やっぱり逆目で苦労する。
今、お客様からの注文で水楢の板を削っています。
しばらく前に荒取りをして、外気に馴染ませておいたものです。
そうしないと、後で反ってしまったりして悲しい想いをしますから。
この板、しばらく前に高山の材木屋さんから購入した北海道産のミズナラです。
随分と賑やかな木目の板だなぁと思います。
はっきりした柾目の木目に縮と虎斑。
※ 波のように色の濃淡が現れているのが縮です。楓や栃に良く表れる杢です。
実は国産の楢を扱ったのはこれが初めてで、一般的な国産材ってこういうものなのか、それはよく分かりません。
ただ、今まで付き合って来たホワイトオーク(北米産)とは明らかに違いますね。
ホワイトオークの虎斑を見た事はありますが、縮は未経験です。
縮が現れる様な板は、向きを変えることで木目が変わって見えるのも楽しいですね。
こういう板は見るだけなら良いんですが、加工は大変です。
木材の繊維が複雑に交差しているので、下手に削ると逆目でボロボロになってしまいます。
実際、この板、機械では削ることが出来ませんでした。全くって訳じゃないですが、片側3mm位の余裕を残しておかないと、逆目の跡が残ってしまうと思います。
今回は、機械で大雑把に粗削りをして、逆目で荒れた表面は手ガンナで削って綺麗にしました。汗だくです。
楢は固いですから削るのも重労働です。全力とは言わないけれど、全身を使って弾みも付けて削る感じでしょうか。
なので、真夏の暑い時期は大変です。ここ数日、少し涼しくなってきたんで助かります。
また、刃も直ぐに切れなくなってしまうので頻繁に研ぎます。今日1日で、10回くらいは研いだんではないかな。
切れない刃で無理に削ろうとしても表面を滑ってしまうし、それを避けるために多目に刃を出すと、抵抗が大きすぎて鉋台が引けなくなったり、下手をすると、表面がむしれてしまいます。
なので、切れなくなったなと思ったら、すぐ研ぎます。切れる刃物で加工すると、気持ち良いですしね。
今は研ぎのスピードも上がったのでそれほど負担には感じませんが、木工始めたての頃は、1日かかって研いでもまともな刃が付いていない事もザラに有りました。
機械で加工できるんなら、刃を研ぐ必要もなく本当に楽だし時間もあっという間なんですけど仕方ありませんね。
「それが木工の醍醐味」っていう人も居ます。まぁ、それはそうなんだけど。(笑)
一般の人からしたら、機械より手道具の方が優れているっていうのは理解しがたい面が有ると思います。
全ての場面でそうとは言えないけれど、手道具が機械より高精度で高品質の仕上がりを生み出す事は、木工の場合、普通に有るんですよね。
伝統工芸の職人さんたちがいまだに手道具を使い続けている理由はそこにあります。
結果が同じなら、楽で速い方が良いに決まっているんです。
でも、そうじゃないからわざわざ面倒で使いこなすのに熟練が必要な鉋や鑿なんて言う原始的にも見える道具を使っているんですね。
実際、非常に杢の美しい板(=非常に高価)を自動ガンナに入れる勇気は自分にもありません。
一瞬でボロボロになってしまう事だってありますから。
そんなこんな、木工作業は忍耐が要求されますね。(笑)
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