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理性よりも野生の思考

『黒猫/モルグ街の殺人』ポー,エドガー・アラン【訳】小川 高義(光文社古典新訳文庫)

推理小説が一般的になる半世紀も前に、不可能犯罪に挑戦する世界最初の探偵・デュパンを世に出した「モルグ街の殺人」。160年の時を経て、いまなお色褪せない映像的恐怖を描き出した「黒猫」。多才を謳われながら不遇のうちにその生涯を閉じた、ポーの魅力を堪能できる短編集。
目次
黒猫
本能 vs.理性──黒い猫について
アモンティリャードの樽
告げ口心臓
邪鬼
ウィリアム・ウィルソン
早すぎた埋葬
モルグ街の殺人

他とダブったのは飛ばして、Netflixドラマの「告げ口心臓」が読めたのは良かった。ドラマでは移植した心臓が闇医療を語るという展開で原作よりも面白かった。

ポーは推理小説というような理性で解決していくのではなく、自然の邪神的な力によって滅んでいく人間を描いている。それが昨今のホラーブームで理性で解決できないことが邪悪な霊的なものとして出てくるのだが、自然の力による審判を受けるのだった。動物による審判に『黒猫』や『大鴉』。

『ウィリアム・ウィルソン』は分身譚で人間の闇の部分が分身によってあきらかにされ、最後は鏡に映る姿となる。ポーの恐怖心はアル中や薬中が見せる幻影であり、現代にもマッチしてくる。この形は日本の小説もあるような。太宰治の「大庭葉蔵」を分身として闇を語らせた私小説とか。私小説が闇の部分を語るのはそういう分身しての己か。


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