ゴーゴリのメタフィクション・ホラー・ミステリー映画
『魔界探偵ゴーゴリ 暗黒の騎士と生け贄の美女たち』『魔界探偵ゴーゴリII 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚』『魔界探偵ゴーゴリIII 蘇りし者たちと最後の戦い』(2018/ロシア/107分)監督:イゴール・バラノフ アレクサンダー・ペトロフ(ゴーゴリ役)、オレグ・メンシコフ(グロー役)、セルゲイ・バディク(ヴァクーラ役)
三部作だけどゴーゴリに興味がある人意外は三作目を見れば十分だと思う。一作目と二作目はちょっと分かりにくく、三作目の最初に粗筋を紹介してくれるので、いきなり三作目を観るのもありだと思う。すでにゴーゴリは死んでいるのところから始まるのだが。
ゴーゴリはディカーニカ村出身でセイントペテルブルグでロシア的なキリスト教徒になっている。ウクライナのディカーニカ村は辺境で異教徒のいる習慣があり、それが各月における祭なのだがその日に殺人事件が起きる。
キリスト教から見た異教徒の村というのは遅れた文化をもっているという感じなのは、日本の柳田国男が『遠野物語』で語った民話のような話がゴーゴリの描いた『ディカーニカ近郷夜話』というウクライナの民話集なのだが、それをダークミステリー仕立てにしたのが、この映画。『遠野物語』を金田一シリーズの『八ツ墓村』にしたようなミステリー・ホラー映画になっているのだ。
ロシアのエドガー・アラン・ポー(1809年1月19日 - 1849年10月7日)というのは間違いで、エドガー・アラン・ポーがアメリカのゴーゴリ1809年4月1日(ユリウス暦3月20日) - 1852年3月4日(ユリウス暦2月21日))なのだ。
この映画はゴーゴリの喜劇的な饒舌な騙りはなくてエドガー・アラン・ポー仕立てだが。それでホラー的な物語を強調するから前半はハイウッド物のホラー映画のモノマネ映画のように思えるのだが、最後まで観るとこの映画がゴーゴリの作家としての成功を描いたメタフィクションになっていることがわかるのだ。プシーキンが最後出てきていいとこ取りをしたり、ゴーゴリは作家になるためにアル中で(これもポーだな)幻想に憑かれながら『ディカーニカ近郷夜話』を書き上げるのだが、それが成功して大作家となったようなストーリーで面白かった。基本、ホラー映画で魔女(水の精ウンディーネに似ている)や暗黒騎士(悪魔)が織りなす壮大なドラマなのだが、魔女の話が姉妹の過去の王女の面白かった。姉妹がそれぞれ魔女と悪魔になるのだが。その二人に愛されてしまう魔界探偵がゴーゴリという設定なのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?