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母と私と実家の片付け

 2022年2月8日(火)、実家の引越完了。当日、急遽、トラックを1台追加することになったそうです。プロも見積もりを誤るほどの荷物の量だったのか?

さて、引越し後の最初の週末、私は久しぶりに「実家通い」を休みました。もちろん、荷解きとセッティングもやるつもりでしたが、ぼちぼちやればいいかぁ、と。

そして、引越しのちょうど1週間後。

母は突然、逝ってしまいました。

朝、引越したばかりの家で倒れ、救急車で病院に運ばれましたが、そのまま亡くなりました。

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通勤途中で連絡を受け、急いで病院に向かいましたが、間に合いませんでした。これまでの家なら、1時間もあれば行けたのに…。そもそも、引越ししてなかったら、こんなに急に死ぬなんてことにならなかったのでは…。

引越しという環境の変化が大きなストレスになり、寿命を縮めてしまったのではないのか? そう、思いました。

新しい家での母の生活はどうだったのか。トイレに行くことに問題はなし。姉が「トイレは使ったらちゃんと流してしてね」と言うと、母は「当たり前じゃない!」と言い返したとか。それまでの家のトイレはオート洗浄だったので、もしかして、違いが分からないのでは、と姉が注意したのです。
食事もとれたし、窓から庭の梅を愛でることもできました。
特に混乱もなく、普通でした。ただ、ちょっと胃腸の調子が悪かったと後から聞きました。今となっては直接の原因は分かりません。高齢でしたから、いつお迎えが来てもおかしくはなかったのです。

でも、やっぱり、最初の週末に実家に行っておけばよかった、今でも思います。

環境の変化で「せん妄」を起こしてしまうのでは? トイレの場所が分からなくなったりしない? 見知らぬ人ばかりの中では「徘徊」しても誰も気づいてくれないんじゃ…? デイサービスはどこに? いつから? 引越しに伴う心配事はたくさんありました。何より、私がこれまでのように頻繁に実家に通うことは難しい。どうしよう…。

そんな中、逝ってしまった母。

「もう心配しなくていいよ!」ってことなの?

引越しが終わって、安心したの?

正解が見つかるはずはありません。

母の葬儀は元の家の近くで執り行うことにしました。ご近所さんも引っ越してしまい、み~んないないけれど。
母の亡骸を乗せた車(私も同乗)は、一度、元の家に立ち寄りました。葬儀屋さんが配慮してくださいました。

いきなり、1週間で帰って来ちゃったねぇ。

そもそも、立ち退きがなければ、実家の片付けには手をつけていなかったでしょう。生活するスペースがない、なんてほどには散らかっていませんでしたから。立ち退きがなければ、母と一緒に週末を過ごすことはなかったでしょう。

また、立ち退きが5年前、いや、3年前だったら、事態は深刻だったはず。母はずっとしっかりしていたから、私の独断で片付けを進めることはできなかったでしょう。「捨てる」「取っておく」で揉めたに違いありません。引越し先だって嫌がったでしょう。

今回の片付けに、母は一切、口を出してきませんでした。どれくらい理解していたのか、これも分かりません。ただ、私のやりたいようにやらせてくれました。

ある晩、私は徹夜で実家の台所を片付けていました。棚から桐箱入りの食器だとか、頂きものの漆器だとか、全部引っ張り出して、床に並べていました。そこにトイレに起きてきた母がやって来て、驚いた様子でひとこと。「まぁ、たくさんあるわねぇ」と。おいおい、集めたのは自分じゃないのかい?

片付けで目にした古新聞。ジャムの空き瓶や新品の皿を包む古新聞の日付は、どれも2018年くらいでストップ。それ以降、母は家事が、片付けができなくなっていったということです。

1年間、だいたい、毎週日曜日に実家に通っていました。母の昼ごはん、時には晩ご飯も準備して、食べさせます。でも「傾眠」状態の母はなかなか起きてこない。ごはんもいらないと言う。ついイライラして、ほっといて片付けに取り掛かる時もありました。食べても量はほんの少しだし...。ちょっとでも食べてもらえるよう、好物を用意して行きました。ブロッコリーを残したり、クリームシチューをたくさん食べたり。初めて、本当の母の食の好みを知りました。

母は緑茶と和菓子が好きでした。

引越し前のひと月は土曜日も実家に通いました。土曜日、母はデイサービスに行きます。夕方、5時過ぎに帰ってくる母。温かいお茶とおやつで出迎えることができて、本当によかった...。母が亡くなってから、心からそう思います。これまで、こんな機会はありませんでした。実家に来た私にお茶を入れてくれたのは母でしたから。こんなごくごく小さな親孝行しかできなくてごめんね。

最近、こちらの本を読みました。母はタミさんと同じだって思いました。たくさんのジャムの空き瓶を取っておいて、再利用する。この年代の方々には当たり前のことなんですよね、なんでも取っておくって。

それを私は片っ端から捨ててしまいました。
大切なモノ、もしかしたら貴重なモノを捨てたり、あげちゃったりしたかもしれません。さらに、引越し先で眠る品々もいずれ処分する予定です。母が天国で「もったいない」って言うのが聞こえる気がします。でも、フリマやジモティーで、もらわれて行ったモノもたくさんあるんだよ! 花器類は私の娘が通う中学校に行ったよ! 華道部で使うって!

急いで片付けた部屋の片隅。

母が亡くなったその週の週末。私は初めてその家に行きました。最初の片付けが、祭壇をおくスペースを作ることになるとは思いもしませんでしたけれど。

一度、脱走。「外に出てみたいニャー」

あれからもうすぐ半年。新しい家はだいぶ片付きました。にゃんこも、新しい家で、しかも、母がいなくなり、最初は不安そうでした。でも、今は、お気に入りの場所ですやすや。

今回、実家から、テレビ、自転車、食器類などが私の家に運び込まれました。実は自転車は一度も乗ってないし、食器が入ったダンボールは開けてもいない…。

モノは溜め込んじゃダメです!

自分にもいい聞かせないと。






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