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子供の表現の豊かさの理由はオノマトペにあるのかも

『言語の本質-ことばはどう生まれ、進化したか 』今井 むつみ , 秋田 喜美 (中公新書 2756)

日常生活の必需品であり、知性や芸術の源である言語。なぜヒトはことばを持つのか?子どもはいかにしてことばを覚えるのか?巨大システムの言語の起源とは?ヒトとAIや動物の違いは?言語の本質を問うことは、人間とは何かを考えることである。鍵は、オノマトペと、アブダクション(仮説形成)推論という人間特有の学ぶ力だ。認知科学者と言語学者が力を合わせ、言語の誕生と進化の謎を紐解き、ヒトの根源に迫る。
目次
第1章 オノマトペとは何か
第2章 アイコン性―形式と意味の類似性
第3章 オノマトペは言語か
第4章 子どもの言語習得1―オノマトペ篇
第5章 言語の進化
第6章 子どもの言語習得2―アブダクション推論篇
第7章 ヒトと動物を分かつもの―推論と思考バイアス
終章 言語の本質

俳句や短歌で表現の幅を広げるのにオノマトペの活用を言われるのだが、なかなか難しいと思っていたら、この本には詳しく出ている。言語学の本だがオノマトペのレトリックの本としても使える。

英語には擬音系のオノマトペしか無いというのは知らなかった。また日本語のオノマトペはそこから副詞になったり「する」を付けて動詞化したり表現が幅広い。

例えば英語のlaugh(笑う)の細かい分類にオノマトペを使い、chuckle(クックッと笑う)やgiggle(くすくす笑う)などと表現できるとかオノマトペで細分化できるのも面白いと思った。

幼児の言語の認識でもオノマトペは役立ち、それが普通の言葉になっていくまでの認識の仕方とか興味深い。幼児がある日一気に言葉を理解する仕方とか語学レッスンに役立ちそうな話題も。

また言葉は文化なので線で結びつけようとしても駄目で面というような一つの言葉から一つの意味だけではなく多様な意味を持つようになるというのは、なるほどと思う。幼児が数少ない言葉を組み合わせて多様な表現をするようになるなど、またその言葉を間違って認識してしまうとか、興味深いものがある。例えば一つの言葉で一つの意味しか受け取れないとコミュニケーションの齟齬が起きたりする。行間が読めない人というのは、言葉を線だけでしか考えていないので固定した意味でしか受け取れないのだ。喩えが通じなかったりするのはよくあるような。

また翻訳の問題も厳密さばかり求めることが必ずしも正しいとは言えない。例えば詩には多様な象徴性が含まれているので直訳すれば意味が通じるというものでもない(その背後に文化がある)。ポーの詩をボードレールやマラルメが読み取っていくのも英語が得意だからということでもないのだ。詩のような言葉は本来言葉に出来ない感情を比喩やら象徴で語っているので言葉通りに訳しても伝わらないものがある。音律とかは言語化できないものもあるのだ。

AIが身体的な感情を読み取るのもデーターによるものであり、そこから創造的なものを創るのは難しいとされている。ただ人間の方がAI化されていくのかもしれない。身体的な感覚は使わないと衰える。子供は遊びながら言葉も覚えるのも身体的ものと関係しているという。


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