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「解除」という実感は、あまりない|9/27〜10/1

コロナ禍の日々の記録。平日の仕事を中心に。土日祝は休みます(例外あり)。2020年の1回目の緊急事態宣言の最中にはじめた日記はこちらから。3回目の緊急事態宣言解除の日から再開。しばらく続けたい。

2021年9月27日(月) 市ヶ谷→国立

すっかり涼しくなった。長袖のシャツで出社する。朝からオフィスで作業をしていると、あっという間に移動時間になってしまう。月末で勤怠や旅費の申請に細々と手間がかかる。国立へ打合せに向かう。どうしても移動だけで1時間半近くかかってしまう。南武線の谷保駅で降りて、くにたち市民総合体育館へ。ワクチン接種会場になっていた。国立の接種率は高く、まもなく接種会場も閉じるのだという。
国立市、くにたち文化・スポーツ振興財団、一般社団法人ACKT、アーツカウンシル東京。共催事業(=ACKT(アクト/アートセンタークニタチ))にかかわるメンバーが勢揃いし、今年度の動きを確認する。国立市は、まちが4層になっているのだという。国立駅がある中央線から北側のエリア、箱根土地株式会社の開発からはじまった一橋大学のある“いわゆる”国立のエリア、URの団地や市役所がある富士見台エリア、南武線が走る南の歴史ある谷保エリア。それぞれの地域に特性があり、特有の課題がある。独自の活動があり、人がいる。そこと接続していくことが大事。地域での活動の見られかたも変わる。一方で、新しい活動だからこそ、すでにある活動に触れなくともいいこともあるのではないだろうか。少し先を見据えつつ、事業の踏み出しかたを話し合う。
首相は緊急事態宣言を30日で解除の方針を固める。まん延防止等重点措置への移行も行わない。JR東日本は東北新幹線と秋田新幹線で1日7本の減便を発表。11月8日から当面の間。同社のコロナ禍を理由とした減便は初。東京都の新規感染者数は154人。

2021年9月28日(火) 自宅

午前はZoomで係会(注:東京アートポイント計画のスタッフ定例会)に参加する。おもに各事業の進捗共有と事務連絡。具体的に詰める話が多い。最後に接近している台風への対応も話題になる。拠点を運営している事業以外に、大きな支障はなさそう。係会のあとはオンラインミーティングもなく、粛々とパソコンに向かう。
塩野義製薬は、飲み薬タイプのコロナ治療薬の臨床試験入りを発表。年内には100万人分を供給出来る生産体制を整えたいとのこと。点滴で投与する新たな治療薬「ソトロビマブ」は27日に国内で承認された。抗体カクテル療法に続く2種目。いずれも軽症者向け。

2021年9月29日(水) 自宅

秋のアレルギー性鼻炎がはじまったのか、しばらく調子が悪い。あ、やばいなと思うと雪崩を打ったように鼻水とくしゃみが止まらなくなる。アレジオンを毎日飲んでも、症状がひどくなる日がある。パソコンに向かう時間が長い日だと、なお辛い。なんとか薬の力を借りて、やり過ごす。夜はZoomで「ラジオ下神白」のミーティング。制作物の権利処理や関係者への許諾が話題の中心になる。ユージン・スミスが水俣で撮った代表作「入浴する智子と母」は、被写体となった智子さんの家族の意向があり、長らく非公開になっている。最近『魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣』を読んで知った。状況は異なるけれど、思わず、重ね合わせてきいてしまう。
自民党新総裁に岸田文雄氏が選出。決選投票で河野太郎氏を下す。10月4日の臨時国会で第100代首相に選ばれることになる。1年前の総裁選では菅首相に次点で敗れていた。

2021年9月30日(木) 市ヶ谷

午前は東京アートポイント計画を担当するスタッフ全員が参加し、きてん企画室の中田一会さんに意見を仰ぎながら、自分たちの活動の伝え方を議論する(通称:発信ミーティング)。パートナーになってほしい人たちを相手に想定したプレゼン用のスライドの確認を軸に、その構成やメディアを検討する。ちゃんとメッセージやビジョンを示したほうがいいのではないか? 骨太な概要説明とQ&Aが必要なのかもしれない。内容の結論は出なかったけれど、いそぎ着手しないといけないスケジュールであることが確認された。
午後はZoomをつないで「10年目の手記」についてのミーティング。まずは文化の秋の忙しさを、それぞれに共有する。間に合ってはいないが「骨子はできている」と口々に語り、今後の各自のタスクを確認し、解散。「10年目の手記」は応答の実践だったのではないかというキーワードが現れる。
明日は今年初めて関東に台風が接近する。ぎりぎり雨が降りはじめる前に帰宅。東京都の新規感染者数は218人。都は約10ヶ月ぶりに警戒レベルを上から2番目に深刻な「レベル3」に引き下げる。日本郵便はコスト削減と働き方改革で、10月から土曜配達を休止。

