ポーの一族
ポーの一族は萩尾望都さんの代表作。
開くたび花の香りが漂うような、とても美しい薔薇と人の生気で生きるバンパネラの本。
宝塚にもなった。
沈丁花が咲くたびにこの物語のメリーベルを思い出す。
バンパネラとなって永遠の子どもになったエドガーは、ただ虚しく妹のメリーベルだけを支えに生きていた。その妹も失ってしまうんだけれど。
エドガーが学校で知り合ったアランを仲間に加えようと窓辺に現れるシーン、好き。
特に『はるかな国の花や小鳥』の話がとても好きで
花とピアノと寂しさのある内容も絵も綺麗だった。
エドガーを、『私の庭で捕まえたユニコーン』と呼ぶエルゼリが、ピアノを弾いたりエドガーに薔薇を切ったりして。
昔のことを忘れられずにいるエルゼリを、エドガーは『思い出のにおいのする人』と言う。
エドガーが物書きを魔法使いと呼ぶのも素敵で
この年代の漫画はどれも詩的だけれど、萩尾望都さんは特に、本当に詩人だなぁと思う。
歴史的背景も物語の下地にしっかり感じるような。
エドガーとアランの依存関係が、一致しているのに擦れ違ってしまっているのが、見た目と裏腹に埋まらない歳の差を感じる。
最後が悲しくて、でもエドガーはまだこの現世を彷徨っているのかなと思うような
ふしぎに現実に余韻を残す物語。
近年、続編が出たようで、作者さんの精力的なご活動を尊敬しつつも、
個人的にこの作品はこのままの記憶で終えたくて、そちらは読まずにいるので、実際その後どうなったのかは知らないんだけれど…
本当に綺麗な物語。
これまでサポートくださった方、本当にありがとうございました!