滋味
先日久しぶりにnoteを書こうとしたところ、ずいぶん前に書いた文章が下書きのまま残っているのを見つけました。
続く猛暑で思考がおかしくなりそうだと思ったけど大丈夫、元々だわ。
なお現時点で退職届は出していません。
仕事でたいへんお世話になっている恩師がいます。
数年間社長を務め上げ役職定年で退職、既に現役は退かれていますが、今でも時々仕事の重要な場面において、判断を迷う時に相談する事があります。
その日も、どう進めるか悩んでいる案件について、リスク管理や、戦略的に予算と人員をどの程度投資すべきかなど、LINEで相談をしていました。
客観的な視点で、自身の経験則では考えが及ばない指摘をもらい、沢山の気付きと判断材料を得ることが出来ました。
最後は長々と相談に乗っていただいた御礼を申し上げ、暑い日が続きますのでご自愛下さいとのメッセージで締め括りました。
窓の外を見ればもう日が暮れようとしています。
この件において長らく答えが出せずに悩んでいましたので、相談して道筋が見えた安堵感と、心が軽くなった嬉しさで気分が高揚してきます。
さらには金曜日という事も相まって、サンバのリズムで踊り出したい無敵のメンタル状態。
私はそのエネルギーを発散するべく、数日前食事に行った同僚にロックオンし、迷惑LINEを送りつけました。
向こうからしたら既読スルー事案ですが、構う事なく送りつけた私はああ気分がいいわと満足感に浸りながら、LINEを終えようとした瞬間でした。
やべぇ、恩師に送っちまってる。
テーブルクロス引きのスピードで、血の気が引くのがわかりました。
私は、LINEでメッセージの取り消しをした事がほぼなく、それに関する操作の記憶がおぼろげです。
パニックになりながら、とにかく消さねばと『削除』してみたものの、受信側にはメッセージが残りますよというLINEからの丁寧な案内が表示される始末。しかも削除してしまったが故に、発信側では送った内容が把握できなくなるという最悪の事態。
後に『送信取り消し』がある事を学びましたが、何しろ慌てふためいているので、そんな事にも気がつきません。
私は深々とお詫びのLINEを送りました。
私は、どうか向こうに届いていませんようにと根拠なく祈りながら、返事を待ちました。
祈りは届きませんでしたが、メッセージはしっかりと届いていました。
ご放念してくれてない。
穴があったら入ってしばらく出たくない。
いくら丁寧に詫びたところで、所詮裏ではカエルに擬態してケロケロ言ってるメンタルやばめの女に変わりはありません。
暴露してしまった恥ずかしさに打ちひしがれていると、しばらくしてまたLINEが届きました。
そこには、「超簡単で、そこそこうまいぞ」という一言と、手間をかけずに作れる一品料理のレシピがいくつか書かれていました。
美味しい食事をこよなく愛し、自らも料理好きを豪語する恩師。
現役当時「美味しいものを食べるために、一生懸命働くというそれもまた一興」と、社員に出来る限り美味しいものを食べさせてやりたいという事で数々の会食の機会が設けられ、全ての社員が多くの恩恵にあやかった思い出が蘇ってきました。
ついつい忘れがちだけど、食事を大切にする気持ちや、美味しく食べようとする姿勢って大事だった。
私はその日、もらったレシピを見て材料を買い、サササッと料理した後、自宅でゆっくり晩御飯を楽しみました。
ほとんど手を加えずに出来たにも関わらず、驚く美味しさ。
材料の組み合わせによって、こんな味が生み出されるのかと感動を覚えます。
恩師の優しさを纏った滋味深いその食事は身体の隅々まで染み渡り、仕事の疲れもケロっと忘れさせてくれました。
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