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#ネタバレ 映画「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」

「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」
これは革命のお話
2020年製作 103分 中国
2022.5.21


( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

この映画「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」からは、映画「2001年宇宙の旅」を連想しました。オマージュかは現段階では分かりません。

ヒロイン・リウの娘(リウ・ハオツンさん)が、逃亡者(チャン・イーさん)からフィルムを奪おうとして、道端に落ちていた骨を拾って殴ります。

ひっくり返った逃亡者は、「これで、やりゃあがったのか…」とばかりに骨を手に取り、ながめます。

この、「見て見て、骨がキーワードよ!」と念を押すようなシーンは重要だと思いました。

後半、道に落ちて、砂まみれになってしまったフィルムを洗浄して映写すると、傷だらけの映像になりましたが、あの傷こそが、映画「「2001年宇宙の旅」のクライマックスのセリフ、「降るような星だ!」の星なのでしょう。

ちなみに、モノリスは立ち上がったスクリーンであり、砂に埋もれてしまった、娘の一枚のフィルムなのだと思います。

主人公とヒロインが薄汚い恰好で登場するのは、特にヒロインのヘアスタイルは、お猿さんだからでしょう。

この映画の背景は、文化大革命ですから、革命と言えば、コンピューターに命が宿る革命に繋がりますね。

他にもあるでしょうが、とりあえず思いついたことを書きました。

ところで、「一食抜いても観たい映画」という表現がありますが、「脱走しても観たい映画」とは、すごい設定ですね。

しかも、自分の娘が映っていると言っても、本編上映前の、おまけのニュースフィルムに、一秒間だけの映像です(昔の映画にはニュースがオマケで付いていました。ラジオしかなかった時代の名残だと私は思っています)。

巨匠チャン・イーモウ監督の人情劇は大好きでしたが、一秒も睡魔が襲ってこなかったのは驚きでした。佳作です。

老若男女の方に、(通常よりワイドなスペースオペラ的映像なので)劇場で観る事をおすすめします。

★★★★☆

追記 2022.5.21 ( お借りした画像は )

キーワード「星」でご縁がありました。おいしそうなお星さまですね。少し上下しました。ありがとうございました。

追記Ⅱ 2022.5.21 ( 幸先の良い出会い )

その他にも、

スターチャイルド → 当局に捕まり、後ろ手に縛られて座っているヒロイン。スクリーンの前に置かれた彼女は、胎児の姿を模しているようです。

HAL → 映画館の映写室の窓から映画を観ている逃亡者とファン電影(ファン・ウェイさん)。ファン電影というのは映画館主です。

宇宙船 → フィルムの入っている丸い缶。空飛ぶ円盤のイメージでしょうか。そして映画館です。複数のモノを利用して宇宙船を撮影するのは、本物のSF撮影でも同じでしょう。

宇宙船内部、重力の無い不思議な空間を歩く → 砂漠のような起伏のある場所を歩く。

猿に名前は無い → ヒロイン・リウの娘は、親から命名されていないのでリウの娘なのです。つまり、ヒロインは、猿でもあり、進化系のスターチャイルドなのでしょう。一人で何役もこなしているようです。

浮遊するペン → 少女が持っていたナイフ。

チラシの写真 → 変化の記号でもある階段に、座っている猿と、立っている猿がいます。まるで進化の過程を見ているがごとく。二人が同じ方向を見ている事にも注目。二人がパートナーになることを暗示しているのかもしれません。

まだまだ、あるでしょう。

この映画「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」は、逃亡者が、娘のフィルム(モノリス)がきっかけになって、ヒロイン・リウの娘と出逢うお話です。

娘を撮影したフィルムから、命ある本物の娘が誕生したのです。HALが誕生したように。映画の終わり近く、フィルムを包んでいた紙にフィルムが入っていないので、慌てて砂漠で探す二人。しかし、無くて当然なのです。リウの娘に置き換わったのですから。

そして、HALが人間を攻撃したように、娘も逃亡者を攻撃しましたが、やがて和解し、相思相愛の関係に。

微妙なのは、今後の二人が、親子になるのか、夫婦になるのかという事です。年齢的には、どちらも可能そうな設定になっているのではないでしょうか。

いずれにしても、娘を失った父と、父を失った娘の、幸運な出逢いがありました。

追記Ⅲ 2022.5.21 ( 再現フィルムか )

