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好きな映画

このDVDは随分まえに購入したもので、とても気に入ってる作品。最近は映画を観る余裕が無いけど、当時は何度も観た。

70年代のアイルランドを舞台に、キトゥンが実の母を捜して旅に出るお話。 

70年代のあの輝くファッションや音楽がたくさん盛り込まれていて、色が綺麗で目も耳も楽しい映画。ポスターやカードに出来そうなシーンばかりだった。

煌びやかな衣装やセットだけじゃなくて、台詞もきらきらした言葉が並んでいた。

明日美子のJの総てみたいな、煌びやかな装飾と裏腹な孤独の対比が綺麗だった。

それでも重くて陰鬱で退廃的な映画の類ではないので、物語はおとぎ話のように進んでいく。キトゥンの瞳は星のように、ずっと輝きを失わない。

バンドマンと関係を持ったり、路上生活をしたりしながら。

「曲の中で奥さんは死ぬの。
 彼が留守をした日に。
 バンドとツアーに出て
 戻ってきた時 もし私が倒れていたら、
 この曲みたいに
 病院へ連れってくれる?」
「勿論連れていくとも。キトゥン」
「夢が現実になったらいいのに」
「花を持っていくよ」
「バラ?」
「バラだ」
「わかってるのよ 何もかも。 
 バラもチョコレートも口先だけだって知ってた。
 でも……幸せだったわ。」

「私はパトリシア キトゥン ブレイデン」
「よろしく。パトリシア キトゥン ブレイデン」
「道路で何してた?」
「幻の女<ファントム・レディ>を探してたの」
「ならあの道だな」
「なぜ? 幻の女通りなの?」
「かもしれない。幻の女は誰だね?」
「私の母よ。そう呼んでるの。
 私の人生は、物語だと思えるように」
「なぜだね?」
「涙が止まらなくなるから」


このやり取りが一番好きかなぁ。
人生は物語だと思えるように、って言葉がずっと残ってる。

キトゥンは、常に明るく真っ直ぐであろうとする。

下妻物語で桃子が、お弁当を全部あまいお菓子にしていたり「真剣に生きるのは嫌!」ってずっと主張していたみたいなこと。

それを馬鹿馬鹿しいと、地に足付いてないと一蹴するのは簡単だけど、貫くことの難しさや切望の想いの強さは、決して軽いものじゃない。

「時々ふと感じることがあるの。
 脚が浮き上がり私は宇宙を漂う。
 独りぼっちで」
「銀河的孤独ってやつか」 
「居場所が欲しいの」
「野垂れ死にするぞ」
「わかってる」

「幻の女は気付いたの。 
 決して眠ることのない大都会で」
「何に気付いた?」
「彼女が聴いたラブソングは、どれもみんな
 ただの歌だったと」
「それがどうした?」
「あなたは信じてなくても彼女は信じてたの。
 魔法のような夕暮れや
 小さな雲が頭の上を通り過ぎて
 花のベッドに雨を降らすこと
 遥か彼方で朝食を食べることも」
「どこで?」
「冥王星(プルート)よ。
 神秘的な氷に覆われた冥王星」

引用が多くなってしまったけど、あの表情や仕草、束の間の沈黙や台詞の余韻が言葉を輝かせているので、映像で観て貰えたら良いなと思う。

キトゥンの強さや可愛らしさは、トランスジェンダー系の映画にありがちな哀しみや凄み、性的強調の描写はないから、観る人に届きやすいんじゃないかな。

重くならずに観られるし、はなやかな色が楽しい。花咲くように生きるキトゥンに励まされる。 

ピンチの時に、痴漢撃退スプレーじゃなくて
シャネルのナンバーを吹き付けるシーン可愛かったな。

夢のように生きられたら良いのにね。

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