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心室細動なのに、意識があるってよ🚑🚒 心肺蘇生法の不思議

心室細動なのに、意識があるってよ



どうも👨‍🚒🤚
救急救命士のAPO隊長です。

今回は救急隊として頻回に経験する、心肺蘇生法のお話です。

とは言っても、今回お話するのはレアケース。心肺蘇生法中で、しかも心電図は心室細動なのに、なぜか意識があるというケースの紹介です。

👨‍🚒「は? ドユコト??」

わかります。本当にその気持ち、よくわかります。
そうですよね。

もう一回言いましょう。

👨‍🚒「は? ドユコト????」

ありがとうございます笑。

この症例は、前回の救急隊員シンポジウムという学会で症例報告があったんです。僕も全然知らなくて、その後に論文検索してみたんですが・・・ありますね。類似報告。散見されます。

学会報告

その学会の報告はこんな概要でした。

1 心肺停止状態である。
2 心電図波形は心室細動である。
3 胸骨圧迫を行うと、開眼してキョロキョロし出す。
4 2回の人工呼吸の間で意識がまた無くなる。
5 やっぱり心室細動なので、胸骨圧迫をする。
6 電気ショックをしろと機械がいうので、除細動をする。
7 傷病者は「いてっ!!!」と叫ぶ。
8 やばっ!と思って胸骨圧迫の手を止めて、観察するとやはり心肺停止である。
9 胸骨圧迫を行うと、開眼してキョロキョロし出す。
10    胸骨圧迫に対して、”痛そうな仕草をする”
11  2回の人工呼吸の間で意識がまた無くなる。
12  やっぱり心肺停止である。

想像してみてください。
もう一度、1から11までを読んで、想像してみてください・・・。

それではいいですか。せーのっ!!!

👨‍🚒👨‍🚒👨‍🚒「は?どゆこと?」

ありがとうございます笑

皆さんはこんな経験はありますか??
僕はないです😓

でもこれは、ちょっと知っておかないと、いざ現場で起こったらパニック間違いなしですね笑

全CPA症例の約1%に意識が戻るケースがある

それでは行きましょう!!論文紹介です👨‍🚒
Resuscitationからの引用です。

心停止患者の1%近くが蘇生中に意識を回復する
Consciousness induced during cardiopulmonary resuscitation: An observational study

【背景】
心配蘇生術を受ける心停止患者では稀に、蘇生中に意識が回復することがあるが、散発的報告に留まる。オーストラリアの院外心停止患者で、心肺蘇生による意識回復(CPRIC)の発生率を調査した(n=16,558)。
【結論】
112名(0.7%)でCPRICがあった。意識レベルは、自発的開眼(20.5%)・咬筋緊張(20.5%)・発語(29.5%)・体動(87.5%)であった。
【評価】
蘇生中の意識回復は稀ながら存在した。AWARE研究によれば、心停止生存者の2%では蘇生中の記憶があるという(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25301715)。
https://www.medicalonline.jp/news.php?t=review&m=emergency&date=201704&file=20170428-Resuscitation-113-44-E.csv

まさにこんな感じですね!
オーストラリアでは、全CPA症例の約1%で、蘇生法をしている間に意識が戻るケースがあったんだそうです。日本でもそりゃありますね。僕が知らないだけで😨。

CPRIC(Cardiopulmonary resuscitation–induced consciousness)という名前まで付いています。「覚醒を伴うCPR」っていう感じですかね。

反応があるパターンとして一番多いのが、体動となっていますね。今回の学会発表でも開眼があったとありました。あとは、噛み締めたり発語もあったりと・・・。え??記憶もあるの??胸骨圧迫とか?

「お前らの除細動、痛かったけど・・・効いたぜ😏」とか言われちゃうの?? 

びっくりです。

こりゃ心肺蘇生法を、止めちゃいますよね笑
確認ですが、全て心肺停止状態ですからね?意識が戻っているのは確かなんですが、蘇生法を止めると、意識は絶賛急降下!していきます。

その様子を撮影したビデオがある!(◎_◎;)

次の論文行きましょう!
同じくResuscitationから👨‍🚒🚑

CPRIC中の心室細動となった症例のビデオ
Video of cardiopulmonary resuscitation induced consciousness during ventricular fibrillation

CPRIC中の患者の動きは、テキストのみを使用して説明されており、ビデオの記録はありません。救急車でCPRICに遭遇した救急医療技術者(EMT)の経験を報告します。蘇生の経過は、救急車に取り付けられたカメラに記録されました(図1)。心調律は自動体外式除細動器(AED)によって記録されました。書面による公表の同意書が患者から得られました。
https://www.resuscitationjournal.com/article/S0300-9572(20)30280-X/fulltext

すげっ!ビデオ??見せてくれんの???

先に症例の概要を説明します。
症例はこんな感じです。

プレー中にテニスコートで気を失った42歳の男性。バイスタンダーが心肺蘇生法を開始し、通信司令員の指示に従ってAEDによる除細動を実行した。救急隊が到着したとき、患者は自発的な循環の回復で意識を取り戻した。

病院への搬送中に、再び意識消失し、心室細動となった。救急車を停止した後、CPRを開始した。ビデオとECG(補足資料のビデオ1)は、心臓のリズムがVFに変換されたときに発生した死戦期呼吸のパターンを示している。

胸骨圧迫の直後、患者は音を立てて意図的な動きをした。これは生命の兆候と見なされ、救急隊はプロトコルに従ってCPRを中止した。その後、体動は止まった。

電気ショックの直前は、あえぎだけが残っていた。心室細動では血流がない。意識の回復がCPRによって誘発され、自発循環から生成されたものではないという直接的な証拠を示した。2週間後、良好な神経学的転帰で退院した(心筋梗塞)。

ビデオはこちらから⬇️
心肺蘇生を行っているので、苦手な方は見ないでね。医療従事者は絶対見てね✨。


はい。
お分かりいただけたでしょうか。。。。
あるんです。こういうことが。

救急隊も、通信司令員も、医師も看護師も。CPRをする方なら誰もが知っておくことですね!

当然ながら、心室細動は心臓がただ痙攣しているだけので、脳に循環はありません。よって、意識があるわけがありません。しかしながら、有効な胸骨圧迫を行うことで、脳に血液が行き渡り、その間に意識が回復したということですね。

最初に説明した学会の症例報告でも、「胸骨圧迫を行っている間に意識が回復したような行動があり、人工呼吸の時に再び意識がなくなった」とありました。

通常、人工呼吸の時は胸骨圧迫の手を止めるので、その間は脳への血流が止まることになります。つまり、意識が再び無くなるということですね。


まとめ


私たちが行う心肺蘇生法。傷病者は確かに「心肺停止だけれども、”胸骨圧迫をしている時にだけ意識が回復する”ということがある」というお話でした。

それでは、救急隊はどのように活動すべきか👨‍🚒🚑。

1、意識が戻ろうとも、心肺停止であるならば通常のCPRを行う。
2、意識が戻ろうとも、心電図波形が心室細動であれば、除細動を行う。
3、救急車に同乗した家族へ誤解を与えかねないため、心肺停止状態であることをきちんと説明した上で、処置を継続する。
4、本人に記憶があるので、傷病者と家族の精神的フォローをする。

OKですか?納得ですか?🤩
まずは、こういった事例があるんだなーって知ることがスタートです。
次の勤務の時に、動画を見ながらディスカッションしてみてくださいね。

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そして、身近な隊員、仲間達にドヤ顔で伝えてくださいね!😊

さもないと、、、APO隊長に呪われますよ笑
ではまた!👨‍🚒🤚!!


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