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ロジカルシンキングの目的はコミュニケーションである

私がマッキンゼー東京支社に入る時、入社前に読んでおくようにと言われた本が1冊だけあります。それが照屋華子さんと岡田恵子さんのロジカルシンキングの本で、これもまた2001年初版というロングセラーです。私自身ロジカルシンキングの本をこれ以外に読んだことがないので、ロジカルシンキングのいい本がないかと人に聞かれればこの本の紹介をしているのですが、その時に必ず話をするのが表紙の話。この本の内容はロジカルシンキングの手法(MECEとか、ピラミッドストラクチャーだとか)が書いてあるのですが、この本の表紙の左上の英語を見ると
Logical Communication Skill Training
と書いてあるのですよね。ロジカルシンキングという物事の考え方の本のはずなのに、コミュニケーションスキルとある。

ロジカルシンキングという言葉で多くの人がイメージするのは、論理的に考えることで正しい答えにたどり着く、ということではないでしょうか。確かにロジカルシンキングの手法を使うと論理的に物事を整理していくことはできます。それによって正しい答えにたどり着くことができないかと考えるわけですよね。ただ、実際のところはロジカルに整理していっても正しくない答えになってしまうこともあるし、ロジカルでなくても正解に至る可能性もあるわけです。(そもそも何が正解かなんて、実生活上わからないことも多いのですけど。。。)

それでも、抜け漏れなく重要なポイントを押さえるために論理的に整理立てて考えていくことは結論を出していくために大きな前進となります。例えば何かの企画をプレゼンするとして、整理不足で、あちこちに抜け漏れがあると聞き手に感じられてしまうと、「検討不足で議論を進めるには不十分、もう少し調べよ」といわれてしまうのですが、これを防ぐにはロジカルシンキングは必要なやり方ではあるんですよね。

そして、それ以上にロジカルシンキングが重要になるのはコミュニケーションの部分。抜け漏れなく検討してきたこと、重要な点はきちんと押さえていること、(重要じゃない部分は重要じゃないと言えること)、論理立ててなぜその答えに至ったのかを説明できることは合意を形成するのに大きな力となります。だから、Logical Communication Skillとしてロジカルシンキングは重要なのです。

コミュニケーションとしてのロジカルシンキングを考える上で、気をつけないといけないのは、考えてきたロジックと伝えるロジックは必ずしも同一である必要はないということ。ついつい、自分がどうやって、どのような思考の経路でその答えにたどり着いたかを説明するような論理展開をしてしまいたくなるのですが、あなたが話す相手はほとんどの場合、それを求めているわけではありません。その答えをより簡潔にわかりやすくする伝え方のロジックは、思考の道程とは別にしてしまっていいわけです。だからその時点での答えが決まったら、もう一度メッセージドリブンで説明のためのロジックを組み立て直す。これを繰り返すことでシンプルで説得力のあるコミュニケーションが実現していきます。


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