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今日もパレスチナではイスラエル軍による迫害が行われている。

『愛国の告白—沈黙を破るPart2—』(2022/日本)監督土井敏邦

解説/あらすじ
2009年に劇場公開した長編デビュー作『沈黙を破る』の続編、土井敏邦監督の34年におよぶパレスチナ・イスラエル報道の集大成

coco映画レビュアー

Part2とあるよに『沈黙を破る』の続編なのだが、ドキュメンタリーなので、前の作品を観ていなくとも理解できる。要はパレスチナ情勢のドキュメンタリーなので、その最新情報という感じか?

何よりもそれを証言するのが、元イスラエル兵でありパレスチナ人を迫害してきた人なのだ。彼らは生まれた時からイスラエルでごく普通に人生を過ごしてきたのだが、普通じゃない軍隊生活によってイスラエルという国の成り立ちや人間に取って平等や人権とはなんなのかと自問し続けて、イスラエルのパレスチナ人の迫害を告発する運動をするようになったのだ。それは反イスラエルではあるが、なんとか共存の道を探りたいという「愛国」精神なのかもしれない。

ウクライナ侵攻するロシアの兵士が何も知らないままロシアという国家を守るためにウクライナに侵攻したという状況に似ているのかもしれない。それは日本人にとっても遠い戦争のことではなく、むしろイスラエルと軍事同盟を結んで武器開発や軍需産業をなしていこうとする日本政府の姿もあるのだ。さかんにロシアのウクライナ侵攻については大騒ぎするのに自国が関係するパレスチナ問題はほとんど見向きもされない状態なのである。

すべての戦争がそうであるように、そこには国家の正義しかなく一兵卒である兵隊はただの駒として作戦を実行する兵器でしかない。例えば高台の小学校から街に向かってロケット弾や破壊するために攻撃するとか。ただ撃てとしか言われないのだった。そしてそこにいる兵士は、問題を考える前にためらわず撃つことを要求される。その破壊の姿に気づいた時に彼の精神も破壊されていくのだ。

また巡礼に行くイスラエル人を守るための護衛という任務。そこにいるのはパレスチナ人の移住区でもある。イスラエル人巡礼のたびごとにパレスチナ人の出入りを禁止し、武器を持った兵隊たちが巡礼者を囲って進んでいくのである。そうしたイスラエル人に反発する者がいないわけではない。軍隊という力で押さえつけているのだ。反発する者には容赦ない攻撃が行われる。分断される人民。かつてエルサレムはユダヤ人アラブ人が多く出入りする巡礼の場所だったのである。

もっとも不条理なのは夜間パトロールと称して、パレスチナ人の民家へ武装した兵隊が押しかけるのだ。武器や反抗者を探すためなのだろうが、夜間に子供たちが寝ているところを兵器で踏み込むのだ。そういう経験をした者たちが反感を持たないはずはない。それを抑えるのがイスラエルの兵士の役目だった。

そしてインティファーダが起こる。パレスチナ人の武器は石と煙幕をはるタイヤだけ(燃やすのだ)。それもほとんどが子どもたちのような。そうした反抗者を撃たねばならないトラウマ。とりあえず何が出来るということもないのだが、それを知ることは大切だ。

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