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連続ラジオ小説 「今宵、関内は夜霧」

「以前このラジオで一度投稿を読んで頂いた喜びが忘れられず、それからも投稿を続けています。しかし中々次の機会は訪れず、十七年不採用が続きました。もう何を書けばよいのかわかりません。何度も読まれている方もいらっしゃいます。その方はいつも散歩途中にあるサル山のことを書かれていて、ボス猿がどうとかこの間までボス猿だった前ボス猿がどうとか楽しげに語られています。どうして私の家の近所にはサル山が無いのか、サル山さえあれば私のも読まれるのに、と唇を噛んでおります。この葉書が採用されなかったら引越しも考えます。先日潰瘍が見つかりました。苦い薬を飲んでこれを書いております」

61歳男性の方からのお便りです。

このまま採用しないのも面白そうだったのですが選んでしまいました。己の作品を誰かに見て欲しい、聴いて欲しいというのは当然の心の動きでしょうし非難されるものではありません。しかしそれが高じて自分が書きたかったものが何なのかも忘れどう読まれるかばかりに苦心し挙句読みもしない他人の文に印をつけて、お返しに印を貰いお互いまるで餌をやりあうような行為は己と他人への敬意が無さすぎるのではないでしょうか。そのように養殖すれば泥鰌は柳の下にうじょうじょするのでしょう。私もその中の一匹です。餌をあげるのを忘れないで下さい。

今朝の四曲目はなかにし冷(ひや)先生の作品です。


「今宵、関内は夜霧」

そんなに怒らないで
大したことじゃないわ
いい部屋を見つけた
それだけのことでしょう

今宵 関内は夜霧のなか
水割りを傾けて
貴方の作るゴマ鯖は
思い出せるくらい

あぁ あぁ
あぁ まぁい
あぁ あぁ
醤油甘いと皆甘い


野暮ったい顔を
夜に見せたくないわ
化粧が上手くなった
それだけのことでしょう

ベイブリッジは雨のなか
水飴のように溶け
貴方の話す思い出が
体が痒くなる位

あぁ あぁ
あぁ まぁい
あぁ あぁ
田舎のものは皆甘い



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