そして、もう一つ、

映画には、俳優さんだけでなく、たくさんのスタッフがかかわっています。エンドロールに名前が出てこない人も含めて。

その苦労を、フィルムを上映するときの大騒ぎで、表現しているような気もします。

追記Ⅳ 2022.5.21 ( 「へその緒」を切って誕生する )

荷車から落ちたフィルムが砂だらけになってしまうシーンがあります。

それを見たファン電影が「牛の腸」みたいだと言いました。これも、わざわざ注目させましたが、その心は「へその緒」の記号でしょう。

予告編の冒頭にフィルムを切るシーンが出て来ますが、まさに「へその緒」を切る記号であり、誕生の記号、重要シーンなのだと思います。

追記Ⅴ 2022.5.21 ( 映画「初恋のきた道」 )

同監督の、映画「初恋のきた道」は、映画「タイタニック」のオマージュかもしれないと、かつてレビューに書きました。語り口を小さく変えて、大作と勝負するというスタイルの。

なので、仮に映画「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」が、映画「2001年宇宙の旅」のオマージュであっても、私は驚きません。スタイルも踏襲しているようですし。

追記Ⅵ 2022.5.22 ( 「ツァラトゥストラはかく語りき」 )

リウの娘は、わけあってランプシェードを欲しがりました。その材料としてフィルムを盗んだのです。裸電球にランプシェードを被せるのは文化の記号かと思いましたが、映画「2001年宇宙の旅」のラスト、突然モダンな西洋の部屋が現れたことを思い出しました。部屋のシーンに洒落たランプがあったような、無かったような、はっきり覚えていませんが。仮にランプあったとしたら、やはり、それは文化の記号だったのでしょうか。

映画「2001年宇宙の旅」と言えば、印象的なシュトラウスの名曲「ツァラトゥストラはかく語りき」ですが、どうやら、これは、親分肌のファン電影(予告編で「皆、映画を観たいか?」と叫んでいる男)の、文字通りの語りと、彼が娘の出ている部分のフィルムを加工し、エンドレス再生にしたことで表現しているようです。フィルムの加工については、ニーチェの「永劫回帰」をモチーフにしているようだからです。

追記Ⅶ 2022.5.22 ( 消えたフィルム )

少なくとも文化大革命当時の中国で、娘がニュースフィルムに、たった一秒と言えども写っているという事は、その娘は他の模範となる良き人として、当局から認められた名誉な事らしいです。ファン電影のセリフにありました。そのフィルムが砂漠の砂に消え、名もなきヒロインに生まれ変わるという設定は、当局の「造反有理」「革命無罪」を思うと、意味深長だと思いました。

追記Ⅷ 2022.5.22 ( フィルムを洗うのは「産湯」 )

>荷車から落ちたフィルムが砂だらけになってしまうシーンがあります。

>それを見たファン電影が「牛の腸」みたいだと言いました。これも、わざわざ注目させましたが、その心は「へその緒」の記号でしょう。

>予告編の冒頭にフィルムを切るシーンが出て来ますが、まさに「へその緒」を切る記号であり、誕生の記号、重要シーンなのだと思います。(追記Ⅳより)

きれいなお湯をたくさん作らせ、砂だらけになったフィルムに優しくかけてから乾かしました。手荒い男たちは追い払い、女たちだけになりました。でも、例外として、写真の経験のある逃亡者は作業させてもらえたのです。今思えば、これは「産湯」だったのでしょう。産婆さんのような女たちの中、逃亡者が参加させてもらえたのは、父だったからかもしれません。

追記Ⅸ 2022.5.24 ( 「宇宙ステーション」は )

「H」形のリアルな「国際宇宙ステーション」(ISS)の時代に生きているせいか、SF時代の「〇」形宇宙ステーションを忘れていました。

しかし、昨夜、ネットで映画「2001年宇宙の旅」に出て来る「〇」形を見て思い出したら、あれは、映画「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」の予告編にも出て来る、映画フィルムを巻く、円形の「フィルムリール」にそっくりではありませんか。

しかも、くるくる回しています。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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