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「答え探しゲームにはしたくない」「経験したことのみで話せないか」|8/3〜8/6

コロナ禍の日々の記録。平日の仕事を中心に。土日祝は休みます(例外あり)。2020年の1回目の緊急事態宣言の最中にはじめた日記はこちらから。3回目の緊急事態宣言解除の日から再開。しばらく続けたい。

2021年8月3日(火) 市ヶ谷

昨日は1日目の夏休みを消化。朝、家を出ようとしたら急に雨が降り出す。電車は少し空いている気がする。ドア近くに立っている男性が、しんどそうに身体をかがめて、時折激しい咳をしていた。おそらく……と同じ車両に乗っている人は思っているのだろう。そうでなくとも明らかな体調不調。身なりからは出社途中なのだと見受けられる。
地下鉄サリン事件の被害者へインタビューをした『アンダーグラウンド』を読むと体調不良になりながら、なんとか会社にたどり着こうとする人たちが多く出てくる(村上春樹は、この本を書いたことで日本社会の「普通の人々」のことを知ったと語っていた)。ふと、そのことを思い出す。他人事ではない。
係会(注:東京アートポイント計画のスタッフ定例会)では、Tokyo Art Research Lab(TARL)の参加者の応募状況や各事業の進捗を共有する。PCR検査や抗原検査キットの利用を、どこまで事業に適用していくか? 費用はどうするか? が話題にあがる。
午後は「10年目の手記」のZoomミーティング。終了後はパソコンに向かう。夜に「ラジオ下神白」の短いZoomミーティング。どちらも昨年度まで継続してきたArt Support Tohoku-Tokyo(東京都による芸術文化を活用した被災地支援事業)の成果を「かたち」にするための動き。価値や意義だけでなく、想いを共有し、進める仕事は気持ちがいい。でも、関係があっても(あるがゆえに)オンラインでのコミュニケーション疲れ(不足感)がピークに来ているようにも感じる。自分のなかでのことなのか、周囲の状況的にそうなのか。判断はつかない。
東京は、大変なことになっている……ように見えるらしい。その体感がないのは、それだけ分断が広がっているからなのだろうか?
東京都の新規感染者数は3709人。先週の火曜日より861人多い。自宅療養者は昨日より2000人増えて、14000人余りとなった(1ヶ月で13倍)。政府は自宅療養を基本とする方針。「急激に感染者が拡大している地域で、入院は重症患者や重症化リスクの高い人に限定する」とのこと。「中等症患者」の扱いが議論の的になっている。駅のモニターでは、政府のコロナ分科会の尾身会長が対策を呼びかける映像が流れていた。

2021年8月4日(水) 市ヶ谷

午前中は「移動する中心|GAYA」の定例ミーティング。サンデー・インタビュアーズの初回の様子を共有し、意見を交わす。過去の8mmフィルムの映像をみんなで、じっくり見て、がやがやと語りあう。「よく見る」ために、誰かに話を聞いたり、調べたりする活動もする。それを持ち寄り、またがやがやと話す。8mmフィルムという記録が誘発した語りが、また記録となっていく。そんな往還関係を想定しつつも、調べることが強くなりすぎると「答え探しゲーム」になってしまう。そういう場にはしたくない。(過去の記録に触れながらも)自分の経験のみで話せないものだろうか? 経験していないことを自分の経験に引き寄せて語ることの難しさがある。(すでにある)記録を使うGAYAならではの問いかけ。とはいえ、調べることも、また大事なこと……。人によって得意/不得意の特性もあるだろう。「もっと走っていい」と委ねるところと、足並みを揃えて経験すべきことの塩梅を探る。そして感染者数が増えている状況で「きく」活動をするときに「人に会う」基準も議論する。決まった基準をもつよりは、相手に配慮を伝え、その応答に合わせた方法を、随時選択していくのがよさそうだ。
東京都の新規感染者数は4166人。全国で14207人。14都府県で最多更新。文化庁の職域接種は明日10時から受付開始(8月19日からの接種分)。

この職域接種は、文化芸術活動に携わる個人で、地方公共団体での接種に先駆けて緊急に接種を受けたい文化芸術関係者が対象。接種会場は東京・六本木の国立新美術館の3階講堂で、接種人数は先着順。ワクチンは武田/モデルナ社製のものが使用され、1人につき2回接種を実施する。
「文化芸術関係者向け職域接種が国立新美術館で実施へ」『美術手帖』(2021年8月3日)

