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増幅するキリスト教(キリスト関連本まとめ)

キリスト関連本をまとめました。かつて読んだものと読みたい本など。おすすめ本があったら教示願います(専門書よりは新書の範囲でお願いします)。

『ふしぎなキリスト教』橋爪 大三郎 (著), 大澤 真幸 (著) (講談社現代新書 – 2011)


キリスト教がわからないと、現代日本社会もわからない――。
イエスは神なのか、人なのか。
GODと日本人の神様は何が違うか?
どうして現代世界はキリスト教由来の文明がスタンダードになっているのか?
知っているつもりがじつは謎だらけ……
日本を代表する二人の社会学者が徹底対論!

アニメ『フランダースの犬』を観るのにも参考になるところが多い。ネロとパトラッシュがキリストの絵の中に昇天していくラストは、来世の救済で、この世は受難ばかりなんだ。ローマ・カトリックがラテン語しか認めなかったから庶民には聖書が読めなかった。だから教会の力が強く、そこから庶民にも分かるようにと音楽や絵が発展していく。そしてルターのドイツ語の翻訳が革命だったのは庶民も聖書が読めるようになったからなんだね。(2011/01/01)

『仁義なきキリスト教史』架神 恭介(ちくま文庫 – 2016)


おやっさん、おやっさん、なんでワシを見捨てたんじゃ~!」(エリ・エリ・レマ・サバクタニ)―イエスの絶叫から約二千年、人類の福祉と文明化に貢献したキリスト教は、一方できわめて血なまぐさい側面を持つ。イエスの活動、パウロの伝道から、十字軍、宗教改革まで、キリスト教の歴史をやくざの抗争に見立てて描く、一大歴史エンターテインメント!

イエスが極道になったインパクトは衝撃だし面白い。ほんとそれほど違和感もなく読めてしまう。最初は『仁義なきキリスト教史』もイエスというアンチヒーローが突出していたのか、続く章では極道も小粒だよね。小賢しいというか。豪快さが。そのへんがちょっと飽きてくるのは映画『仁義なき戦い』シリーズもそうだった。全面戦争となる第七章「第四回十字軍」は非道さがヤクザ以上に凄い。(2014/06/12)

『異端の時代――正統のかたちを求めて』森本あんり(岩波新書– 2018)


世界に蔓延するポピュリズム。はたしてそれは民主主義の異端なのか? 古代中世の神学史、丸山眞男らの議論を手がかりに、宗教・政治・文化に通底する「異端発生のメカニズム」を解き明かし、混迷する時代の深層に迫る。著者が十年来抱えたテーマがここに結実、「異端好みの日本人」に、現代の「正統」の所在を問いかける

けっこう読むのに難儀だったのはキリスト教の話が大部分だったからかな。ポピュリズムとトランプに出現によるアメリカ民主主義の危機。丸山眞男の日本の「正統と異端」論。天皇制を視野に入れているのだと思うが日本会議の天皇制は「異端」だろうとか?そこまでは踏み込んでいない。絶えずキリスト教とアメリカのポピュリズムの廻りをぐるぐるして核心に触れないところでの「正統」の話。キリスト教を巡る話もそういうことだった。異端の出現に正統を顧みる。

正統は、その全体像を明示的に名指しして定義することは出来ない。その代わりに、正統でないものを特定して否定し、その最大外周を指し示すことで、はじめてその内容を薄明かりに中に浮かび上がせることができるだけである。これに対して、異端はピンポイントで特定部分に光を当てる。異端はみずからその部分を選び出し、これを焦点化することによって異端となっているからである。
つまり、正統は「~である」と定義されるのではなく、「~でない」と定義される。Aではなく非Aと定義され(略)、A以外であればBCDEFG...のうちどれが正統であるか定めない。Aでない限りすべてが正統なのである。」(森本あんり『異端の時代』)。

中森明菜「少女A」は異端で、「少女非A」の松田聖子が正統アイドルとなったはそういうことか?(2018/10/03)

『熱狂する「神の国」アメリカ 大統領とキリスト教』松本 佐保(文春新書 – 2016)


キリスト教信者は大統領をどう選んできたか
宗教票の争奪戦といわれる大統領選。狂信的な福音派の影響力、最大の浮動票・カトリックの変遷。2016年大統領選を占うのに最適な一冊!

