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ヤジを排除する社会にやってくる世界

『ヤジと民主主義 劇場拡大版』(2023年/日本/100分)制作・編集・監督:山﨑裕侍

小さな声は、何を暴いたのか!?
「メディア」の眼前で起こった「市民」「権力」「政治」を巻き込んだ、あの“ヤジ排除問題“に迫る緊迫の1460日。

2019年7月15日、それが全ての始まり。安倍首相(当時)の演説時に「安倍やめろ!」という男性の声が響き渡った。ヤジである。政権批判の声を上げた直後に、突如数名の警察官が男性を取り囲み、その場から排除。一瞬の出来事だった。同じ頃、増税反対を訴えた女性も警察官に囲まれ引きずられるように移動させられたり、女性が現場を離れた後もしつこくつきまとわれたりした。
声を出して政権に訴えることに対して、どういう法的根拠があり警察は「排除」する行動を取ったのか?いったい何が起きているのか?この日の小さな出来事が、警察組織の問題を浮き彫りにした。
これは、北海道放送報道部道警ヤジ排除問題取材班が追求し続ける4年間に渡る記録である。そして彼らはこの問題を追い続けている。現在進行形のライブ・ドキュメンタリー映画である。

第57回 ギャラクシー賞 報道活動部門、第63回 日本ジャーナリスト会議 JCJ賞、第40回 「地方の時代」映像祭賞、第58回 ギャラクシー賞 テレビ部門、第45回 JNNネットワーク 協議会賞など数々の賞を受賞してきた「ヤジと民主主義」。

ヤジというのはけっして歓迎されるものではないが、それを排除するのはもっといけないことだと理解する映画。

まず公道の演説でヤジを飛ばすというのは、当たり前のようにあることで、それを演説で黙らせるのが自由民権運動からのスタイルだったはずだ。ヤジも利用して客を惹きつけるのがそれまでの政治家だったはずだ。それを公共の場で警察が取り締まるということは、本来あってはならないことなのだ。

一審は全面勝訴だったが控訴され、二審では男性のヤジの人は敗訴で女性は勝訴だった。男性の裁判の場合、警察は男性が自民党員から暴力を受けたから男性を安全な場所に引き離したと言っているのだが、普通は暴力をしたほうを逮捕するなり隔離するなるするだろう。それをしないで、自民党員の者が時効になった時点でビデオを公開するとか、明らかに異常な裁判であることが明白であった。まあ、日本の裁判も権力者の言いなりというのは最近感じることだが、この国は三権分立なんて絵空事のように思える。

デモも妨害する右翼側を警察が守ったりしているのだから、つくづくこの変な国になってしまったという印象だ。そういう意見を取り締まる結果、最終的には暴力で訴える輩が多くなったという印象を受ける。それは世界全体に言えることだが、権力を持つ者が暴力で支配する世界になっているのだ。

自由に発言できない国がどうなるかは世界情勢を見ていれば分かるだろう。日本の自由がけっして未来も約束されたものではないのだ。


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