新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症やコロナワクチンについては、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

「解除」と「緩和」の即効性は強い|10/4〜10/9

佐藤李青(東京アートポイント計画)
コロナ禍の日々の記録。平日の仕事を中心に。土日祝は休みます(例外あり)。2020年の1回目の緊急事態宣言の最中にはじめた日記はこちらから。3回目の宣言解除の日から再開。4回目の宣言解除後も(なんとか)続く。

2021年10月4日(月) 自宅

週末の台風一過で気温が上昇。今日も30度近くで暑い。思ったよりも日常の気分は戻ってきた。外に出ればマスクをするのは変わらない。それでも心理的なつっかえのようなものがない。「解除」と「緩和」の即効性は強い。朝からパソコンに向かう。午後はメッセンジャーとメールを駆使し、急な調整事項に対応する。高森順子さんとメッセンジャーで通話する。災間の社会では誰かに任すことや頼ることが大事なのではないかと言っていた。先日、高森さんが事情により、TARLディスカッション(Tokyo Art Research Lab ディスカッション「災間の社会を生きる術を探る」)のナビゲーターを欠席せねばならなくなったとき、即座に運営メンバー一同が「任せてください」と返事をした。でも、実際やってみると、そわそわと不安になってしまう。誰かに何かあっても大丈夫な体制をつくることと、誰でも代われる仕事のやりかたをつくることは、同じようで違う。「かけがえのない関係」があるからこそ、代わることが出来る。その関係づくりに手間をかける。その手間をつくるための「溜め」をどうつくるか。
第100代の首相に岸田文雄氏が選出。東京都の新規感染者数は87人。約11ヶ月ぶりに100人を下回る。

2021年10月5日(火) 市ヶ谷

通勤中の電車で、宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』を読みはじめる。闘病中かどうかにかかわらず、いつ「急に具合が悪くなる」かは誰にもわからない。2年半ほど前、家を出て、くしゃみをしただけでぎっくり腰になったことを思い出す。「急に具合が悪くなる」。午後のZoomのミーティングでも何度か口に出してしまう。目 [mé]の「非常にはっきりとわからない」以来の言いたくなることば。
午前は次年度事業につながる(つなげたい)ヒアリングをZoomで行う。反応は上々。双方でやれることを整理し、次は対面でミーティングをすることになった。
国交相は「GoTo トラベル」の再開時期検討の考えを示す。ノーベル物理学賞が、気候変動の予測に取り組んだ米国プリンストン大学の真鍋淑郎氏ら3人に決まる。東京都の新規感染者数は144人。全国は982人、3日連続で1,000人を下回る。

2021年10月6日(水) 市ヶ谷→秋葉原→自宅

午前2時46分に岩手県沖を震源に地震、青森県では震度5弱を観測した。午前は市ヶ谷のオフィスで作業し、午後は東京アートポイント計画の「事業・共催団体選定会議」のため3331 Arts ChiyodaのROOM302へ。通常は次年度以降の事業を外部委員の方々に諮るための会議だけど、今回の目的は事業進捗の共有と今後の方向性の検討の意味合いが強い。昨年度はオンラインで開催し、今年度は感染拡大により一度開催が延期になっていた。委員の方々もスタッフも対面で勢揃いするのは、ひさしぶりだ。2時間を予定した会議の時間いっぱいを使い、各事業の進捗を話す。つい説明に熱がこもり、報告の時間が長くなる。「対面ハイ」みたいなものがあるのだろうか。
自宅へ移動し、夜は「ラジオ下神白」のZoomミーティング。作成中の制作物での「名前」と「顔」の扱いについて。公開の懸念材料には防犯上の理由もあるのだという。とはいえ、それほど広く流通するものではない。影響範囲は限られるだろう。匿名や仮名もあるだろうか。それによってつくるもののありようが変わってくる。誰と、どのように、いつまで許可をとっていくのか……。相手との顔の見える関係づくりを大事にするからこそ、その動きを外に開こうとするときに現れてくる課題に直面する。

2021年10月7日(木) 自宅→豊田→国立

午前は移動する中心|GAYAのミーティング……と思いきや、明日だった。Zoomにアクセスしてから気がつく。カレンダーの入れ間違いだった。代わりにnoteの記事整理など溜まっていた作業に集中する。
午後は休みを取り、東京都立大学へ移動する。非常勤で担当する授業の初回。去年はすべての講義がオンラインで、キャンパスに入るのは2年ぶり。今朝、学生から対面かオンラインかの問合せメールが来ていて、いやな予感がする。教室には14人。はじめにいろいろと質問を投げかける。どうやら、授業の実施形態は学内のシステムでアナウンスしないとわからないらしい。もしかしたら、オンラインでの受講希望者もいるだろう……と。対面でもZoom同時配信が必要そう。教卓には三脚付きのウェブカメラとマニュアルが印刷して置いてある。
「プロジェクターの設定にばたついてはじまったうえに、のっけから初歩的な質問攻めで不安でしょうが、後期の授業を担当する佐藤です」という頼りない自己紹介からスタート。対面で苦笑いを見るのもひさしぶりだ。
終わりの30分ほどを使って、みんなで「コロなかシート」をやってみる。まずはひとりでシートを記入し、二人一組で話す。終わってからやってみた感想をシートの裏面に書いてもらう。この1年半を振りかえる、いい機会になったという感想多数。シートの効用を実感する。
オンラインのほうが楽なのにな……と思っていた。でも、相手に目線を合わせずとも、どことなく反応がわかり、何気なく会話ができる対面はいい。非常勤を引き受けて4年目にしてはじめて、手応えすら感じてしまう。
帰り道、閉店ぎりぎりのmuseum shop Tに寄る。佐々木愛「もうひとつの時間」にすべりこめた! と思ったら、17日まで会期が延長していた。丸山晶崇さんACKT(アクト/アートセンタークニタチ)の進捗について立ち話をする。
東京都の新規感染者数は143人、今年の木曜日では最少。都は医療提供体制の警戒レベルを最高度からひとつ下げる。海外との往来緩和でインフルエンザ大流行の恐れを日本感染症学会が発表
23時近くに大きな揺れ。ミシミシと音が鳴り、緊急事態速報がスマホから、窓の外の防災無線から流れた。速報では、埼玉県南部と東京都23区が震度5強。2011年を思い出すというツイートが飛び交う。

