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母のところに帰りたかったのか?

『ソウルに帰る』(2022年/フランス、ドイツ、ベルギー、カンボジア、カタール)監督・脚本:ダヴィ・シュー 出演:パク・ジミン、オ・グァンロク、キム・ソニョン、グカ・ハン、ヨアン・ジマー


こんがらがった私とソウルの街の灯り
韓国で生まれフランスで養子縁組されて育った25歳のフレディは、ふとしたきっかけで、母国である韓国に初めて戻ってくる。しかし、自由奔放なフレディは、韓国の言葉や文化になじめず、誰とも深い関係を築けない。そんな中、フランス語が堪能で親切な韓国人テナの手助けにより、フレディは自分の実の両親について調べ始める。

2022年カンヌ国際映画祭のある視点部門での上映を皮切りに話題を呼び、その後世界中の映画祭で絶賛、2023年、アカデミー賞国際長編映画賞カンボジア代表に選出され、ボストン映画批評家協会賞では前年濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』が栄誉に輝いた作品賞を見事受賞した。友人の経験に着想を得て脚本を書いたという本作の監督は、カンボジア系フランス人のダヴィ・シュー。本作が長編2本目ながら、一躍世界でもっとも期待される監督の一人となった。表情豊かで型破りな主人公・フレディ役には、演技未経験の韓国系フランス人アーティストのパク・ジミンが抜擢。相反する感情を混在させて演じる力強さは、『TAR/ター』のケイト・ブランシェット、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のミシェル・ヨーらと並び、昨年を代表する名演と評された。25歳から33歳までの、人生でもっとも多感な時期を過ごす一人の女性を見事に描き切り、「『わたしは最悪。』のように現代的な感性を持ち、『こわれゆく女』のように並外れた女性像を提示する」-Les Films du losange(フランス配給)と話題を呼んだ。

韓国の懐メロっぽい歌が流れるのがカルメン・マキ『時には母のない子のように』みたいな感じだった。朝鮮戦争時で韓国が貧しかった頃に子供をフランス人へ養子縁組した娘が偶然韓国に来ることになって、韓国社会の中で試行錯誤していくのだが、結局上手く行かなかったという話。

まずフランスの個人主義の強さというか、それが韓国社会との違いに驚く。父親はすぐに見つかるのだが、産みの母とは別れていて新しい家族を作っていた。しかし祖母が彼女にすまないことをしたと謝るのだが、その理由がよくわからない。父親もフランス人である彼女を韓国に呼び戻したいようなのだが、ドライな関係を求める彼女には鬱陶しい存在だった。そんな感じでフランスに帰るのかと思ったら韓国に居続けるのだ。たぶん母との再会を願っていたのだろうと思う。母は彼女と逢うことを拒否し続けたのだが、仲介者に説得されて逢う。しかし嘘のメールを教えてそれっきり連絡が取れなくなっていた。

フランス人の彼女も個人主義的だが、彼女の母も個人主義的でお互い様というか、似ているのかもしれない。情けないのは父親で、ただ娘を愛していたというのはそうなのだろうと思った。娘の誕生日にメールを送るとか。二回目に彼女の方から逢うことにしたのは、金の問題だったのか。新しいフランス人の彼氏が出来ていたのだが、彼女の勤め先が兵器会社だった。朝鮮戦争のことがあるから、父はそんな彼女を受け入れられないのだった。金のためなら格闘技もする彼女だった。ヤバそうな裏社会に馴染んでいくのは、精神的な飢餓感とかあったのかもしれない。

あまり支持されない映画だと思う。彼女があまりにも個人主義過ぎて。それも文化の違いなのかな。フランス人との母の関係が良くなかったのか?その辺が良くわからない。フランスで差別されていたのかもしれない。

韓国で知り合った通訳してくれる女性がグカ・ハンだった。彼女は韓国人だけどフランス語で小説を出して話題になった人だ。多和田葉子みたいな人だが。彼女の演技が自然で良かった。主演の娘も荒んでいく状況が痛いほどわかる演技なのだが、共感はしにくいよな。母との再会の時に涙を流して泣いたのに父親とは最初から他人行儀だった。その落差が面白い。父親はいてもいなくても関係ないという感じだった。


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