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賞罰とセロトニン

報酬で学びを強化する。罰を与えて学ばせる。どっちがいい悪いの議論がされることも多いですが、そんな0か1かの話ではないだろうなぁ。もちろん、一人ひとりの性格やその時のコンディション(脳の状態を含む)によるだろうなぁと。

その脳の状態の一つを考えるヒントになりうる論文。(もちろん、これだけが賞罰に作用するわけではないけれど。)

2022年8月、Jochen Michelyさんらの賞罰とセロトニンの関係性に関する論文。

セロトニンは、リラックスしたり、落ち着きをもたらしたりすることが知られています。ストレス緩和などが期待できることで有名。

単発的なセロトニン増加と、1週間の長期的なセロトニン増加で、賞罰からの学習がどう変わるかを実験。

単発的なセロトニンでは顕著な結果は得られなかったが、長期的なセロトニン増加を導かれた人々は、

  • 罰からの学習を高める

  • 報酬からの学習を低減する

という結果が得られたそう。

面白い!

当然、我々は罰からも報酬からも学ぶことはできるはずだけど、脳の状態によって、学習のあり方が変わると。もちろん、ここはセロトニンだけの状態で議論してるから、それが全てではないけれど、けど、罰を与えて学ばせるならば(それがいいかどうかは別として)、脳が落ち着いた状態でなくてはならないと。

それは、これまでの研究とも一致する。罰によって、多くの場合ストレス過多になり、前頭前皮質の機能が十分に働かなくなることが想定される。そうすると、意識的な注意や思考がままならず、学習効率が落ちる。逆に、罰を与えても、癒し的な、セロトニン的な脳の状態にすると、罰から学ぶことが多くなる(対照群と比べて)。

別に罰じゃなくても、グサッとくるようなことは、本質的には学びの宝庫なはずで、それを周りがますますグサッグサッとすると、学び効果は低まる。そんな時こそ、周りが癒してあげることで、そのグサッとくるような体験や失敗などから多くを学ぶんだろうなぁ。

逆に、うまくいったとか、報酬が与えられる場面において、そもそも落ち着いているだろうけれど、そこで更なる癒しは、落ち着きは、そこの学びを低減させるというのも面白い。

これも、今までの研究に、セロトニンは、ドーパミン性なども和らげたりすることも知られていて、ドーパミンが学習などに寄与することから、そこともある程度連動性があるかも。

報酬が与えられると、そこの喜びや心地よさに注意が注がれやすいだろう。そりゃそうだ、誰だって気持ちいいのが好き。それがダメというわけではないけれど、報酬ばかりに目をくらますのではなく、そこに至ったプロセス、努力、仲間の強力など、そういったこと、そこにも注意を向ける、それがあっての報酬であったと、点でなく、線、面的な学習が必要なのだろう。

だから、心地よさや、落ち着きに輪をかけるセロトニンの長期的増加が、報酬からの学習を低減させたのかな。

などと、いろいろな探究の可能性を感じつつ、

Rewards and punishments are the lowest form of education.
賞罰は、最も低次元な教育形態である。

荘子

の言葉を胸に、賞罰をうまく活用しつつも、賞罰によらない学びのあり方も大切だよなぁと思うのでした。

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