2021年10月8日(金) 市ヶ谷→大島→秋葉原

朝のニュースでは昨夜の地震の被害状況が流れている。電車が止まり、帰宅が困難になった人たちの姿。壊れた水道管から溢れ出る水。商品棚から落ちて、割れたウイスキーの瓶。それでも23区の漏水は午前6時には全面復旧したのだという。夜通しの作業をする人の姿を想像する。電車のダイヤは乱れ、駅の入場制限があるのだという。覚悟して家を出る。
案の定、電車に乗るまで長い列に並ぶ。待っている間に、HUNGERのインスタライブ(通称:朝ハン)を見る。流れるコメントを見ながら、HUNGERさんは、え、震度5? どっかで地震あったの? 青森のじゃなくて? と話している。昨夜の地震を知らないようだ。誰も、その事実をコメントしない。言ったほういいのだろうか? 無駄にどきどきしているうちに、電車に乗れそうになって見るのを止める。結局、誰か地震のことを伝えたのだろうか?
電車を3本見送り、乗った後も、満員電車は時間調整で止まりながら進む。45分遅れで出社。開始時間を遅らせてもらったGAYAのZoomミーティングに入る。進捗共有と次回までに動くことを具体的に確認する。
少しオフィスで作業をしてから、都営地下鉄で西大島駅まで移動する。Googleマップを見ながら、うろうろと1時間半ほどリサーチで歩きまわる。まちの雰囲気や住んでいる人たちの様子、看板の地図を見ているだけでも、いろんなことがわかる。事前の資料と話で聞いていたことより、圧倒的に規模が大きなものであることを体感する。散歩には、ちょうどいい気候だったけれど疲れた……。巡り切れなかったところは、またの機会にする。体力、落ちているんだろうなと思う。
3331 Arts Chiyodaに移動し、Art Archive Online(通称:エイ!エイ!オー!)の続編となるトーク企画のミーティング。ゲストの顔ぶれは固まってきた。細部を詰めて、11月の始動を目指す。
厚労省はファイザーのワクチン、1億2千万回を追加契約。3回目接種用で医療従事者は年内、高齢者は年明け接種を目指すとのこと。東京都の新規感染者数は138人。大阪府は166人、死者合計が3,000人を超した。

2021年10月9日(土) 秋葉原

TARLディスカッションの4回目。ゲストは神戸のふたば学舎で阪神・淡路大震災の震災学習事業に携わる山住勝利さん。聞き手は、欠席の高森さんに代わって宮本匠さん。事前の打合せで、山住さんに地震後の東京の状況をきかれる。今回は朝の通勤時の駅での混乱が大きかったと思う。ニュース映像では駅につながる長蛇の列が流れていた。ちょうど緊急事態宣言が解除された後で人手が増えていたタイミングで人があふれたのでは? そういう意味では「大きな地震があったから」だけが混乱の要因ではなかったのかもしれない。そんな所感を伝える。
山住さんの話は、震災学習という未来への「伝達可能性」と、すでに体験してしまった過去の「伝達不可能性」を対比することからはじまった。震災学習では「他の誰かになってみる」ことや、ストーリー仕立てにする手法を話しつつ、「共感(エンパシー)」がキーワードとして挙げられていた。
「しっくりする言葉」を探すこと。冒頭にまとめとして話されたことは、山住さんが模索してきたことだったのだろうなと、話を伺っていて思う。ことばに出来ないことが起点にありつつ、それを伝えることに向き合い続ける。災禍の経験に対峙する、その基本的な姿勢を確認する。
常套句では忘れてしまう……言葉を選び取る責任がある……。メモすることばの密度が高い。回答を得るのではなく、思考するための材料をたくさんもらう。ディスカッション冥利に尽きる内容だった。
東京都の新規感染者数は82人。今年もっとも少ない人数となった。

(つづく)

▼ 1年前は、どうだった?(2020年の日記から)

▼ Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」。1年前の10月の書き手は、木村敦子さん(クリエイティブディレクター/アートディレクター/編集者)→矢部佳宏さん(西会津国際芸術村 ディレクター)→木田修作さん(テレビユー福島 報道部 記者)→北澤 潤さん(美術家)でした。


佐藤李青(東京アートポイント計画)
アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー。東京アートポイント計画、Tokyo Art Research Lab、Art Support Tohoku-Tokyo(-2020)を担当。共著に『10年目の手記 震災体験を書く、よむ、編みなおす』(生きのびるブックス、2022年)。