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「アンダーグラウンド・オーケストラ」を観た

ペルーのイメージは、「コンドルは飛んでいく」でしょうか?南米というのは理解しているのですが、その文化となるとアルゼンチンとかチリとか区別がつかない。アンデス山脈なんだろうと思いますけど。


大まかに言って南米の市民運動の挫折があるのです。チリの70年の左派政権を潰そうとアメリカCIAが軍事政権に肩入れして軍事クーデターが起きる。南米の各国で独裁右派政権が出来ていくのは、それぞれの国がCIAによって訓練されたからと言われています。キューバに共産国が出来てしまったので、南米の利害関係を失うことはアメリカの驚異なのです。そうしてヨーロッパに難民が逃れていく。

この映画を撮った監督エディ・ホニグマンもペルー生まれですがオランダで市民権を取って映画監督としてデビューしたようです。パリで学んだようです。そういう経緯もあって、この映画ではパリの地下鉄で演奏するストリート・ミュージシャンを映します。彼らが移民(難民)となった経緯や生活の困難をインタビューするのですが、母国にはもっと酷い仕打ちが語られる。

南米だけではなく、90年代の終わりにあったボスニア内戦から逃れてきたユーゴスラビアの音楽一家。自由を求める闘いがナショナリズムに翻弄されていく中で自分の好きな音楽が演奏できなくなった。演奏家一家は、友達を集めてパリのストリートで演奏する。それでも彼らは恵まれているのかもしれない。家族でパリに住んで息子さんは音楽教育を受けられる。その息子さんがロックのほうに関心を寄せているのは父親の悩みであるようですが。

パリの地下鉄で演奏する移民たち。それぞれの祖国での事情を通して亡命してもなお故郷を思わずにいられない彼らの音楽について語る。映像は荒いんだけどかえって臨場感が伝わってきた。「リベレーション・ミュージック・オーストラ」地下鉄版。

南米からのミュージシャンは、地下鉄で演奏をする。そこが唯一の稼げる場所だからなのか、法的には禁止されているのですが、まさに「アンダーグランド・ミュージック」です。南米国家は警察の取締で連帯しているのだそうです。拷問のやり方とかCIAが伝えたのだろうと思います。その弾圧を逃れてパリで自由を求めて演奏する。

最後のアルゼンチンで拷問されて指を潰されたピアニスト、ミゲル・アンヘル・エストレージャのインタビューは忘れることが出来ない。

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