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形式張った儀式は苦手だが、映画はエロスがある。

『儀式』(ATG/1971)監督大島渚 出演河原崎建三/中村敦夫/佐藤慶/小山明子

大島渚が戦後25年を総括する意味を込めて世に問うた野心作。敗戦後の日本を舞台に、家父長制度の中で生きることを強いられた若者たちの苦悩を描く

難解と思われている大島渚監督ですが、この映画のテーマはわかりやすいと思います。ただ人間関係がちょっと複雑な感じですか?シェイクスピアの劇のような、時代劇を家庭劇として描いています。

父親(祖父だった、佐藤慶)世代の戦争責任を総括した映画で、葬式、結婚式、葬式と日本の儀式を見せることで、混乱した家父長制の家族関係に終止符を打とうした映画。その根っこは家父長制があるのだが、満州男(みつお)という弱い男を通して見せる映画。

満州男の記憶に満州引き揚げ時に弟を生き埋めにして置き去りにした過去があり、日本に帰ってから地面に耳を宛て弟の声を聴く。そのシーンが印象的なのだが、映画は家庭劇で、当時は観念的な映画だったかもしれないが、今見るとけっこう笑えるシーンもある。満州男が弱すぎる。あと近親相姦ものエロスを描く。

叔母さんが小山明子でお祖父さんの愛人が生んだ妾の子供だった。なおかつ、お祖父さんと性的関係(ほとんどレイプ)を持つ。さらに満州男は、叔母さんが好きなのだが、従兄弟?の中村敦夫が先に叔母さんと寝てしまう。そしてある日、叔母さんが祖父に殺される(自殺説も?)。満州男は悲嘆に昏れる。この三角関係が複雑なのだが(このへんはATGのエロスと暴力路線)、戦後世代の二つの方向を示している。

中村敦夫の立派すぎる青年とダメダメな満州男(戦後民主主義みたいな)。そして。中村敦夫が祖父を殺して、自決する(三島由紀夫説があるそうだがそうかもしれない)。満州男の妻も中村敦夫の後を追い自決する。どうしようもなく残された満州男という構図。武満徹のBGMがハマる。ハマらない人もいるようだが。「エロスとタナスト」を描いて、そのへんで好き嫌いが分かれる映画。


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