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初冬や『パンセ』読む夜、葦である

江ノ島に行ったときに撮っていたものです。昨日は外に出なかったら手持ちの写真がありません。タダでさえ冬はあまり撮るものがないのに、今朝は雨が降ってますね。

読書も相変わらず取っ散らかるっています。

『岡井隆の現代詩入門―短歌の読み方、詩の読み方』。
歌人らしく韻律による現代詩の読み方で、意味がわからない関口涼子『熱帯植物園』(はちかいみみ)や蜂飼耳「食うものは食われる夜」の現代詩を読み解く。『熱帯植物園』は写真とコラボの詩集ですがきっちり文字数が揃えられて意味は不明ながら音律で読ませる。蜂飼耳(名前から現代詩だ!)の詩も短歌の五七調の韻律がある。他にも荒川洋治の詩とか一般的に分かる部分とプライベートな部分の混合の詩は、わかるところの意味を汲み取りながら、あとは韻律によって心地良さを感じる

そして近代短歌では斎藤茂吉の短歌が出てきます。茂吉の短歌もプライベートの部分はわかりにくい。まあ、現在では解説されているのでそれを手がかりに読むこともありますが。そして万葉調という古語の世界がある。もともと文語体じたいが現代人にとって馴染みがないもの。でも茂吉の短歌に惹かれる人は一つの短歌だけではなく、連作という形でその物語の流れを知ることになる。その魅力を増しているのが、短歌の音律なのだと。そこから一つの短歌を秀歌として読み込む。ゆっくり再度読んで意味がわかって感動する。

それを現代詩に応用して、韻律で読むという方法。しかし現代詩はお気に入りの行を取り出すということはなかなかしない。詩に対して失礼だと思うのか?とにかくそのようにゆっくり読むように仕向けられている。そこが散文との違いですね。

斎藤茂吉は写生というスタイルを追求した「アララギ」派の歌人ですが、実際の人物は架空である場合が多く、それはフィクションによって物語化していく創造力なのだと。

これは塚本邦雄『茂吉秀歌『赤光』百首』でも万葉の「寄物陳思(きぶつちんし)」は物に寄せて自分の心情を発露するという方法を取りながらもその物は幻視的であり写生というよりは象徴なのだと。古典から題材を汲み取っていきながら象徴的に物語を語るのが、塚本のいう前衛短歌と合致する。その写生という無味乾燥的なものだけではなく、象徴という浪漫的なものがあると読むのです。その読みに過剰な印象主義的な思い込みが有りすぎる感じですが批評としてはここまでぶっ飛んでくれると面白い。

それと斎藤茂吉と釈迢空(折口信夫)との短歌の思想の違い、それは斎藤茂吉は故郷(地方)に対して釈迢空の都会(大阪)というのがあるのではないかという富岡多恵子『釈迢空ノート』も面白い指摘だと思いました。つまりそのところで「万葉調」を目指しながらも斎藤茂吉は保守的な故郷を詠もうとするのだけれど釈迢空は形式的に近代詩(行分け詩)のスタイルとか取り入れる。それは石川啄木の影響かもしれない。そして、根本的なところで斎藤茂吉の保守的なスタイル(母を思う気持ち)とは違った環境であり、当時は反モラル的とされた同性愛を短歌という象徴性の中に潜ませる。だから折口信夫という戒名(死者に名付けられた)釈迢空で歌人という仮面をかぶりながら短歌を構築していく。そこは三島由紀夫の小説と近いものを感じています。

電子書籍金田一京助『新編 石川啄木 』でも石川啄木は最初幻想的な散文で物語を書いていた。それが短歌の韻律に目覚めて突如として書き連ねていくことになる様が述べられている。啄木はすでに学生の頃に短歌をつくっていたのですが、そこではまだ後の啄木調には至らない。節子との恋愛、さまざまな女性遍歴や浪費癖の果に、貧しくなっていく。そこで一気に才能を開花させるのだが、世間には認められない。それは小説家の世界で認められようとした。啄木の中で詩歌は一段低く見られていて、小説化にするための題材に過ぎなかった。

こんな感じで次々読書が広がってしまうのです。最近は小説より短歌本が多いのですが、そうだ『失われた時を求めて』は今月中に読みたいと思っていたのに読めなかった。

あと『ドイツ名詩選』からゲーテの詩。このへんがロマン主義の詩で古典から引っ張ってくるものが多いです。「プロメテウス」とか「魔王」はドイツのメルヘンかな。それらが歌曲となって芸術が拡散される。シューベルトの「魔王」が好きなんです。

あとNHKの聞き逃しで「ウィークエンド・サンシャイン」を聞いて月曜日の嫌な気分(毎日が日曜なんですがトラウマですかね)を土曜の朝に変えて、ビートルズの未発表録音の「リヴォルヴァー」特集を聞いてました。ほとんど聞きながら眠ってしまうのだけど、地震で起きた。

そんな自分に反省を込めて、夜には『パスカル『パンセ』を楽しむ 名句案内40章』を読み始めました。『パンセ』から一句作りました。

初冬や『パンセ』読む夜(よ)葦である

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