「かんせん」を変換したら「感染」になった|7/5〜7/9
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「かんせん」を変換したら「感染」になった|7/5〜7/9

コロナ禍の日々の記録。平日の仕事を中心に。土日祝は休みます(例外あり)。2020年の1回目の緊急事態宣言の最中にはじめた日記はこちらから。3回目の緊急事態宣言解除の日から再開。しばらく続けたい。

2021年7月5日(月) 自宅

地面は濡れているけれど、雨は上がっている。熱海の土砂崩れのニュースが飛び交う。いつの間にか言葉遣いは土砂崩れから「土石流」に変わっている(もしかしたら、もともとそうだったのだろうか)。3日に発生した最中の映像は、すぐにSNSに流れていた。当初は安否不明20人と報じられていたが、今日の夜の段階では、4人が亡くなり、64名の安否不明の方の名前が公表されている。まだ事態は読めない。
終日在宅勤務。朝からTokyo Art Research Lab(TARL)のディスカッションシリーズ「災間の社会を生きる術(すべ/アート)を探る」の公開情報を整理し、無事にウェブサイトで広報を開始する。メインイメージは「令和2年7月豪雨REBORNプロジェクト」のものを使っている。令和2年7月豪雨は2020年7月4日。週末には、ちょうど1年のニュースも流れていた。ディスカッション広報用のSNS投稿は、冒頭に熱海の被害へのお見舞いの一文を入れた。例年、この時期の投稿には、同様の文章を入れることになってしまう。図らずも「災間の社会」であることを実感することになる。
東京都の新規感染者数は342人。先週より25人増えた。Facebookでワクチンを接種した人が、腕が上がらないほど痛いと投稿していた。その話を読んで、急にワクチン接種の現実味が湧いてくる。
文化庁は国立劇場で文化芸術関係者向けに職域接種を開始。「抽選で選ばれた78団体2060人の文化芸術関係者のほか国立文化施設関係者など1140人も対象となる。8月中旬からは、フリーランスを含む約1万5000人を対象に、東京都港区の国立新美術館で接種が行われる予定」とのこと。

2021年7月6日(火) 市ヶ谷

曇り空に傘を持っていくかを迷って、折りたたみ傘をカバンにいれることにした。朝のニュースでは熱海で安否不明となっている人の氏名が並んでいる(夜のニュースでは死者7人、安否不明者27人となった)。土石流は盛り土との因果関係が議論の焦点となっている。少し前に聞いたラジオノーク瀬尾夏美さんの話を思い出す。瀬尾さんはいま、令和元年台風19号の被害にあった宮城県丸森町に滞在している。ラジオでは土地の造成や山との付き合いかたが話題になっていた。震災後に聞いた「山津波」という言葉を思い出しながら、津波のあった土地で「波のした、土のうえ」という作品もつくっていた瀬尾さんが、次は山の津波と関連する場所にいるんだなと思う。
西日本豪雨から3年。岡山県倉敷市真備町で追悼式が開催されたニュースを目にする。津波は数十年周期で再来することで、その記憶が呼び起こされるけれど、豪雨の記憶は季節の周期で思い出されるようになるのだろうか。これだけ、さまざまな場所で起こってくると「この日、あの場所で」というよりは、この季節は豪雨がある(あった)という風に……。
対面のミーティングとパソコンに向かって書類作成をしているうちに、あっという間に一日が終わってしまう。ふと遠くに行きたいと思う。それは物理的に移動することだけではない。この頃、見ているものや話す言葉が閉じていくような感覚をもつときがある。射程が短いというか、相手が近いというか……澱のように溜まった閉塞感が強まっているのかもしれない。
夜になってから、担当事業でトラブルが発生する。急いで電話とメッセンジャーでやりとりをする。
東京都の新規感染者数は593人。先週より117人増えた。都内の聖火リレーは「ほぼ全域で公道走行を中止」。札幌でのマラソンと競歩は「観戦自粛」に……「かんせん」を変換したら「感染」になったが、それは自粛したい。任天堂は「Nintendo Switch」の新型機として有機ELモデルを10月に発売と発表。ステイホームでブレイクした代表選手。