2021年10月1日(金) 市ヶ谷→自宅

台風16号の影響で朝から雨と風が強い。靴とズボンの裾があっという間に濡れてしまう。電車もオフィスも人が少ない。予想よりずれこんで、夕方から夜にかけて台風は関東に接近。午前でオフィスの仕事を切り上げて、在宅に移行する。途中、昼を食べようと入った店ではドリンクメニューにお酒があった。今日から緊急事態宣言が解除されたのだった。初日が台風になってしまったから変化が分かりづらい。人の動きは変わるのだろうか。「解除」という実感は、あまりない。
夕方に在宅でZoomをつなぐ。東京アートポイント計画の年度後半での広報戦略を議論する。昨日の発信ミーティングでの話を受けて、設定されたもの。ウェブサイト、インタビュー記事、アニュアルレポート、SNS……手持ちのメディアを洗い出し、それぞれの位置づけを確認する。各作業のパートナーは異なる。だからこそ、こちら側がきちんと見取り図をもって、各パートナーと目の前の作業の全体での位置付けを共有しつつ、うまく各作業を連動させていけるといい。これは、いろんな人たちの「間」で働くプログラムオフィサーに求められる役割のひとつなのだろう。このことを考えるとき、鈴木拓さんにきいた舞台監督の仕事のことを思い出す。

スタッフには、その人以外の配置や動き方も伝えた方がいいと思っています。当日、今どこに人手が足りていないかなど、誰かが気づいてくれる可能性が上がるからです。これがわかっていれば、物事の優先順位が変わってきます。僕たち裏方は技術的、実務的なことを司っているからこそ、プロジェクトのゴールを共有しておくのは大事だと思うんです。つまり、 「何をすべきか」ということよりも、 「何をしたいか」を伝えた方がよいと思っています。スタッフも人間なので、モチベーションを持って取り組んでもらうと明らかに質が上がる。例えば、照明さんにただ「ここを明るくしてください」と伝えるのではなく、 「なぜそこを明るくしてほしいのか」 「なぜそこで照明を半分落としてほしいのか」ということも伝えたほうがよい仕事をしてくれると思います。そもそも職人という性格上、細かな理由を言われて嫌がる人はほぼいないはず。逆におもしろがってくれると思うんです。企画の根っこまで話すのは難しいかもしれませんが、 「こういう時間にしたい」 「こういう空気を感じてほしい」といった企画意図から伝えるといいと思います。 「ほかに何かアイデアはありますか?」と聞いてみてもいいかもしれません。僕らにとって一番良くないのは、 「ここは青い明かりでお願いします」などと断定的に伝えてしまうこと。その照明は青色がベストなのかを的確に判断できるのは照明さんだし、具体案はそれぞれのセクションのプロが考えるべきことです。一度彼らを信頼して投げてみることでいろんな可能性が広がりますし、この関係が、会場スタッフが自分のこととしてプロジェクトをまわすひとつの要因になるはずです。
「仕事を知る5 鈴木拓(boxes Inc. 代表)」『思考と技術と対話の学校 基礎プログラム「仕事を知る」講義録 2014』アーツカウンシル 東京、2016年、52-53頁。

東京都の新規感染者数は200人。重症者数は93人で、2ヶ月ぶりに100人を下回る。ALS(筋萎縮性側索硬化症)の進行を、白血病治療薬「ボスチニブ」で食いとめた例を京大などのチームが発表。世界初。「安全性を確かめるのが主な目的で、少人数のため、効果があったかどうか統計的な判定はできない。今後、規模の大きい治験を計画する」とのこと。

(つづく)

▼ 1年前は、どうだった?(2020年の日記から)

▼ Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」。1年前の9月の書き手は、西村佳哲さん(リビングワールド 代表)→遠藤一郎さん(カッパ師匠)→榎本千賀子さん(写真家/フォトアーキビスト)→山内宏泰さん(リアス・アーク美術館 副館長/学芸員)でした。

(画像)厚生労働省ホームページ「新規陽性者数の推移(日別)」より。