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ラルクのはなし。



今日は好きなアーティストの話。

好きなアーティストはたくさん居るけれど、一番影響を受けたのはラルクだった。

子供の頃に初めて聴いたのは、やっぱり全盛期だったarkとrayの辺りで、虹のMVが特に好きだった。
それから遡って全て聴き、その後に発売されたものもずっと聴いてきた。最新のミライは、自分にとって少し違和感があって、まだ聴いていないけど……


そして結局だいすきなアルバムはTierraとDUNE。

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DUNEはインディーズ時代に出した唯一のアルバム。本当に全ての曲が美しく幻想的で、異国情緒に溢れている。

hydeは、空の青に憧れを持った白い人だという印象が強い。背中に羽根のあるひと。

初期の作品にはその色が強い。
引用しようとすれば全て引用したくなってしまうほど、全ての言葉や音楽が素晴らしいので、これはもう余す所なくアルバムごと聴いて貰えたら嬉しい。

現実から隔絶されたような、とても美しく確立された世界と、裏腹に現実で受けた傷を歌うようなバランスが本当に素晴らしいと思う。傷付いて美しく自由な空を求める魂の在り方を内包した綺麗な曲ばかりだ。

ラルクが歌う曲の多くは呑み込まれるような闇や打ちのめされる悲痛ではなく、現実に疲れてしまった憂いで、その溜息のような遣る瀬無さと儚さが、言葉と声と曲と、hydeの美しい像とを結んでいる。

DUNEの曲は全て素晴らしいけれど、特に好きなのはVoiceかなぁ……。


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Tierraは透明感のあるアルバムで、硝子越しに見える陽射しに透けた緑や、何も無いような白い部屋の壁、青い空からやってくる、通り抜ける風の心地すら感じられるようで、このアルバムから浮かぶ風景がとても好きだ。

なにかとても心に残る一瞬の記憶を思い出す時には、いつもBlameが頭に浮かぶ。「胸の奥に突き刺さったままの、情景が抜けない」

ラストのWhite Feathersはまるで小説のような曲で、自分が死ぬ時に音楽を聴いていられるなら、この曲を選ぶと決めている。決めていてもどうにもならないかもしれないけど。

素晴らしい言葉を作れる人はたくさんいるし、いろんな言葉に感動してきたけれど、詩人という言葉が誰よりも似合うバンドマンはhydeだと思っている。


このアルバムに収録されている風の行方のMVと、瞳に映るもののイメージV? と言えばいいのかな…
それとメンバー個々のショートフィルムを一本に纏めたDVDが出ている。たぶんBlu-rayにはなっていないと思う。
Siesta 〜Film of Dreams〜は、元々VHS時代のものなので。

風の行方はモロッコで撮影された乾いた世界の映像で、砂漠や砂の建物を好きになる切欠になった。

瞳に映るものは定点撮影で、メンバーの姿などは入らず、緑の美しい遊歩道が映されているだけのものだけれど、これもとても好きな映像。


そして、このSiestaに収録されているhydeのショートフィルム『窓』が、最も自分の人生で影響を受けたもの。

真っ白な衣装を着たhydeが、白い布だらけの白い小さな部屋で、鳥籠の白い鳥と戯れている映像だ。

鳥の羽根を眺めるhydeの姿。
微睡の中で生きることから逃げるように湖から船を出す夢をみる。
目を覚まして窓から逃げた鳥を追い、白い布を破って羽根を作り、空を飛ぼうとして彼は天使のように墜ちる。
硬い地面に転がる足枷。

内容は殆どWhite Feathersの詩そのものだ。


単純に、この映像の白と青とhydeの容姿とが美しかったという事も大きいけれど、物心ついた時から現実を嫌っていた自分には憧れそのものに映った。
現実からの解放と、当時としては見たことの無い圧倒的な美しさに、心の底から憧れた。

白の衣装に執着を持ったのは、このSiestaのせいだ。
もうずっと、解放を映したあの白い部屋に囚われている。


 🕊


歌謡曲は社会や日常生活と密接な関係を築いてきたという事もあり、その時代の自分の日常風景や流行を思い出す事が多いと思う。

所謂V系と呼ばれるジャンルの曲では、一括りにするにはあまりに多様ではあるものの、荘厳な城や森や廃墟、時代も違っていたり、幻想的で二次元寄りな世界観が多かった。


けれどラルクで思い浮かぶのは、80-90年代初頭の洋画のような風景が多く、日本の風景などは全く思い浮かばない。
CDジャケットのイメージが白人女性でなかったとしても、きっとそうだったろう。
hydeの言葉選びや、メンバーが好んだ映画や音楽、彼等のMVの雰囲気が、その全てを構築している。

今のラルクも素晴らしいものを作り魅せてくれているし、当時はあまり歌唱力を気に留めていなかったというhydeも、今はトレーニングを積んで当時よりずっと歌唱力や表現力を拡げている。

野外ライブは20thの時だったかな?
初期の曲も歌ってくれていたけれど、風に溶ける旋律に乗って今と過去の感情を持ったhydeの言葉が空へ還っていくようで、なんだかその時に、遠い日に生まれたその物語が完結したように思えて、泣いてしまった。

虹は当時聴いていた時よりも、今の方がずっと良く自分に響く。
ラルクとしてのsakuraを失った時、活動休止期間に虹の制作と共に撮影された、ドイツでの個々の映像もとても好きで、宿泊したネコ城の庭で虹を口遊むhydeの姿がとても綺麗だった。

花葬や浸食も、子供の頃から耳に馴染むほど聴いていたせいで、逆に今更になってその音楽の造りに感動したりする。
HYDEのソロはROENTGENが好きで、昔に雑誌で連載していたself portraitも素晴らしい活動だった。

ラルクの話は尽きない。
ラルクを知ってから、ラルクを聴かない年など一年も無かった。
季節の巡るたび、聴きたい曲が浮かぶ。


今でも素晴らしいバンドのラルクだけれど、それでも上に挙げた当時の作品は本当に、自分の奥底の本棚に仕舞い込んである皮張りの本のような、大切なものだ。

その本を開けば、言葉や音楽と一緒に白い羽根と澄んだ緑の大気が溢れ、掴むことのできない透明な青が広がる。

自分にとってラルクは、一生そういうものだ。あの頃のラルクの世界観の酸素になって溶けてしまえたら良いのにと、何度おもったか判らない。


今年30周年を迎え、解散せずに続けてくれているラルクに、深い感謝と愛を。

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これまでサポートくださった方、本当にありがとうございました!