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キャットタワーのある家 #6 かくれんぼ
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ある日、洗面台の最下段の引き出しが開きっぱなしになっていたのを見て、「あれ?こんなところ、開けたっけ?」と思いながら、トンッと押して閉めようとしたら、引き出しがドンッとつっかえて閉まらなかった。「しまった!引き出しの奥に何かモノが落ちて閉まらなくなっている!面倒くさー」と思いつつ、屈んで何が落ちているのか見ようとすると、引き出しの奥の暗がりにキラリと光るモノが2つ。見覚えのある光るモノ。そう、それはゆずの目。
(狭くて、暗くて、ここ、落ち着くぅ)
そんなところに居座られても困るので、手を伸ばして取り出そうとするが、余程居心地がいいのかゆずは抵抗するように私の手から逃れようとする。引き出しが取り外せないタイプなので、私は狭い隙間に手を伸ばしてなんとか確保しようと格闘する。変な姿勢が続いて肩がつりそうだ。
これは「飼い猫あるある」だと、後から知った。猫を飼っている皆さん、同じ驚きと苦労をしているのかしら?と、少々痛んだ肩を回してほぐしながら、解決策を思案した。が、すぐに解決した。食いしん坊のゆずには、おやつを見せて釣ればいい。100%の効果を発揮する解決策だった。
性格の違いからか、好みの違いからか、あんずがゆずと同じ行動をすることは少ない。あんずが好きな狭くて暗いところは、全く別の場所だった。
初めて、どこを探してもあんずの姿が見当たらない、という事態になったとき、本気で焦り始めた私をからかうかのように、洗濯機の下からニュルッとあんずが出てきた。
(ママー。アタシ、ここー)
「あんずー!そこは、イヤー!」
洗濯機の下をマメに掃除している人って、どのくらいいらっしゃるのだろうか?私はしない人だ。定期的にマンション指定の配水管清掃業者の人が訪れるときくらいしか、そんな所の掃除なんてしない。よって、あんずは沢山の埃を身にまとって現れた。
あんずは他にも、ソファーの下の隙間とか、テレビ台の裏とか、とにかく滅多に掃除しない狭い箇所に潜みたがる。猫ってきれい好きじゃなかったっけ?埃が体に付くのは平気なの?と、首を傾げるばかりだ。
私がそういう場所をマメに掃除する以外に解決方法は無いものかと思案しながら数ヶ月が経ち、あんずの体が大きくなって、あんずが隙間に入れなくなってしまった。呆気ない解決だった。
ソファーに置いたクッションの裏、洗濯機の中、カーテンの裏、日用品の買い置き用のボックスの中、布団の間、etc。私が鬼役のかくれんぼは、飽きることなく続いている。
(また、見つかっちゃったぁ)