記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

歌は幸福を運んでくるのか?

『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』(2021年/ウクライナ・ポーランド)監督:オレシア・モルグレッツ=イサイェンコ 出演:ヤナ・コロリョーヴァ、アンドリー・モストレーンコ、ヨアンナ・オポズダ、ポリナ・グロモヴァ、フルィスティーナ・オレヒヴナ・ウシーツカ

ナチスとソ連に蹂躙された 3つの家族の年代記
1939年、現在はウクライナに属するポーランドの町。ユダヤ人家族の家に、ウクライナ人とポーランド人の2つの家族が越してくる。ユダヤ教、正教会、カトリックと宗教の異なる3つの家族だが、子どもたちが彼らを結びつける。そこに第二次世界大戦が勃発する…。

号泣映画。以前はこういう映画は避けていたというか子供や動物で感情を揺さぶるのはけしからんと思っていたのだが、最近は積極的に泣きに行く。それは年取ったからかな、あまり日常生活では泣けなくなっているので、たまにこういう号泣映画を見に行くのです。

まずヒロインの女の子がけしからんぐらいに大人を泣かせる演技をする。もう子役ベスト3にしてもいいぐらい。演技だけでなくその歌を聴いたら誰もが惹きつけられるはず。極端にキリスト教は嫌いというのでなければ。

ウクライナの作曲家の曲なのだがウクライナ民謡を元にしたクリスマス・ソングのようで、ウクライナ人を燕に例えているのかな。燕は人の家に間借りするけどそんな燕は幸福を持ってくるというような。オスカー・ワイルド『幸福な王子』を連想させる。

そしてストーリーとしてユダヤ人の家に間借りするポーランド一家とウクライナ一家が出会うのである。ポーランド一家の両親がソ連軍に連行されてしまう。そして少女が残されるのだが、ここでまず軽く泣くよな。ウクライナの娘とポーランドの娘は仲良くなり、ユダヤ人の姉妹ともどもウクライナ母は音楽の先生なので、歌を教えるのだった。

そしてナチスの占領時代。それはよく知るようにユダヤ人受難の時代で、姉妹が残され両親は連行される。ここも泣きのポイントだが、ユダヤ人姉妹の妹が亡くなるシーンが号泣ポイントだよな。ウクライナ父が医者を求めて奔走するのだが虚しく、幼い妹は死んでいく。

ユダヤ人の子供を隠しながら難局を乗り切るウクライナ人の夫婦だが、ついに父親が陰でパルチザンめいたことをしたのがバレて銃殺される。ここでまででけっこう疲れてしまうのだが、まだまだ先があるのだ。

ユダヤ人の家にナチスの家族がやってくるのだが、その息子に歌を教えることになる。そして、ドイツの敗戦になると今度は息子だけが残されていく。なんなんだと思うのだが、子供たちに降り掛かってくる戦争の悲劇を物語っているのだった。

そしてその男の子もソ連軍に殺されてしまう。人が殺されすぎだろうと思うがそういう時代なので仕方がない。さらに
ポーランド母までが強制収容所に入れられて子供たちと引き離される。子供たちはソ連国家によって育てられるが、ウクライナの曲を歌ったとして少女が収容所送りになるのだ。

その間に現在のシーンが挿入されて、そこで大歌手になった女性歌手のコンサートが開かれるのだが、少女時代に姉妹のように育った二人を呼び寄せるというハッピーエンディング・ストーリーなのだが。

親世代はほとんど死んでいたり収容所に入っていたり。最後にウクライナの娘も収容所に入れられるのだが、そこから解放された後ににコンサートということなのだ。それはソ連解体時代だろう。なんか今作られるとロシア人は悪人の悪人というナチスより酷く描かれているような気がするが、まあ最終的には子供たちの未来の話で歌の力で生き延びてきたというストーリーなのだが、ただ不幸の元になったのもその歌のような気がしないでもない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?