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白い顔の中の人が怖い感じの映画だった

『マルセル・マルソー沈黙のアート』(2022年/スイス=ドイツ)【監督】マウリッツィウス・スタークル・ドルクス 【監督】マウリッツィウス・スタークル・ドルクス 【キャスト】マルセル・マルソー,クリストフ・シュテルクレ,アンヌ・シッコ,カミーユ・マルソー,オーレリア・マルソー,ルイ・シュバリエ,ロブ・メルミン,ジョルジュ・ロワンジェ,ダニエル・ロワンジェ

「パントマイムの神様」と称されるフランスのアーティスト、マルセル・マルソーの真実に迫ったドキュメンタリー。

ボロボロのシルクハット姿に白塗りメイクをほどこした道化師のキャラクター「ビップ(BIP)」で世界的に知られるマルセル・マルソー。言葉を発さずに身ぶりや表情のみですべてを表現する彼のパフォーマンスはどのようにして生まれたのかを、豊富なアーカイブ映像を織り交ぜながら描き出す。

さらに、第2次世界大戦中にマルソーとともにレジスタンス運動に身を投じた従弟、パフォーマンスアーティストとしてマルソーの遺志を継ぐ3世代の家族、ろうの世界的パントマイマーであるクリストフ・シュタークルの証言などを通し、さまざまな角度からマルソーの人物像とパントマイムの真髄を解き明かしていく。

マルソーよりもマルソーの影響を受けた人たちにスポット当て彼の偉大さを称えるというような映画。いささか神のように崇めるだけで批評精神はないかな。ただマルソーの孫という人は実際にマルソーのパントマイムを観たわけでもないのに、マルソーの後継者という見方をされてもがいていた姿が印象的だった。いっそうそっち側の映画にしてみたほうが良かったかもしれない。

なにより一つのエピソード、ユダヤ人として、ユダヤの子供たちを国外へ逃すためのレジスタンスとして、パントマイムをして子供たちを安心させたという。これは『沈黙のレジスタンス』という映画にもなっていた。

なんかパントマイムが芸術にまで昇華されてしまうとエンタメ性を失っていくような気がする。肉体芸という過酷さが透けて見えるのだ。勿論それは偉大なことではあるのだけど、道化師が化粧の下の顔は怖い人だみたいなイメージかな。舞台裏はあまり明かさない方がいいと思った。

そういうわけでマルソー自身よりも影響を受けた人の証言で固めたのかもしれない。まあ家族的な興行師というような感じを受けたかな。もう少しパントマイムのレッスン風景とか実際のパントマイム(マルソー以外でも)を見て見たかった。聾唖の人とかアルツハイマーの患者たちとか重い感じがしてしまうのだ。志村けんのようなバカ殿様的な絵があってもいいのかもと思った。志村けんもコメディアンが素顔の時は怖そうだけど。そういうのを見せるのはもっと工夫が必要だと思う。

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