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【辞書、のような物語。】

明川哲也、戌井昭人、大竹聡、タイム涼介、田内志文、西山繭子、波多野都、藤井青銅、古澤健、森山東(2013)「辞書、のような物語。」大修館書店
を読みました。

辞書がすきです。

知りたいことが何でもこれに書いてあるんだ。(99頁)

このことばどおり、辞書は世界です。
さまざまな物の名前、何気なく使っていることばの意味。
ひとつの項目を引き、そこから連鎖して別の項目へ、知の体系を彷徨う感覚がすきです。

物として重みを感じることができる紙の辞書も、森羅万象をすっと持ち歩くことができる電子辞書も、どちらも愛しています。

そんな大好きな辞書をモチーフに書かれた小説集です。
好きでないわけがありませんでした。
大修館書店から出ているというところ、表紙の色、書体、小口のデザイン。
すべての要素がこころをときめかしてきました。

語釈を書くとき、客観的にその意味を掬い取らねばならないのでしょうが、そこにどうしても、どのように表現をするかという、編集者のみかたが関わってくると思うのです。

「レネの村の辞書」のように、ひとりの少女が書いた「辞書」は、その少女を通して見た「世界」です。
このように、自分で辞書を作ってみるとおもしろいだろうなと思いました。
ほかのひとが書いた「辞書」も読んでみたいです。きっと、似ているひとはいても、ほんとうに同じように「世界」を見ているひとはこの世に存在しないでしょう。
そのことが寂しくもあたたかい気がします。

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