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第二部は迷宮の「ファウスト」

『新訳決定版 ファウスト 第二部』ゲーテ,ヨハーン・ヴォルフガング【著】/池内 紀【訳】 (集英社文庫)

雄大な自然のなかで自責の念から蘇ったファウストは、皇帝の城、古代ワルプルギスの夜、ヘレナとの家庭生活、皇帝軍と反乱軍の合戦、海辺の領地での干拓等、大宇宙の生命の諸相を体験する。やがて人生の“夜ふけ”を迎えたファウストは見えない目で自分の大事業を見とどけようとしながら、思わず「時よ、とどまれ」と口にする。死んだファウストの魂が、天使たちと“かつてグレートヒェンと呼ばれた女”の導きで聖母マリアの許に救済される。

ゲーテの錬金術は言葉(詩)によって世界を構築する。それは悪魔主義的なギリシヤ神話の劇詩のパロディなのか。ゲーテの後期の知識の集大成であるという。解説にそのプロセスが紹介されているのでそれを参考にして読むのが理解が早い。いきなり王宮での劇になり悪魔総登場という感じになるので面食らう。

ただゲーテのギリシヤ悲劇の知識は直接ギリシヤ神話を読んで知っていた方が面白いかも。登場人物の名前からそれらのギリシヤ悲劇が連想される。ヘレナはホメロス『イリアス』の登場人物だという(エウリピデスの「トロイアの女たち」)。

第一部マルガレーテに変わる美の象徴と成っている。そうした錬金術は最後は崩壊していく物語にキリスト教的な教義がある。錬金術は現在ではマネーがなんでも作り出しうるというような状況なのかもしれない。ホムンクルス(人造人間)の話は人口知能と読み得るような現代性がある
。まさにゲーテの時代はそうした錬金術的な経済理論が支配していたという(それは現在に通じるのかもしれない)。「ファウスト」という最初の錬金術を持った人物の悲劇として、劇が語られているのだった。

古典的ヴァルプルギスの夜



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