2021年8月5日(木) 都庁→市ヶ谷→秋葉原

朝から都庁へ向かう。ワクチンの職域接種2回目。1回目と同じようなフローで物事は進む。会場入口に並んだときのBGMは、ジャジーなピアノが流れていた。問診では1回目の後の様子をきかれる。接種部位が赤くなったことを伝える。「モデルナアームですね」と言われる。
ワクチン接種後は発熱する前に解熱剤を飲んだほうがいいと何人かの人に教えてもらっていた。でも、症状が出る前に薬を飲むのは、案外難しい。どこかで大丈夫だろうという気持ちも残っている。ドラゴンボールで悟空が未来で心臓病にかかって死んでしまうから症状がなくとも事前に特効薬を飲んでおいたほうがいいとトランクスに言われていたことを思い出す。結果的に悟空は飲まずに心臓病を発症する(詳しくは人造人間・セル編の最初のほうを参照)。そんなこともあるからね……と思いながら解熱剤を飲む。人の行動に働きかける想像力とは、具体的なイメージを与えられたときに起動するのかもしれない。
市ヶ谷のオフィスに寄って作業をしてから、秋葉原の3331 Arts Chiyodaへ向かう。毎週続いたSTUDIO302の講習会は最終回になった。オンラインでのプレゼンにエフェクトをかけられるmmhmmをはじめ、いろいろとツールを教えてもらう。今年はオンラインで話すときのツール(方法)も開拓したい。
水戸芸術館が8月6日から19日まで臨時休館(翌6日に31日まで延長)。ほかの地域でも同様の動きが出てきた。

8月2日からまん延防止等措置の適用が始まった石川県金沢市では、金沢21世紀美術館や国立工芸館などが7月31日から8月22日まで臨時休館。谷口吉郎・吉生記念金沢建築館と鈴木大拙館はともに8月31日まで臨時休館となっている。そのほか石川県では、七尾市の石川県能登島ガラス美術館(22日まで臨時休館)、石川県七尾美術館(31日まで臨時休館)など、広範囲にわたって休館状態となっている。
 広島では広島県立美術館や広島平和記念資料館が8月7日から9月12日まで臨時休館。また沖縄県那覇市では、沖縄県立博物館・美術館が7月22日から7月31日までの臨時休館を8月15日まで延長。浦添市にある浦添市美術館も同じく8月15日まで臨時休館中だ。
「コロナ「第5波」、地方美術館に影響。金沢や沖縄など相次ぎ臨時休館」『美術手帖』(2021年8月5日)

東京都の新規感染者数は5042人で初の5000人超え。全国は1万4968人で最多更新。「モデルナ2回目接種後、約8割が発熱 ファイザーの2倍」というニュース。帰宅後に強い悪寒に見舞われ、発熱する。39℃に近い。

2021年8月6日(金) 自宅

昨夜からの高熱が続く。解熱剤は飲んでいるけれど、38℃後半。かなりしんどい。こどもの保育園に陽性者が出たため、濃厚接触者の特定や対応が終わるまで休園のお知らせが、昨夜届いていた(という話を共有すると、同じタイミングで複数の同僚の保育園でも類似事例が起こっていた)。とにかく休むしかない。夕方から夜にかけて、次第に体調が戻ってくる。アーツカウンシル東京のオフィスの別フロアで陽性者が複数発生との連絡が来る。急に近くの話題が増えた。
広島に原爆が投下されて76年。NHKではオリンピックの影響もあり、43年ぶりに「原爆特番」が一切放送されないのだという。広島市での平和祈念式典で首相は用意した原稿を読み飛ばし、記者会見で陳謝

首相は「わが国は、核兵器の非人道性をどの国よりもよく理解する唯一の戦争被爆国であり、『核兵器のない世界』の実現に向けた努力を着実に積み重ねていくことが重要だ」などのくだりを読み忘れた。

(つづく)

▼ 1年前は、どうだった?(2020年の日記から)

▼ Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」。1年前の8月の書き手は、岡村幸宣さん(原爆の図丸木美術館 学芸員)→山本唯人さん(社会学者/キュレイター)→谷山恭子さん(アーティスト)→鈴木 拓さん(boxes Inc. 代表)→清水裕貴(写真家/小説家)さんでした。