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浅春 雨降り ちょっとそこまでカメラ散歩

2021/03/13、昼前。暖かくてちょっと外に出る気になったので、お昼までのすこしの時間、カメラを持って散歩へ。

天気は雨。以前は雨降りってすごくイヤだったんですが、写真を始めてから、なんだか雨の日がそんなにイヤじゃなくなったような気がします。見慣れた景色でも、ちょっとアンニュイな雰囲気のなかに水溜りの反射があったりして、晴れとは違った楽しさがあるんですよね。

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雨降りの路線バスってなんだかすごく雰囲気があって好きなんですよ。それで今日は、いつものバス停ではなく、折り返し所のある起終点のバス停に足を運んで、ここから乗ってみることに。

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人を降ろして、ぐるーんと回って、折り返しのバスに変身。

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普段は棒に板のついた道端のバス停で待って、道のむこうにバスが見えたら慌ただしく準備して乗るのがいつものことですから、こうやっていかにも拠点って佇まいの場所でどっしり待っていると、同じバスのはずなのになんだか別の乗り物みたい。

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雨の日でお出かけする人も少ないみたいで、途中の停留所からの乗客はいつもよりも少なめ。大きい通りに合流すると、目の前を走る別のバスが先にお客さんを拾ってしまうのもあって、バスの車内はいつもよりもだいぶゆったり広々。

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駅に着く直前となるといつもなら何人か立ち客がいて、写真を撮ろうとすると写り込んでしまうものですから、後ろ寄りの席から前が広々と見渡せるのって、普段なかなか見られない情景です。雨の日は混んだバスも風情があって大好きなんですが、今日は珍しい情景が見られてラッキーでした。なんだかまったく別の世界にいるようだなって感じるのは、いつものバスだからこそ尚更なのかも。

 駅でバスを降りて辺りを散策していたら、これは早咲きの桜でしょうか。家の近くのソメイヨシノがまだぜんぜん咲いていなかったので、びっくり。私の知らない間に春がぐっと近くまで来ていたんですねえ。思えば4年前、私が一人暮らしをやめて神奈川から埼玉の実家に帰ったときも、これくらいの季節で、丁度このあたりを散歩して、同じ桜を見て写真を撮った覚えがあります。あまり良い思い出が無かった地元ですが、一度離れて帰ってきて、少しは見え方が変わってきたでしょうかね。「知らんがな」と言わんばかりに、桜は4年前と同じように咲いていました。

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雨粒がついてキラキラきれいだったので、つい気分が上がって露出補正を大きくプラスに傾けてしまい、白飛び没カットがたくさん。でも撮っててすごく楽しかったので満足です。

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夢中で桜を撮っているところに、通りかかったおじいさんに話しかけられて、しばし談笑。なんでも、そのおじいさんは、いつもの散歩道をスマホ片手に写真をとって、毎日3枚選んで、アプリで加工して、それぞれに短歌を添えて、facebookに投稿しているのだそう。すごい文化的なコンピューターおじいちゃんだあ。自分もこのおじいちゃんみたいに、いつまでも柔軟で風情のある暮らしがしたいものですね。

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雨がざんざか降っているので、シャッター速度を上げると雨粒が空中で止まって写ります。それ楽しくて、また同じような写真を量産してしまてしまいました。楽しかったんですから仕方がありません。

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 水滴がつくとなんでもキレイになるからズルいですよね。場所をかえて近くの公園に足を踏み入れると、松の葉が雨粒でキラキラしていたので、ぐぐっと望遠で切り取ってみました。大好きな万年筆のインクで、しっとりとした深い緑色の iroshizuku「松露」というインクがあるんですが、あのインクはこんな情景から作られたインクなんだろうか、なんて思い巡らせながらシャッターを切ります。

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公園奥の、まだゼロ分咲きのソメイヨシノに目をやると、鳥がちょこんと羽根を休めていたので、慌ててカメラを向けてシャッターを切ります。枝がかぶっているしピントも甘いような気がして、どう工夫して撮ろうかと考えていたら、もたもたしているうちに鳥はどこかへ飛び立ってしまいました。やっぱり鳥は難しいですね。鳥を相手にして換算300mmでは心もとないので、ばっちりクロップしてあります。

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 そろそろお腹もすいてきた頃。帰りのバスがちょうど行ってしまったタイミングで、次を待とうにもだいぶ時間があきますから、バスと同じルートを徒歩で帰ることにします。乗っても眺めても楽しいのが雨降りの路線バス。路面にライトが反射してすごく画になるものですから、バスが通りかかるとついカメラを向けたくなるんですよね。

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このあたりは道路事情がたいへん劣悪なのもあって、雨が降ったりするとすぐに渋滞が発生します。この日もけっこう渋滞がひどくて、写真を撮りながらゆったり歩いている自分のほうが速いくらいでした。バスの写真を落ち着いて撮るせっかくの機会ですから、ここは渋滞に歩幅を合わせてじっくり撮ることにしましょうか。並行する新道がまっすぐなのとは対照的に、バスが通る旧道は道のくねり方が丁度いい塩梅で、望遠レンズで切り取るといい具合にみっちり感が出ます。

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行きのバスとおなじルートをなぞって産業道路へ。なんとなく撮ったバス停の写真ですが、この1枚の写真から、じつはこの地域のいろんな歴史が読み取れるんです。

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まず、「草加市 稲荷町二丁目」という標識ですが、「稲荷町」というのはひとつ古い地名で、いまは「町」がとれて「稲荷」というのがこのあたり一帯の地名となっています。そしてその奥に、ポールと松の木に隠れていますが、バスの車内広告でおなじみ「天理教立野堀大教会」の看板が。「立野堀」というのはこのあたりの古い地名ですが、いま「立野堀」という地名を使っているのはここくらいでしょうか。

さて、突然ですがここで謎解きにお付き合い願います。古い標識の左下にあるバス停の板ですが、これ、やけにきれいだと思いませんか。実はですね、このバス停が出来たのはけっこう最近のことで、それまではバスは別のルートを走って終点まで向かっていたんです。ここでひとつ、おかしいと思いませんかね。このバス停、後ろの交通をやり過ごせる待避設備がついていますが、この設備がもしバス停といっしょに作られたのであれば、待避設備に沿って同時に立てられたであろうあの標識は、古い地名の「稲荷町」ではなく、新しい地名の「稲荷」になっているはずです。おかしいですねえ。ということは、この待避設備が出来てからバス停ができるまでのあいだ、だいぶ長い期間放置されていたということになりますでしょうか。

実はこのバス停の歴史こそ、このあたり一帯がどういう地域かを知るにあたって、とても重要な鍵を握っているんです。いずれにせよ、ここにその答えを書くにはあまりにも長くなりすぎてしまうので、続きはまた別の機会に。

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