見出し画像

戦略策定が難しい本質的な理由

戦略コンサルタントのアップルです。

今回は戦略策定が難しい理由について書きます。戦略策定は一般的に難しいとされています。だからこそ戦略ファームには優秀な人材が集まり、クライアントから高いフィーをもらっています。ではその根源的理由は何なのか?ご興味ある方はご覧ください!

戦略策定の難しさはストーリー化にある

戦略とは何か?というようなことは以前別の記事で書いたときにも少し触れた記憶がありますが、優れた戦略というのはきれいなストーリーになっています。聞き手の頭に「お話」としてすっと入ってきて「あー、確かにこの戦略で収益が伸びそうだな」とか「この戦略で勝てそうだな」と思わせてくれるのが優れた戦略です(一昔前にヒットした「ストーリーとしての競争戦略」という本もこれに類することを主張していたかと思います)。

そして、この「戦略=ストーリー」であるということが、戦略策定が難しい根源的な理由だとアップルは見ています。具体的に説明しましょう。

戦略とはあるゴールを達成するための道筋やシナリオです。例えば事業戦略であれば、「3年後に1,000億円の売上に成長させたい」というようなゴールがあり、それを達成するために何をどう進めていくか(営業・マーケティング、商品開発、組織・人材強化など)をシナリオとしてまとめたものが事業戦略ということになります。

シナリオであるということは個々の施策や取組を「線」でつなぐ必要があります。

施策A→施策B→施策C→・・・
という施策の連鎖を設計しないといけません。つまり戦略には「順序」と「時間軸」が内包されているのです。

施策A→Bだとうまくいくが、逆のB→Aだとうまくいかない。
施策Aの後にBを打つタイミングを間違えるとうまくいかない。
こういった難しさを内包しています。

このように「順序」や「時間軸」を絶妙に設計するためには、左脳と右脳の掛け算の総合力が求められます。ロジックで施策をつなげていく力が左脳。無数につなげ方や組み合わせがある中、センスと直感と経験で最適なシナリオを見出していくのが右脳。この双方が満たされてはじめて「いい戦略シナリオ」が出来上がります。

左脳と右脳のどちらが欠けてもいいものは出来上がらない。
センスや経験もかなりものを言う。

ここに戦略策定の難しさの本質的な理由があります。

ビギナーコンサルタントが陥りがちな罠

こうした難しさゆえ、戦略策定力の醸成には経験と時間を要します。左脳と右脳を両面で駆使していくつもの戦略策定の経験を積む中で、徐々にストーリーとして戦略を組み立てていく感覚が身についていきます。したがって戦略ファーム入社したてのコンサルタントは(一部の天才を除いて)戦略策定をうまくできません。

陥り勝ちな罠は「網羅的に検討してしまう」というものです。例えば、3C分析(市場分析、競合分析、自社分析)を、「同じ重みづけ」で、「順序を付けず」、「網羅的に」分析してしまうのがよくある話です。

「色々調査分析をしてはみたものの、事業戦略は浮かび上がってこない。はて、どうしたものやら、、、」。こうした事態に陥りがちです。

つまり、網羅的に調査や分析をしても、そこから自ずと戦略ストーリーが浮かび上がってくるわけではないのです。戦略ストーリーに繋げるためには、3C分析ひとつとっても、順番を意識してやることがとても大事です。セオリーとしては、市場分析→競合分析→自社分析の順にやります。

・ターゲットのセグメントと狙うニーズを定め(市場分析)、
・そのターゲットを同じく狙っている競合のポジショニングや強み・弱みを整理し(競合分析)、
・自社の強みも踏まえて自社のポジショニングを定める(自社分析)

こういう手順でやるとそれぞれの分析が戦略ストーリーの要素として生きてきます。上記の順序はあくまでセオリーで、対象とする市場や業界によっては、競合分析→市場分析→自社分析の順序が適切、あるいは自社分析→市場分析→競合分析の順序が適切ということもあります。時々の状況に応じてこの辺の見極めやコントロールをどれだけできるかが難しさであり腕の見せ所です。

逆に、業務コンサルの難易度が低い理由

戦略コンサルに対して業務コンサルやITコンサルの難易度が相対的に低いのは、ストーリー性があまり求められないからです。

業務コンサルであれば、業務の課題をロジックツリーで網羅的に洗い出し、それらを(優先順位を付けつつも)網羅的に個別解決策でつぶしていくようなことをやります(と理解しています)。この作業に順序性や時間軸はほとんど入ってきません。左脳を駆使してきっちりとロジックツリーを描くスキルは求められますが、そこにさらに右脳を掛け合わせてクリエイティブにストーリー化していくようなことはさほど求められないというわけです。

戦略策定力を高めるためには?

それでは、戦略策定力を高めるためには何を意識すればよいのでしょうか?上述のとおり経験値がモノを言うので即効性のある打ち手はありませんが、「常にストーリーとして言語化することを意識する」というのがお勧めです。

調査分析をある程度進めた段階で一旦ストーリーを書き下してみる。誰かから「どんな戦略になりそうなの?」と質問されたときに、1~2分でストーリー立てて説明することを試みてみる。こうしたことをどれだけ強く意識するかで戦略策定力の成長角度は高まるはずです。

戦略ファームの若手の方をはじめ、戦略策定に関わる方はぜひ参考にしてみてください!


今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?