見出し画像

イケメンという言葉

変な話をさせてほしい。
時折僕は容姿を指してイケメンと言ってもらうことがある。
待ってくれ石を投げないでくれ。ブラウザを閉じないでくれ。
僕はそう思っていない。嬉しくないとはならないけど、なぜ自分に対してその言葉が使われたのか分からずちょっと困る。
自己肯定感が作品以外に対してあまり高くないから特にかもしれないが。

絵は良いものを描きますよ。
詩も良いものを書きますよ。
大好きだもの自分の作品たち。

困るようになった原因は分かっている。
小学校時代をデブとメガネという重装備で過ごし、中学校で痩せたがアニメオタクメガネだった僕はほとんど女子との関わりはなかった過去だ。
むしろ避けられているタイプだった。「お前とは話してない」「キモい」「キショい」などの言葉を浴びせられることも多かった。女子という存在が軽く苦手にさえなっていた。
高校生になると天パがその実力を発揮し、モジャモジャメガネで過ごしていた。ワックスをつけてアクセサリーをつけている人気のある男子たちとは程遠い存在であった。

大学生になり某大手アパレルでアルバイトを始めたことで、多少身なりに気を使うようになった。それからだ、出会う方々にイケメンという言葉をいただくようになったのは。言われ慣れてない言葉に対してなんと言ったら良いか分からず僕はかなり困惑してしまっていた。変な苦笑いで返答してた気がする。
とはいえ接客業だったのもあって、表向きは上手い具合に困らず流せるようになった。ただそれでも理解はできないし、言われている実感はなかった。
実家近くですれ違った女子高生2人にあの人イケメンじゃない??みたいな会話をされたのはかなり衝撃的だった。彼女らの学校はそんなにレベルが低いのか…とか思ってしまった自分が悲しい。小中高12年の生活で培われたものは中々根が深いようだ。

ある仕事で3ヶ月ずっと一緒にいた親友がいる。彼は所謂正真正銘のイケメンってやつでかなり整った容姿をしていると思う。顔がタイプ!って言って告白されることもよくあったそうだ。彼はそれが気に食わないらしい。
「よく知らん相手に顔がタイプだから好きですって、キモいやん。中身を見ろよ。何がイケメンだ、頭おかしいんか。」
お酒で少し頬が赤くなった彼が言う。言ってやんなよそんなこと。
イケメンなんて言われ慣れてるだろう彼は逆にムカつくのか。難しいなぁ。
「俺はな、だからイケメンとか言うんじゃなくて中身を見てくれる野郎と一緒にいる方が今は楽しいんだ。しゅー(僕の呼び名)と一緒にいるのが楽しいんだよ。」
そう言って嬉しそうな笑顔で僕の肩を抱く彼はイケメンだった。でもその言葉は控えて、僕も笑って彼の肩を抱き返した。
ムカついてる奴もいるんだし、僕はしばらくこの言葉に困ってて良いのかもなーと思えた。

その1ヶ月後、彼には大変可愛い彼女ができていた。嬉しそうな顔をしていた。

…イケメンって難しいなぁ。



【LINEスタンプができました!】
僕の絵に隠している猫、ニヒルのLINEスタンプを作りました。
ちょっとふざけた彼のスタンプを、あなたの日常に連れていってやってください。
ご購入はこちらから↓

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?