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読書日記

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2023年11月の記事一覧

絶望した中で新たなものを生み出していく新世代の作家への祈り

『「新しい時代」の文学論: 夏目漱石、大江健三郎、そして3.11後へ 』 奥憲介(NHKブックス 128…

やどかり
6か月前
26

ポーを読む

『ポオ小説全集 1』エドガー・アラン・ポオ , (翻訳) 阿部 知二(創元推理文庫 522-1) 『ポオ…

やどかり
6か月前
12

リチャード三世は悪の王か、それが問題だ

『シェイクスピア全集 (7) リチャード三世』松岡 和子 翻訳 (ちくま文庫) 映画『ロスト・キ…

やどかり
6か月前
11

欲望表現としての邪鬼

『邪鬼の性』水尾比呂志/(写真)井上博道 ポーの作品を読んでいた時に「邪鬼」というものに…

やどかり
6か月前
17

クリスマス・キャロルを読んでクリスマス気分

『クリスマス・キャロル』ディケンズ, (翻訳) 池 央耿(光文社古典新訳文庫) アリ・スミス『冬…

やどかり
5か月前
6

喜劇的なものについての分析

『笑い』ベルクソン,アンリ/【訳】増田 靖彦(光文社古典新訳文庫) エドガー・アラン・ポー…

やどかり
6か月前
12

チェーホフ劇のようなクリスマス家庭劇

『冬』アリ・スミス/著 、木原善彦/訳(新潮クレスト・ブックス) イギリスのブレグジット(分断社会)を扱ったクリスマス・ストーリー。コーンウェル(アーサー王伝説の保守的地域)に住む母の家でクリスマスを開くためにアート(アーサー)は妻と喧嘩状態の為に代わりを移民の女子に代用してもらって訪ねるのだが、保守的な母とは正反対の反権力運動好きの母の姉も久しぶりに集まってのクリスマス。チェーホフの家庭劇のような会話劇に過去のエピソードを絡ませながら物語が進んでいく。過去のエピソードが絡

悲劇は感情を揺さぶられるが

『死と乙女』アリエル・ドルフマン, (翻訳)飯島 みどり (岩波文庫 赤N790-1) 思い出さなけれ…

やどかり
6か月前
18

虚実皮膜という境界性を描く泉鏡花

『菊あわせ』1932(昭和7) 泉鏡花の幻想文学というか怪談話。それも秋の怪談というのが珍し…

やどかり
6か月前
12

モダンガールとしての左川ちか

『左川ちか: モダニズム詩の明星』(編集)川村 湊 , 島田 龍 左川ちかブームの入門書的な本。…

やどかり
6か月前
30

理性よりも野生の思考

『黒猫/モルグ街の殺人』ポー,エドガー・アラン【訳】小川 高義(光文社古典新訳文庫) 他…

やどかり
6か月前
17

大江健三郎を読む

『個人的な大江健三郎』(初回放送日: 2023年11月11日/ ETV) ETV特集『個人的な大江健三郎』…

やどかり
6か月前
27

ポーは文体七変化だから読みにくい。

『ポー名作集』エドガー・アラン・ポー【訳】丸谷 才一(中公文庫) Netflixでドラマ『アッシ…

やどかり
6か月前
9

芭蕉の精神論ではなく表現論としての俳句とは何か?

『芭蕉の表現』上野洋三 図書館本なので、とりあえずまとめ的な感想。 この本は文芸批評を作品を読み込むことで解釈しようとする作品論であり、多くは芭蕉の人となりを解釈に加えていく作家論になっている。それは芭蕉の弟子たちが芭蕉を崇拝するあまりに芭蕉の言葉以上のものを補って解釈していく。 例えば『おくのほそ道』が観光地化され、それまでの解釈を検証することなくただ紹介している本が多すぎるという。『おくのほそ道』は巡礼とも言うべき俳文であるのだから、古典の枕詞を読み込んで学術的に解