クッキーカンタービレ
リモートワークの弊害の1つが、腰痛です。
いつも自宅のダイニングテーブルで仕事をしているのですが、そこにある椅子は当然仕事用ではありません。
2年前に引っ越した際、家具屋で見つけたお気に入りの椅子ですが、仕事には向かないのです。
クッションを置いて極力腰への負担を減らす工夫をしていますが、どうにも痛みが酷くなる日があります。
その日も朝から座りっぱなしで午後には腰が悲鳴をあげていましたので、これはいかんと外出しました。
カフェでお茶でも飲みたい。
時々行く、ひと駅離れたスーパーへの道すがら、雰囲気の良さそうな小さなカフェが気になっていましたので、私はそこへ向かいました。
少し歩くだけで気分も変わり、腰痛も和らぐ気がします。
15分程ゆっくり歩いて到着すると、ガラス越しに見える店内はずいぶんと空いているようでしたので、私は迷わず中に入りました。
「いらっしゃいませー」
元気な声と笑顔で店員さんが出迎えてくれます。
「どうぞ、こちらへ!」
私は入り口付近の、ぽかぽかと陽の当たる2名掛けの席へと案内されました。
そこにあった椅子が、自宅の椅子と全く同じものでした。
そんな事ある?
びっくりして腰を抜かすかと思いました。
星一徹ならちゃぶ台をひっくり返しているかもしれません。
引き返すわけにもいかないので、私は、クッションがないためにむしろ自宅よりも腰に負担がかかるその椅子にそっと座り、ティーソーダを注文しました。
ゆっくり休憩したいのですが、このようなのっぴきならない事情でそうもいきません。
結構な勢いで、ずびずびとドリンクを飲みながらInstagramの画面をスクロールしていたところ、ふと、お取り寄せのクッキー缶の写真が目に止まりました。
何これ可愛いな。
【#クッキー缶】で検索すると、たくさんの人がそれらの写真を投稿しています。
ああ、いい事を思いついてしまった。
今度の週末はクッキー缶を作ってみよう。
そう思ってウキウキしていると、その日の腰痛は嘘のように和らぎました。
一口にクッキーと言っても本当にたくさんの種類がある事がわかりました。フレーバーを変えるだけでも無限大に広がりそうです。
吟味した結果、5種類のクッキーを焼く事に決めました。
・アイスボックスクッキー(プレーン)
・アイスボックスクッキー(ココア)
・型抜きクッキー
・絞り出しクッキー
・ガレットブルトンヌ
5種類もありますので、土日を使っての作業です。
土曜日の夜に全ての材料を計量し、絞り出しクッキー以外は生地まで作って冷蔵庫に冷やしておく事にしました。
まずは、アイスボックスクッキー(プレーン)から取り掛かります。
常温に戻した食塩不使用バターに、グラニュー糖と塩ひとつまみを入れて、ムラが無くなるまでヘラで混ぜます。
次に卵黄とバニラオイルを入れ混ぜ合わせたら、ふるっておいた薄力粉とアーモンドパウダーを入れ、粉っぽさが無くなるまで混ぜます。
直径3センチの円柱にしたら生地の出来上がりです。
あら、簡単。
次は、アイスボックスクッキー(ココア)を作ります。
常温に戻した食塩不使用バターに、グラニュー糖と塩ひとつまみを入れて、ムラが無くなるまでヘラで混ぜます。
そうそう、そうです、先程と同じ手順です。
小麦粉の一部をココアにして、スライスアーモンドを混ぜ込めばココア味の出来上がりです。
あら、簡単。
次は、型抜きクッキーです。
常温に戻した食塩不使用バターに、グラニュー糖を入れて、ムラが無くなるまでヘラで混ぜ…。
そうね、同じよね。
ちょっと腕が疲れてきましたが、この後粉類を混ぜれば出来上がりです。
あら、簡単。
次は、ガレットブルトンヌです。
常温に戻した食塩不使用バターに、グラニュー糖と塩ひとつま…。
気が狂いそうです。
何回常温に戻したバターに、グラニュー糖やら塩やらを混ぜるのでしょうか。
お菓子作りは好きですが、こうも同じ作業が続くと結構しんどいものです。
そして翌日、絞り出しクッキーの生地も作り、いよいよ順番に成形しながら、じゃんじゃん焼いていきます。
特に型抜きクッキーの牛と猫は、並々ならぬ愛情を持ってオーブンへと送り出しました。
可愛いなぁ、モゥ。
焼けたらオーブンから取り出し、また次のクッキーを焼く。
クッキー工場と化したマンションの一室で、甘ったるい香りに包まれながらオーブンをフル回転させました。
そして、日曜日午後6時、コンプリート。
疲れましたが、こうやって眺めてみると可愛らしく、そして、美味しそうに焼けています。
しかしここで終わりではありません。
目指していたのはクッキー缶、缶に詰めてなんぼです。
本当なら理想の缶を手に入れたかったのですが、探し回っていいものがなく、最終的に誰かにプレゼントするわけでもないので、今回は自宅にある缶に詰める事に決めました。以前、仕事でお世話になった方にいただいたお菓子の缶が素敵で、大事に取っておいたので、それを使う事にしたのです。
詰め。
何か違う。
ごそごそです。
隙間だらけです。
詰め。
猫を立てかけ、立体的にしてみるも、ごそごそです。強いて言うなら、アイスボックスクッキー(プレーン)のだし巻き卵感、ガレットブルトンヌのハンバーグ感が見事です。
蓋。
私のイメージでは、和洋折衷でギャップ萌えするはずだったのですが、全く折衷しませんでした。
これはあ缶。
クッキーを詰めるとは、思った以上に難しい。
隙間を埋めるため汎用性の高い小型クッキーを用意する、型抜きを複雑な型にすると隙間ができやすいので注意、缶は中のクッキーとの相性を考える、などたくさんの気付きがありました。
そして、1番の気付きは、そういえば昔からお弁当を詰める作業が人一倍苦手だったという事です。
味はどれも美味しく仕上がっていましたので、今回の詰めの甘さを反省し、また楽しんでトライします。
クッキー缶タービレ!
#日記 , #エッセイ , #お菓子作り , #クッキー , #クッキー缶 , #スイーツ , #おやつ
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