アメリカがどっぷりキリスト教に浸かっているのがよくわかる本。今回の選挙(2016年大統領選)で思い知らされたわけだけど、都市部のアメリカ(ニューヨーカー)しか見てなかった。ピューリタンがイギリスから新大陸に逃れてきたことを思えば当然なんだけどそういう歴史に疎かった。資本主義がマックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』というのはアメリカのことだった。プロテスタントは、教会より「聖書」の言葉を信じる。福音派はメディアを利用して拡大していった。原理主義は今ではイスラムのことだけど、よりカルトなプロテスタント。

トランプが勢力を伸ばしたのは福音派の宣教師を味方に付けたから。福音派の宣教師より保守的な思想、中絶や同性愛反対など。ビリー・グラハムとか。その繋がり。アメリカは広大だから車がなければ行き来できない。そうしたコミュニティとしての場として大教会はエンタメ化していく。上手く資本主義と結びついているのだった。まあ、日本人も知らずに神社や寺と結びついている。最近では、クリスマスやハロウィンは外せないしね。キリスト教は反共産主義ということもあるのだった。

ヨーロッパからユダヤ人が新大陸に逃れるに従って(ナチスの弾圧)、カトリックの勢力が伸びてくる。イタリアやポーランドからも移民が増える。その前はアイルランド。カトリックが注目されてきたのは、そうしたユダヤ勢力とプロテスタント勢力の仲介としてか?ケネディは、マフィア(イタリア・カトリックなのだ)の繋がりとか。それとシオニズム。だからバイデンもイスラエル支持者なのだろう。大統領宣言のときは「聖書」共に牧師が側にいる。(2020/10/07)

『天使とは何か キューピッド、キリスト、悪魔 』(中公新書– 2016)


エンジェルとキューピッドは同じ? キリストや悪魔は天使だった? キリスト教美術に登場する天使たちを追いながら、その正体に迫る

西洋の芸術(教会美術)から天使の受容のされ方を見ていく評論。天使が神と人との仲介役であり、言語(ロジック)よりも芸術(アナロジー)に描かれるように、異端的なディオニュソス(ダイモン)で初期キリスト教ではイエスも天使とされた。天使(異端の神々)がやがて人間の女の誘惑に負けてタイタン(巨人)を生み出す。つまり欲望で地に堕ちたということらしい。だから堕天使なんだ。それでも上級天使の熾天使(セラフィム)や智天使(ケルビム)は神の使命を果たした。ミルトン『失楽園』とか、マリアの受胎を告げたのがミカエルとか。

ハルモニア(調和)が『パイドン』でソクラテスで否定されたのはそれが欲望だからか。中世になると教会音楽として合奏されるようになっていく。その頃の教会美術にも天使が楽器を持つようになる。そのうちに堕天使がメランコリーや狂気の歴史に囲まれていく。それは神との中間領域に棲まう堕天使、クレーの天使(ベンヤミン)や『ベルリン天使の詩』の天使なのだ。

ミルトン『失楽園』は堕天使の「自由意志」と受け取ることも出来るのだ。神のロゴスに叛逆する天使。その関係でユダや魔術師シモンも悪魔の使いだとされるが、それはキリスト教(パウロのロゴス)から見た場合。その異端思想がグノーシスとかに繋がって、芸術の幻視者(異端者=詩人たちの天使)が出てくるということだった。(2021/02/02)

古典的なキリスト教神学者

『アウグスティヌス「心」の哲学者』出村 和彦 (岩波新書)


『トマス・アクィナス――理性と神秘』山本 芳久 (岩波新書)


『マルティン・ルター――ことばに生きた改革者 』徳善 義和(岩波新書)

『神秘主義 キリスト教と仏教』鈴木 大拙 (著), 坂東 性純 (翻訳), 清水 守拙 (翻訳)


関連書籍

『神曲』ダンテ

『失楽園』ミルトン


『パイドン』プラトン

『マタイ受難曲』礒山雅

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』マックス ・ヴェーバー

『キリスト教の合理性』ジョン・ロック著、加藤節訳

『ジョン・ロック―神と人間との間』加藤 節

『カラマーゾフの兄弟』ドストエフスキー

『ぼくはいかにしてキリスト教徒になったか』(内村鑑三/河野純治 訳)

『沈黙』遠藤周作




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