「終わりよければすべてよし」
『ラヴ・ストリームス』(1984年/アメリカ/141分)監督・脚本:ジョン・カサヴェテス 出演:ジーナ・ローランズ、ジョン・カサヴェテス、ダイアン・アボット、シーモア・カッセル
「ジョン・カサヴェテス・レトロスペクティブ」4本目だった。これがカサヴェテスの遺作だったのか。今回初めて見たような。
過剰に愛するあまり狂気的になっていく姉弟を描いているのだが、ここでもジーナ・ローランズの演技に惹かれてしまう。ジーナ・ローランズが演じるのは狂気の人なんだけど愛おしく思ってしまうのは、それが過剰な愛ゆえなんだと知る。まさに「愛の嵐」なのだ。
ラストの嵐のシーンのミュージカル風なのは、レオス・カラックス『アーネット』を連想した。喜劇的なのはシェイクスピア劇の『テンペスト(嵐)』なのだ。「終わりよければすべてよし」
弟役をカサヴェテス本人が演じるのは、作家だけど女に囲まれて「酒と薔薇の日々」というような生活を送っている男。息子だと言う子供を連れて愛人がやってくるのだが、その子供を男に預けていく。どうしよもない父親なんだが、父と子は反目し合うものと勝手な理由を付けるが、最後は息子と仲良く酒を飲んでいる。その展開も謎だが、けっして教育上良くないシーンではあるな。
反目する子供といえばジーナ・ローランズの姉夫婦も離婚して娘に愛想をつかされる母親だった。姉弟して似ているのだが、それは愛が過剰な上ということがわかってくる。その最たるものがこの姉弟愛なのだが、動物を買ってくるとか理解を超えている。これも「ノアの方舟」とかのパロディというような。家は船のように彼らに取って安全な場所なのだが、それさえも嵐に襲われ破壊されていく。わがままな山羊というのがいい。
妄想の中にホラー的な要素もあり映画としても楽しめる(こういう映画を楽しめるのは一部の人かも知れないが)。プールでのパーティーグッズで夫と娘を楽しませようとするジーナ・ローランズには涙が出てくる。そして見事にプールへダイブする。水の象徴は、『あらし』の雨もそうだが、過剰な愛というような。それでもこれは喜劇なのだ。家庭内喜劇の愛の悲劇。