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思いがけず、いいとっかかりを見つけた|9/13〜9/17

コロナ禍の日々の記録。平日の仕事を中心に。土日祝は休みます(例外あり)。2020年の1回目の緊急事態宣言の最中にはじめた日記はこちらから。3回目の緊急事態宣言解除の日から再開。しばらく続けたい。

2021年9月13日(月) 市ヶ谷

メールでは「秋めいてきましたね」と書いたけれど、暑さはだいぶ戻ってきている。「首相官邸(新型コロナワクチン情報)」のTwitterアカウントは「2回接種完了者が全人口の5割を超えました」とつぶやく

2021年9月14日(火) 自宅

午前は係会(注:東京アートポイント計画のスタッフ定例会)にZoomで参加。「手話と出会う 〜アートプロジェクトの担い手のための手話講座〜 基礎編」の映像視聴数と比例して、Tokyo Art Research Lab(TARL)のYouTubeアカウントの登録者数が急増している。初めて東京アートポイント計画の共催事業の事務局スタッフが陽性者になった。感染可能性がある期間内に関係者の接点はなかったことを確認し、事業に支障はないと判断。近いところでの感染や濃厚接触(の疑い)の事例が相次いでいる。
あとは書類づくりや細々とした連絡に時間を費やす。来年度の事業説明用の資料をつくる。何がねらいで、どんなことをやるのか? そこは具体的にイメージ出来るけれど、説明をする対象が、はっきり思い描けずフォーマットが定まらない。フォーマットは内部でもうひと揉みしてから整えることにし、いったん、思い付くことを書き出す。
夜になって、後期の非常勤先の大学からメールが届く。授業について「現時点では、基本的に、前期と同様に対面授業とし、事情があり対面が不可の学生についてはオンラインも可とする『新しい対面授業』を運用を主体としていく予定です」とのこと。今年度もオンラインの心づもりだったため、どうしたもんかと思う。「新しい対面授業」って何だ!?
東京都の新規感染者数は1,004人。先週の火曜日より625人減った。前の週の同じ曜日を23日連続で下回る。全国で6,227人。減少傾向は続く。厚労相は1新型コロナウイルスワクチンの3回目接種(ブースター接種)や、異なる種類のワクチンを打つ「異種混合接種」の検討を発表

2021年9月15日(水) 市ヶ谷

10月で今年度も折り返し。事業の進捗と次年度の想定をあれこれと共有し、話し合う。書類の書きぶりや情報を更新する。道筋は見えた。いい方向に転がるだろうか? この2週間がひとつの山場になりそう。
日本精神科病院協会は、昨年3月から今年8月に235人が、精神科病院から新型コロナ対応の医療機関に転院できないまま亡くなったと発表。転院できなかった理由は「精神疾患に対応できないため」が多かったという。東京都の新規感染者数は1,052人。重傷者198人で、約1ヶ月ぶりに200人を下回る。

2021年9月16日(木) 国立→市ヶ谷→自宅

午前は国立でACKT(アクト/アートセンタークニタチ)のミーティング。それぞれのタスクとスケジュールを詰める。その後、市ヶ谷に移動し、オフィスで仕事を進める。夕方はZoomでアーツカウンシル・ネットワークの勉強会に参加する。このネットワークでの集まりには、初参加。タイトルは「しなやかなネットワークとブリコラージュ的思考―京都市文化芸術総合相談窓口(KACCO)の取り組みから―」。話し手の山本麻友美さんが、冒頭に「KACCO」の読み方を「カッコ」と説明する。これまで「カッコー」だと思っていた。コロナ禍であえぐ声に応える。打てば響く。そんな制度なのだろう、と。鳥のカッコウを頭のなかにイメージしながらの連想……よく考えると、まったく関係がない。まず、木を打つ鳥は、キツツキだ。声に応えて、響くのは「こだま」で、それは「ヤッホー」だ。なんでそんな思いこみになっていたのか……(後日談:テレビで偶然、童謡の「かっこう」を聴いて、カッコー、カッコーと追いかけるように歌うところが重なっていたのかもと思う)。無茶苦茶な連想だ。無論、KACCO側には何の責任もない。
美術には非常時に回覧板をまわすネットワークがない? (緊急時に)短時間で、正確に情報を伝えるにはどうするか? 山本さんの問いかけは、文化庁の文化芸術活動継続支援事業の申請にかかわる「無所属作家確認証発行連合体」の事務局の経験からも生まれていた。声を上げないと制度側が何かしてくれるわけではない。確定申告をしていないと「アーティスト」としての証明ができず、補助金が出せない。参加者からは、確定申告について、生業としてのアーティストとは、都市部の問題なのではないだろうか? という問いかけもあった。自分の仕事で考えれば、個人より「法人」の課題と向き合うことが多い。これもまた都市(というか東京?)の課題なのかもしれない。
労務の相談では、契約に関するものが多い。ハラスメントの問題にどう向き合うか? ヒエラルキーのない組織としての「コレクティブ」のありかた(意思決定の仕方)は? これから考えるべきことなのだという。どの話も具体的で、それがゆえに自分の仕事に置き換えて考えることが出来た。
この状況下で、京都芸術センターやロームシアター京都、HAPS(東山アーティスツ・プレイスメント・サービス)は日々情報交換をしていたのだという。KACCOでは相談があれば、相談員の人たちがSlackで情報を共有し、それぞれに回答を出し、担当者が集約して、相談者に返答していたのだという。その「しなやかなネットワーク」に考えさせられることが多かった。
オフィスから移動し、在宅で「多摩の未来の地勢図をともに描く」にZoomで参加する。レクチャー編の初回。ゲストは社会福祉法人子供の家 ゆずりは所長の高橋亜美さん。児童養護施設等の「社会的養護」から「自立」せねばならなくなった人たちを支える活動をしている。かかわる人たちを「安心してこども時代を生きられず、大人になってから”しんどい”ということができた人たち」という言葉で説明をしていた。虐待に至ってしまった親の回復プログラムもはじめているのだという。ブレイクアウトルームでは参加者それぞれがことばを慎重に選びながら話をしていた。「人との関係は血縁だけじゃない」。何度も聞いたことのあったことばだけど、高橋さんから聞くと実体をもった響きがある。この「はじまり」から、どこまでいく(いける)のだろうか? 先が見えない。いい意味で。