2021年7月7日(水) 市ヶ谷

雨が降っている。傘をさして、出社する。午前中はZoomで「移動する中心|GAYA」の定例ミーティング。互いの近況報告から話をはじめる。鶴岡、熱海、仙台……車で移動すること、ロードサイド、災害を思い出すこと……ひとしきり盛り上がったところでミーティングの議題にはいる。一見、本題に関係ないような枕の会話は、互いの言葉の裏にある風景を共有するような作業になる。相手が何を言おうとしているのか。その言葉に委ねられた真意を汲みとる補助線として役に立つ。新規メンバーの募集をかけていた「サンデー・インタビュアーズ」の説明会締切が明日に迫る。現在の応募状況を聞きながら、今後の進行を議論する。
午後はプログラムオフィサー全員参加で、第1四半期の事業進捗を報告しあう。約2時間、急ぎ足で9事業の今年度の動き方や懸念点を共有し、対応を議論する。1事業9シートに及ぶ「現在地確認シート」を使ってみる(このシートを共有することで事業担当以外のスタッフも各事業の要点を説明できるようにするために導入を試みている)。
鳥取・島根では線状降水帯が発生し、大雨になっている。鳥取の「汽水空港」が浸水している画像をTwitterで見かける。お店の前には大きな池(東郷池)がある。数年前に訪れたときのことを思い出す。
8月に開催予定だった「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル 2021」の中止が発表される。「茨城県医師会および県下26の医師会等による中止要請」があったのだという。ウェブサイトに掲載された言葉から主催者の無念さが伝わってくる。

(引用注:医師会の中止要請には)「感染拡大状況に応じて」と書かれていますが、その解釈は余りに多様で基準が曖昧です。何をもって感染拡大とするのか、それに基づく中止や延期の基準となるものは何かは明示されておりません。感染者数なのか、死亡者の数なのか、病床の使用率なのか、あるいは緊急事態宣言の発令なのか、私たちには分かりません。それでは私たちは対応ができません。その状況で判断を先延ばしにすることはできません。

東京都の新規感染者数は920人、先週より206人増……というニュースが流れた後から、あれよあれよと事態は進展する。11日まで延長が検討されていた東京都のまん延防止等重点措置は、緊急事態宣言に切り替わることになった。期限は8月22日まで。沖縄も緊急事態宣言が延長。千葉、埼玉、神奈川、大阪はまん延防止等重点措置を延長。ソーシャルディスタンスの意義が強まる七夕になった。

