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サーカスの街でマジシャンに出逢った話。


長野まゆみの記事を書いた時に少し触れたけれど、今日は昔知り合ったマジシャンの方の話を。

長野まゆみのはなし。

ゴスを着ていた頃のはなし。

黒羽のはなし。


地元では毎年秋に、大型大道芸イベントがあり、この時期は街にピエロや大道芸人が溢れ、サーカスの街になる。

かなり混むので数えるほどしか行った事はないけれど、学生時代にゴスに傾倒した自分達にはPlastic Treeや楠本作品のような気分になれる魅力があって、改めて行ってみようという話になった。


ヴァンパイアのようなマントを羽織った黒羽とゴスファッションで街へ出た時、正直どんな大道芸を見たのか覚えていない。

とにかく混雑の印象が強く、その人混みの中で、至る所にシルクドソレイユのような格好をした大道芸人やピエロをみた。


街角で、たしか道を訊かれたのだと思う…それがマジシャンの鴉怜で、落ち着いた綺麗なお姉さんと一緒だった。
たぶん彼は芸の披露ではなく一般客として来ていたのだと思う。

鴉怜はマジシャンネームではないけれど、プライベートではそちらの名前を使っていた。
ここに敢えてその名前を書くのは、万が一の奇跡でも、この記事を見つけてくれたら良いなと思ったから。


昼食を取るのに良い店を訊かれたのだったか、蔦の葉のピザ屋のANANを勧めたのは覚えている。


彼はゴスファッションに興味を持っていたようだった。
話の流れで、彼の目当ての大道芸人を勧められ、一緒に回る事になったのだけれど、正直 大道芸人のことは全く覚えていない。それよりも鴉を飼っているマジシャンの出現の方がよほど印象的だった。


人混みの中で大道芸人を見て周る体力と、社交力の無かった自分には疲労が強く、失礼があっただろうと、振り返れば思う。

鴉怜が気軽に物を消したり出したりするので、どう反応したら良いのか当時はわからなかった。それくらい対人能力が無かった。



それとは別に、理由がもうひとつある。

あまり理解され難いのだけれど、自分は不思議の国のアリスが大好きな子供だった。

それはあの世界が不思議だったからではなく、好きなものばかりが出てきて、嫌いな現実のやってこない世界だったからだ。

ナルニアもそうだけれど、現実に戻るという選択肢は、自分なら絶対に選ばなかっただろう。それは今も変わりがない。

魔法ファンタジーが好きだったし、魔法使いになりたかった。自分にとって世界に真に不思議に思うものは余りなかった。
そういうものとして見たまま受け入れていたので、それが当たり前の世界線で生きていた。


だから学生にまで成長していても、マジックはそういうものだと思っていたし、タネがあっても無くてもどちらでも良かった。

目の前の物が消えても、べつに盗られるわけでもないし、普通の事に見えていた。
どんな仕掛けがあるかなんて別に気にならなかった。

だから今でもマジックは特に見ない。
今はそう見せる技が凄いという事は理解しているし、社交力も付け焼き刃ながら身に付けたので反応は取れるけれど、相変わらずそれはそういうものとしか見えない。

UFOも宇宙人も神様も悪魔も、いてもいなくても別にどちらでも構わない。


そんな失礼極まりない自分にも、鴉怜は友好的に接して下さって、その後も通話したりと暫く親交があったけれど、自分がどう人と接すれば良いのか分からなかったので、そのうち途絶えてしまった。

黒羽も数年やりとりがあったようだったけれど、黒羽も人生に色んなことがあったので、関係は途絶えてしまったらしい。



あのあと、田舎の地元では手に入らなかった、MALICE MIZERや色んなバンド、アパレルブランドのフライヤーなどを、ワインレッドの封蝋で綴じ込めた封筒に入れて送ってくれた。もう封蝋は割れてしまったけれど、今もそれは保管している。



♠️❤️



通話で勧めてくれた長野まゆみに結局あなたの予想通りにすごく嵌ってしまったって事や、すっかりバンギャになって過ごした時代の事、球体関節人形を作る人と出会った事や、薔薇を投げた海の事、、、

今なら話してみたい事がたくさんあるのにと思う。まともなお礼もしていなかった。
このnoteを読んでくれたら良いのにな。

元気で居てくれたらと思うけれど、よく考えたら日本にいるかだってあやしい。
いつかまた会えたら、今度はもっといろんな話が訊けるかな。


これまでサポートくださった方、本当にありがとうございました!