2021年9月17日(金) 市ヶ谷→秋葉原→新宿

市ヶ谷で1時間ほどメールをチェックし、財団事務局がある江戸東京博物館(江戸博)へ向かう。急ぎでハンコをもらわなければならない書類がある。普段、書類のやりとりは交換便(注:東京都や財団の各施設を巡回する配送システム)を使うことがほとんどで、こうして江戸博に足を運ぶことは滅多にない。事前に話は通っていたため、すんなりとハンコはもらえる。
せっかく近くに来たので、横網町公園に寄る。穏やかな昼休みの時間が流れている。園内の東京都復興記念館では、通常の展示に加えて、記念館そのものの成立と現在までの歩みをたどったパネル展示もあった(復興記念館 開館九十周年記念 令和三年秋季特別展「復興記念館〜その軌跡をたどる」)。記録や資料がなく「不明」という記載が多い。復興記念館と(同じく園内にある)東京都慰霊堂には徳永柳州の大きな震災画がある。描かれた当時は「移動震災実況油絵展覧会」で各地を巡ったのだという。でも、記録がなく、詳細はわからない。原爆の図丸木美術館の岡村幸宣さんが追いかけてきた「原爆の図」の全国巡回展のこと、小森はるか+瀬尾夏美の巡回展「波のした、土のうえ」のことを思い起こす。気にかけつつも、きちんと触れてこれなかった関東大震災のこと。思いがけず、いいとっかかりを見つけた。

秋葉原の3331 Arts Chiyodaに向かう。ROOM302からZoomでジムジム会に参加する。今回は「東京で(国)境をこえる」の事務局メンバーがホスト役。テーマは「やさしい日本語」。ゲストにNPO法人YYJ・ゆるくてやさしい日本語のなかまたちの奥村三菜子さんを迎えて、参加した東京アートポイント計画の共催事業の事務局メンバーが、自らのプロジェクトの概要文を「やさしい日本語」に変えるワークをする。ブレイクアウトルームに分かれて、Googleドライブ上にあるドキュメントのテキストを書きかえていく。長い一文を切る。分かりづらい単語を言い換える。必要な言い回し以外を削る。どれが「必要」なのか? この単語で言いたいことは何だったのか? 一連の作業は、自分たちのプロジェクトの大事なところを確認するものとなる。「やさしく」するといっても、補足しすぎると長くなるし、単語を抽象化しすぎては当たり障りのないものになってしまう。手を動かすと、よくわかる。オンラインで共同編集をしながらの作業も楽しかった。

ジムジム会が終わった後は、初台に移動し、東京オペラシティギャラリーの「加藤翼 縄張りと島」展へ。展示室に入ると、2012年の作品「ISEYA Calling」が再構成されていた。当時、TERATOTERA祭り2012の一環として、吉祥寺の井の頭公園で、解体された焼き鳥屋「いせや」の部材を使った大きな構造物を、大勢の人たちで「引き興し」て、「引き倒し」た。その現場にいたときのことを思い出す。事前に読んでいた『美術手帖』の加藤さんのインタビューでは、音に気を配った展示だとあったけれど、確かに感覚が刺激された。卒業制作の実家で家族と「引き興し」をする映像に、思わずにやりとする。会場で、偶然、小屋竜平さんに会う。近況を交わし、また近々会いましょうと別れる。こういう再会も、ひさしぶりだ。
東京都の新規感染者数は782人。週平均が約2カ月ぶりに1,000人を下回る。ワクチン3回目接種を厚労省が容認。2回目から8ヶ月以上あけて、医療従事者が12月中に開始の見通し。

(つづく)

▼ 1年前は、どうだった?(2020年の日記から)

▼ Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」。1年前の9月の書き手は、西村佳哲さん(リビングワールド 代表)→遠藤一郎さん(カッパ師匠)→榎本千賀子さん(写真家/フォトアーキビスト)→山内宏泰さん(リアス・アーク美術館 副館長/学芸員)でした。