2021年7月8日 都庁→市ヶ谷→秋葉原

今日も雨。ワクチンの職域接種のため、東京都庁に向かう。会場の第二庁舎は初めて行くので、時間に余裕をもって家を出る。到着したら受付の列に並ぶ。画面に顔を写すタイプの検温とアルコールで手指消毒。事前に記入してきた問診票と接種券のダブルチェックを受けてから、パソコンに向かうスタッフに書類を渡し、受付完了。接種するフロアまでエレベーターで移動し、また列に並んで接種会場が開くまで、数分待つ。会場は撮影禁止。どこからともなくピアノの音楽が流れはじめる。A Whole New World……その後も穏やかにヒット曲が続く。そんなインストを流すことで、病院の待合室みたいに心落ち着かせる場所感を出す手法は、いつ開発されたのだろうか……オルゴールもあるな……サティの「家具の音楽」は関係あるのか……なんて、どうでもいいことに考えを巡らせているうちに、会場のトビラが開く。
体育館に白いパーティションで細切れの空間がつくられている。床には養生テープで線が引かれていて、壁には手作りの矢印がある。問診を受けて、ワクチンを摂取する。書類にワクチンのシールを貼ってもらい、15分の経過観察。距離を空けて、整然と並べられたパイプイスに座る。何人もの医療関係者とおぼしき人が見回っている。とくに体調は変化せず。時間になったら出口で書類に印をもらい、終了。何人もの人たちに「おつかれさまでした」と声をかけられる。
エレベーターを降りたフロアが間違ったのか、外への出方がわからず、都庁内を少しうろうろとしてしまう。何気なくイサム・ノグチやジャン・アルプの彫刻が置いてある。無事に出口にたどり着くと1階にはワクチン接種の列ができていた。看板を見ると対象者は「点検済店舗のコロナ対策リーダー」とあり、その下に「消防関係者」「都立学校教員」「大使館 Embassy staff」という文字が足されていた。
都庁から市ヶ谷のオフィスに出社する。到着して、すぐにACF(Artist Collective Fuchu)のZoomミーティング。プログラムが増えるのに比例して増える事務局の負担への対策と(こちらも増えていく)メンバー間の情報共有の方法を議論する。実践をかたちにするための議論の密度を高めることと「コレクティブ」であることの可能性を活かすための情報共有のバランスの取り方が求められる。この解決法をつくれたら、けっこういい展開になりそう。鍵は内向きでのオンラインメディアの使い方なのかもしれないと思う。
午後は3331 Arts ChiyodaのROOM302に移動し、スタジオ講習会を受ける。昨年度に引き続き、STUDIO302をつくった岩沢兄弟の卓さんが講師。昨年はほとんどが代替策としてはじまったオンライン配信だったけれど、今後は収録系も増えるのではないかという話をきく。さらなる技術力向上が求められる(追いつけていない……)。新しい機材の確認かねがね、すべての機材の電源をいれるところから手順を再確認。その後にUDトークの使い方を学ぶ。スマホにもアプリをダウンロードして使ってみる。わくわくする。
東京都の新規感染者数は896人。先週より223人増。東京都に4度目の緊急事態宣言発出が決定。オリンピックは都内会場のすべてと埼玉・千葉・神奈川が「無観客」と決定。

2021年7月9日(金) 国立→市ヶ谷

朝起きるとワクチンを接種した左腕の痛みが強まっている。局所的な痛みは、身体を動かす振動でも響いてくる。リュックを背負う動作が痛い。外は今日も雨。傘をさして、国立駅に向かう。午前中はACKT(アクト/アートセンタークニタチ)のミーティング。話のなかでは、いろんな人の名前や本、事例が挙がる。プログラムの方向性も見えてきた。ここで立ち止まる。これをやることで何を実現していくのだろう? 具体策が見えてきたところで、目的に立ち返る。あるアクションをすることで、どんな社会的な変化をもたらしたいのか? どんなまちの状態をつくりたいのか? 公的な事業としての意義を問い直す。来週のミーティングで継続審議となった。
急いで市ヶ谷のオフィスに移動する。昼を食べる時間も充分にとれない。午後は次年度以降の東京アートポイント計画とTARLの展開を議論する。都や財団の方針、社会状況、現在の共催事業の発展性、プログラムオフィサーの対応力など鑑みながら、来年度の予算要求のため、これからの骨格を話し合う。会議の途中で左腕の痛みが和らいだ気がしたら、メガネが呼気で曇るようになる。少し熱っぽくなる。会議後はサンデー・インタビュアーズのZoomでの募集説明会をきく。はじまって早々に、少し気分が悪くなってきたため、急いで退社する。帰り道で気持ち悪くなり、帰宅後も風邪を引いた後のような感覚が強まる。ワクチンの副反応をウェブで検索する。明日には収まるだろうか?
東京都の新規感染者数は822人。「自殺が12か月連続で増加 女性が大幅増 コロナ影響か分析進める」というニュースの見出しが目を引く。6月は全国で1745人。去年の同じ時期に比べて、173人増えたのだという。

(つづく)

▼ 1年前は、どうだった?(2020年の日記から)

Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」。1年前の7月の書き手は、大吹哲也さん(NPO法人いわて連携復興センター 常務理事/事務局長)→村上 慧さん(アーティスト)→村上しほりさん(都市史・建築史研究者)→きむらとしろうじんじん(美術家)さんでした。


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アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー。東京アートポイント計画、Tokyo Art Research Lab、Art Support Tohoku-Tokyo(-2020)を担当。近刊は『震災後、地図を片手に歩きはじめる』(アーツカウンシル東京、2021年)。足しびれがち。