが視座のことです。つまりアップルは、視座の高さは一つの重要な地頭の要素だと捉えています。なぜ視座を上げる頭の使い方が重要なのか?その「効能」に話を進めていきましょう。

「視座が高い」のイメージと効能

前提として、視座が高いとはどういう状態のことを指すのでしょうか?アップルなりに図解すると次の通りです。

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Z軸が視座の高さを表しています。この図の中に何人かの人物が表示されていますが、それぞれの視座の高さは異なります。ある会社に100人の社員がいる場合、100人の視座はそれぞれ異なります(Z軸の値は100人全員異なる)。

上図を見取り図としながら、視座の高さの3つの効能を解説します。

 効能①:視野が広がる

まず、視野が広がります。この図のとおり、Z軸の上位に位置する人の方が視野が広い(見えるx軸×y軸の面積)傾向にあります。高いところから見るからこそ遠くまで見えるということです。視座が高まることによって広い範囲の情報が見えるようになりますし、それによって思考の幅も広がるというメリットがあります。

 効能②:見えるイシューが増える

もう一つは、いろんなイシューが見えるようになることです。図の中に赤い★マークが散らばっています。この一つ一つが何らかのイシューを示しています。ポイントはこの★が様々な高度に分布している点です。というのも、イシューというのは、一定以上の視座の人には見えるが、一定以下の視座の人には見えないという特性があるからです。視座が高いほど高度の高いイシューも見えるようになり、結果的に広く様々なイシューを把握することができます。企業活動に従事する上で、イシューを広く把握できるに越したことはありません。

 効能③:直面するイシューを相対化できる

さらに、自身が直面するイシューを「相対化」することができます。例えばあなたが営業部門に所属していたとしましょう。営業部門のミッションは商品を売ることなので、「営業において何が課題で、何をすればよいか?」というイシュー設定をします。しかし実態は商品力の低下によって売れなくなっているとしましょう。こうした場合、自身が直面するイシューだけをこねくり回しても、課題の根本的解決には至りません。「そもそも売れない原因はどこにあるのか?」と視座を上げ、その中で「営業をどうすべきか?」というイシューにどれだけ意味があるかを相対化し、相対化の結果他のイシューの方が重要ということが分かれば他部門への働きかけや経営への提言をすべきだという判断になります。

視座の高低は何で決まるのか?

では、視座の高低は、何によって決まってくるのか?これは様々な要因があると思いますが、(学者などはさておき)ビジネスパーソンの視座の高さは組織における役職によって概ね決まってきます。平社員よりも課長の方が、課長よりも部長の方が、部長よりも役員の方が一般的には視座が高い傾向にあります。「概ね」とか「一般的」と書いたのは、例外もあるからです。平社員でも中にはものすごく視座が高い人もいますし、逆に社長なのに視座が低い人もいます。これは個々人の資質、普段どんな人と接しているかやどんな本を読んでいるかにも左右されるからです。

とこのように、企業においては役職によって視座の高低は変わってくるのですが、このことは戦略コンサルティングの仕事をしていると如実に感じます。戦略コンサルティングのプロジェクトでは上は社長・役員から下は若手の役職なしの社員まで接しますが、その視座のギャップの大きさにはかなりのものがあります。視座のギャップが大きすぎると、下は上の考えていることや話すことの真意が理解できないため、組織内コミュニケーションの一つの阻害要因になっているとさえ感じることがあります(その障壁を解消するのが戦略コンサルタントの役割の一つでもある)。

具体例:コンビニ業界における視座の高低

役職によって視座が変わるというのが今ひとつピンとこないかもしれませんので、一つ具体例をお示しします。わかりやすい業界ということでコンビニ業界を例にとります(セブンイレブンあたりをイメージしながらご覧ください)。

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レベル4までは、ざっくりとコンビニの役職階層に対応させています。レベル1は各店舗で働く店員(バイト含む)、レベル2は店長、レベル3は本部でマネージャーとして様々な業務に従事する人(店舗開発、商品開発、プロモーションなど)、レベル4は社長などの経営者です。図に示しているとおり、各役職層のミッションや業務に応じて、視座が大きく変わります。例えば店員は自身のことしか基本的には考えていないでしょう。これが店長になれば店全体のこと(但し自分の店舗だけ)、本部マネージャーは複数店舗での全体最適に関わること、経営者ともなれば自社の枠を超えて「業界」という視点でも物事を考えます。

このように、役職層によってミッションが大きく変わるからこそ、それに伴って必然的に視座が変わってくるということです。

なお、上記にレベル5とありますが、これは一つの会社という枠を超え、産業構造やマクロ経済の視点で考える一番高いレベルの視座です。記載のとおり経済学者、経営学者はこういう視座で研究を行っていますし、優秀な政治家や官僚、また大前研一氏のような一流のコンサルタントもレベル5の視座で物事を捉え考えています。この視座の人たちは、コンビニという業態をマクロ経済のトレンドの中で解釈したり、産業構造が今後どう変わっていくのかという視点から解釈するでしょう。

戦略コンサルタントも経営トップと対話するときにはレベル5の視座を具備しておかないといけないという感覚があります。なぜならレベル4だと経営トップと視座が同等であり、故に新しい視点や切り口を提示できないからです(概ね想定内の話をすることになってしまう)。レベル5の視座を持つのはなかなか難しいことですが、トップマネジメントを相手にコンサルティングをする上では必須だと感じます。


今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!

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