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20年来の親友がYouTubeデビューした

フォロワーが1万人ぐらいになってからこの記事をアップしたら、広告として役立てるかなと思ってしばらく待っていたのだが、どうやら来世でも無理そうなので早々に公開する事にした。

私には大学時代からの親友がいる。

大学初日だったと思う。最寄り駅から乗り込んだ電車の向かいに、やけに目を引く華奢で小さな女の子が座った。髪の色が派手で、ドレッドヘアだったかそんな爆発的な髪型で、足を組んで世の中を見下すようなオーラが印象的だった。とにかく、一目惚れなら良かったが一目見て強烈に怖かった。

過疎地から出てきて間もない私は、こんなにキャラの濃い子は絶対同じ大学だと確信し、とんでもねぇところに来ちまったと恐れ慄いた。

そして予感は的中し、的中どころか学科まで同じだった。マンモス大学と言われるだけあって、音楽学科、デザイン学科、建築学科、映像学科など多種多様の学科がある。それなのによりにもよって、同じ教室に座っているのである。これがやっすいテレビドラマなら完全に恋に落ちているパターンだ。

そして私たちは、恋には落ちなかったが、いつの間にか仲良くなった。

彼女は芸大生らしい芸大生だった。
ポケットにはお気に入りの中原中也の詩集が入っていた。彼女の口からはよく60年代の安保闘争の話が出たし、何ならゲバ棒を持って大学に来そうな勢いだった。もう間もなく2000年を迎えようという時代なのに。

つげ善春などガロ出身と言われる漫画家や、寺山修司率いる天井桟敷といったアングラ劇団、若松孝二や原一男などの映画を好み、私はそれら全てに、彼女を通じて触れた。

卒業後紆余曲折を経て、彼女は美術家となり、私は広告業の道に進んだ。

そんな彼女がつい先日、日本郵政のYouTube動画に出演した。
彼女の作風を知っているだけに、まさかそんなお堅い企業の動画で、「年賀状を手書きする」と言う制約下のもと出演するなど思ってもみなかったが、それ故にとても楽しみであった。

首を長くして公開を待ち、当日アップされるやいなや視聴した。

白く明るい光に包まれるスタジオ。
自らヤギを描いた白いシャツを着て、かわいい女の子と登場した。

「こんにちは、美術家の沖明日香です」

いつもより重低音ががった第一声。
優しい笑顔にキラッと光る目の奥から、本気具合が伺えてちょっと怖い。まるでスナイパーの目つきである。
若干ビクっとしてしまう、迫りくる勢いが彼女らしさを表している。

普段より、大人から子供までを相手にアート教室を営む彼女らしく、教えていくその様はとても素晴らしかった。
スパルタな一面が見えたと思いきや、元々垂れた目をより垂れ目にして嬉しそう笑う。抑えきれない関西弁や「これ」「それ」「あれ」の指示詞は視聴者を混乱に巻き込みながらもご愛嬌で、時々発せられる謎の名言、いや、迷言も見所である。

動画には、私が彼女をリスペクトしている本質が、とても色濃く表れていた。

テクニックよりも「手書きの年賀状を送る」という事の意味、すなわちそれは相手に思いを馳せながら描き、受け取った時の相手の気持ちを想像する、その事を重んじているという事が、ちょっとした言葉の節々に宿り、十分に伝わってくる、というところだ。

『コミュニケーションは受け取り手が作るものだ』と誰かが言った。
彼女はもしかしたら自然とそれを理解し実行しているのかもしれない。

私が仕事でお世話になった方から聞いて、印象に残っている言葉がある。

『センスオブビューティー』

それは、どこでその人の資質として形成されるのかはわからないが、それを感じる相手がいる、と。そして、それは理屈ではない、と。

その人のバックボーンを知り尽くした上で、それでも理屈ではなく言葉では言い表せない魅力、惹かれる部分、素敵だと思うところ、それを『センスオブビューティー』と呼び、それを相手に感じるかどうかを、直感的に大切にしているという。

その言葉が今、心の中でストンと腑に落ちている。

私のnoteはごく稀にしか人の目に留まらないが、それでもここに彼女の素晴らしい勇姿を紹介せずにはいられない。

#日記 , #エッセイ , #親友 , #YouTube , #ふみの日オンライン2020 , #似顔絵 , #アート , #日本郵政

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