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#ネタバレ 映画「ライムライト」

「ライムライト」
1952年作品
2003/8/17 11:07 by 未登録ユーザ さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

自分と結婚する事が、彼女にとっては行く末幸せではないと冷徹に分析し、彼は身を引くのである。途中、心の中には、色々な思いが有ったと思うけれど、彼ほどの人物ならば、その結論を出す事は難しい事ではない。

では、ここでチャップリンのもう一つの名作である映画「街の灯」を思い出してみる。主人公は若い。しかし貧しいのである。彼はその貧しさを気にかけない。一人暮らしならそれで結構だが、それが恋のマイナス材料になっている事に気づかない。たとえ気づいても貧しさから抜け出す事は容易ではないだろう。彼はその状況で事実上の求愛をする。

この映画「ライムライト」と映画「街の灯」は、「身の程を知る」と言うポイントにおいて、思えば対照的な作品であったのだろうか。両方とも優れた作品で、それをシンプルに仕上げている。

でも、若者の中にもこんな人がいるかもしれない。たとえば映画「街の灯」の主人公を借りて語ると・・・

彼は自身が貧しいのを自覚し、彼女が誤解している事にも気づき、目が開いたら、彼女にどう説明しようかと最初から苦悩する。いや、人の心をもてあそんではいけないから、今すぐにでも彼女に自分の実像を教えたい。それから改めて求愛したい。しかし実像を教えたら、彼女は去っていくかもしれない。それは耐え難く哀しいが、もし去っていかなかったら、ある意味、それも苦しいことだろう。

もちろんこれでは別の映画になってしまいかねない。しかし実人生は意外と複雑なのだと、改めて思うのである。

追記
2003/8/19 21:48 by 未登録ユーザさくらんぼ

映画「ライムライト」について話すつもりだったけれど、あまり話せなかったので、ここで少し話そうと思う。例によって昔観ただけなのでディテイルは忘れているが・・・

映画にはほとんど登場しなかった記憶だが、バレリーナの姉は娼婦をしてまで彼女を金銭的に支えていたようだ。バレリーナの足が動かなくなった理由の裏には、その事を知ったための精神的なショックが有ったのだと思う。

一方、老芸人はそんなバレリーナを励まし立ち直らせる。しかし、その後、感激した彼女から求愛されても、彼女の幸せを考え、身を引くのである。

この姉と老芸人のエピソードに共通するキーワードは「犠牲」だと思う。しかし、同じ犠牲でも一方はバレリーナを病気にし、一方は癒した。いったい何が違うのだろうか。

バレリーナは同性、同世代で身内の姉に対してはその心情をよく理解できたが、異性、別世代、他人である老芸人の心情には理解が及ばなかった。その無理解が、皮肉にも彼女を救ったのではないだろか。

もちろん私にも老芸人の心情はよく分からない。しかし、想像できる事を少し書いてみる。

老芸人にも青春時代は有ったのである。周りの若い女性が黙っていてもチヤホヤしてくれた時代が有ったはずだ。しかし老人になるとそれは少なくなる。それで男は自分が盛りを過ぎた事実をしみじみと噛みしめる。

この時、彼が過ごしてきた人生の賜物として仕事、地位、名誉、財産、家族などの充実したものを所有していれば精神のバランスはとれる。しかし、この映画の老芸人の様に何も無いと、どれほど寂しいことだろう。

「明日が有るさ・・」は若者の言葉である。老人は明日になればさらに歳をとって悪循環になりかねないからである。老芸人はバレリーナにどれほど好意を持っていたか知らないが、「もう後が無い出逢い」だった。

彼女はそんな彼に求愛し、断らせたのである。感謝の代わりに彼の心の中に嵐を起こした。ここにも「街の灯」からひそかに感じられた、隠し味ともいえる、チャップリン一流の「残酷」が感じられる。

追記Ⅱ ( 老芸人が亡くなった後 ) 
2017/3/15 9:32 by さくらんぼ

>彼女は同性、同世代で身内の姉に対してはその心情をよく理解できたが、異性、別世代、他人である老芸人の心情には理解が及ばなかった。その無理解が、皮肉にも彼女を救ったのではないだろか。(追記より)

ラストに老芸人が亡くなった後、若きバレリーナは傷心で踊れなくなるのでしょうか。また映画の最初に戻るのでしょうか。どうどう巡りみたいに。

私は、一時は悲しんでも、バレリーナは若い恋人の愛ですぐに再生し、老芸人のことなど忘れてしまって、幸せに暮らすのだと思います。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)

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