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阿部サダヲはアンソニー・ホプキンスだった

『死刑にいたる病』(日本/2022)監督白石和彌 出演阿部サダヲ/岡田健史/岩田剛典/中山美穂/宮崎優/鈴木卓爾

解説/あらすじ
理想とは違う大学に通い、鬱屈した日々を送る雅也に、ある日届いた1通の手紙。それは、世間を震撼させた稀代の連続殺人事件の犯人・榛村からのものだった。24件の殺人容疑で逮捕され、そのうちの9件の事件で立件・起訴、死刑判決を受けた榛村は、犯行を行っていた当時、雅也の地元でパン屋を営んでおり、中学生だった雅也もよくそこに通っていた。「罪は認めるが、最後の事件は冤罪だ。犯人は他にいることを証明してほしい」。榛村の願いを聞き入れ、雅也は、事件を独自に調べ始める。そこには想像を超える残酷な事件の真相があった――。 櫛木理宇の小説「死刑にいたる病」が映画化。

前作『孤狼の血 LEVEL2』で日本アカデミー賞監督の白石和彌監督。それよりも面白かった感想です。

なによりも阿部サダヲの演技ですね。彼の代表作になるかもしれないサイコパス映画。『羊たちの沈黙』に似ているのかな。刑務所の中にいて人を操るという。人たらしの殺人犯。

櫛木理宇の原作が面白いのだと思う。刑務所の中にいて人を操るというのはないわけではないが、犯罪心理学に長けてないとなかなか辻褄が合わないと思う。コリン・ウィルソンとか書棚に出てくるので、なるほどと思わせる。それとキルケゴーレル『死にいたる病』の題名を思わせる哲学的な雰囲気。サイコキラーという知能犯は、激情型ではない、今の日本映画はすぐに泣いたり怒ったりするが、そういうタイプではなく哲学的タイプ(見せかけだけかもしれないが)。犯人と被害者(犯人との面接者)との境界性。境界例の映画なんだよね。

白石和彌監督はヴァイオレンスが得意。このえいがでも拷問シーンは目を背けたくヤバさだった。爪を剥がすシーンは、度々拷問シーンで出てきたがその残虐性と言ったら。そして、綺麗な爪がモチーフの一つになっている。ネイルアートとかの対極ですね。そういう綺麗なものに悪意を感じているのかもしれない。犯人はそうですよね。

その剥がした爪を川に流すシーン。それが叙情的なんだけど桜の散る様を連想させる。

脇役の中山美穂も懐かしかった。こういうふけ役やるようになってしまったのだ。美穂ちゃんも。岡田健史も良かった。


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